企業と生活者懇談会
2016年10月11日 北海道
出席企業:王子ホールディングス
見学施設:王子製紙苫小牧工場

「100年の歴史を持つ、世界屈指の製紙工場を見に行こう!」

10月11日、王子製紙の苫小牧工場(北海道苫小牧市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者18名が参加しました。王子ホールディングスの概要と王子製紙苫小牧工場の施設概要の説明を受けた後、「近代化産業遺産群」の1つである送木水路や新聞用紙を生産する巨大マシンなどを見学し、その後、質疑懇談を行いました。
王子製紙苫小牧工場からは、横溝元彦事務部長、香川仁志環境管理室長、牧野淳一事務部グループマネージャー、鈴木貴研究技術部グループマネージャー、王子ホールディングスからは、飯塚靖広報室長、天達彩子広報室主任が出席しました。

王子ホールディングス・王子製紙からの説明

■王子ホールディングスの概要■
 王子製紙は、1873年(明治6年)、渋沢栄一が東京府下王子村に抄紙会社を設立したことから始まる、日本で最初の製紙会社であり、株式会社でもあります。
 渋沢は、幕府の随行員として行ったパリ万国博覧会で、西洋の輪転機などの機械印刷技術を目の当たりにし、衝撃を受けました。当時の日本は手すきの和紙が主流だったこともあり、渋沢は、「良質で均質な情報を世の中に広く伝えるためには、機械生産の製紙技術が不可欠である」という強い信念を持ち、洋紙の国内自給を目指しました。
 その後、1876年(明治9年)に商号を製紙会社と変更、1893年(明治26年)に王子製紙と改称しました。「紙は文化のバロメーター」といわれ、同社もその発展に尽力してきました。2012年(平成24年)に王子ホールディングスとなった後も、経営理念「革新的価値の創造」「未来と世界への貢献」「環境・社会との共生」を通じて、情報を広く社会に伝えることを社会的使命として取り組んでいます。

■環境と調和した企業活動の展開■
 王子グループは、「環境負荷ゼロに向け、限りなく挑戦」「持続可能な森林経営」「責任ある原材料調達」の3つを2020年に向けた「環境行動目標」に設定しています。 
 「環境負荷ゼロに向け、限りなく挑戦」は、環境事故や製造物責任事故ゼロの継続、温室効果ガスの排出低減、廃棄物の発生抑制や有効活用の推進、生態系に配慮した排水・排気の管理といった工場の取り組みが中心です。
 例えば、排気対策では、全ボイラーにばいじんや、窒素酸化物、硫黄酸化物の除去装置を付けています。また、排水対策では、浮遊物質を除去するため凝集剤を加えて沈殿させる凝集沈殿法や、排液に溶け込んだ有機物を微生物が分解する活性汚泥法などを活用しています。排気や排水は常にモニタリングされ、法令基準を守っています。さらに、廃棄物対策では、紙の生産過程で排出されるペーパースラッジ(有機性汚泥)を灰にし、セメントの原料や土壌改良材、埋め戻し材などに再利用しています。製紙業界は、過去に工場排水に起因した環境問題を発生させた歴史があります。この反省から、日本の製紙会社は世界一の水質管理の技術を有するまでになり、近年では、その技術を他の産業や海外に提供しています。
 「持続可能な森林経営」は、木材資源の多種多様な活用によって資源の価値を最大限に引き出す総合林産業を推進しています。製紙業は、木を伐採し自然破壊を行っているという誤ったイメージを持たれがちです。王子グループでは、国内に約19万ヘクタール、海外に約28万ヘクタール、合計で東京都2個分に相当する47万ヘクタールの社有林や植林地を保有・管理し、生物多様性の保全にも取り組んでいます。
 また「責任ある原材料調達」方針に従い、トレーサビリティーなどを徹底し、安全性や合法性、環境・社会への配慮が確保された原材料調達に努めています。

■王子製紙苫小牧工場の概要■
 王子製紙苫小牧工場は、国内初の本格的な新聞用紙の生産工場として1910年(明治43年)9月に操業を開始しました。製紙業は水と電気を使うため、自然に恵まれた大地が必要です。その点、苫小牧は広大な平地を有し、原料となるエゾ松、トド松などの豊かな森林に恵まれ、きれいで豊富な支笏湖(北海道千歳市)の水で水力発電ができ、交通の便も良いという好条件が揃っていました。
 現在の製紙原料は、6~7割が古紙です。苫小牧工場では、その大半を関東圏から集めています。残りの3~4割が間伐材や植林木を含む木材で、道産材を中心に北米、オーストラリア、ニュージーランドなどから調達しています。古紙の利用は1975年(昭和50年)から始まり、紙全体での利用率は約6割、新聞用紙に限っては約7割です。
 製造機械は進化を遂げましたが、紙の基本的な製法は100年前から変わりません。苫小牧工場では、丸太は貯木場から送木水路で工場構内へ運ばれ、ドラムバーカーで樹皮をむかれた後、マガジングライダーですりつぶされてパルプになります。また、木材チップはチップヤードからベルトコンベヤーで工場構内へ運ばれ、リファイナーと呼ばれる機械ですりつぶされたり、コンピューター制御された蒸解装置で化学処理されパルプになります。
 同工場は、支笏湖の水を利用した水力発電に加え、廃タイヤや、廃プラスチックから製造されたRPF(廃棄物燃料)、重油、石炭、チップをパルプにする蒸解過程で排出される廃液などから火力発電を行い、工場の全電力を賄うことができます。
 144万2000平方メートルの敷地では、643人の従業員が年間100万トンの紙を生産しています。そのうちの約8割が新聞用紙で、国内供給量の約3割を占めます。単純計算で1カ月のうち7~10日間程度は同工場で生産された新聞用紙が各家庭に届いていることになります。

見学の様子

■苫小牧工場内の見学■
 2007年(平成19年)に経済産業省の「近代化産業遺産群」に認定された設備のうち、1909年(明治42年)に完成した変電所や1929年(昭和4年)から原木の搬入を開始した送木水路を見学しました。送木水路は自然の勾配による水の流れだけで原木を工場構内へ運ぶ仕組みで、電力は使っていません。道内産の松類の間伐材を中心に、多いときには1日6000本が流れていたそうです。これらに加え、創業時に送電を開始した千歳第1水力発電所、1925年(大正14年)から稼働するドラムバーカーは、今でも現役で活躍しています。 
 敷地中央にはJR室蘭線が横断しています。沼ノ端駅(北海道苫小牧市)から白老駅(北海道白老郡白老町)までの約28キロメートルは、日本一長い直線線路です。現在、苫小牧工場の製品輸送の主力は苫小牧港からの海上輸送ですが、一部は貨車輸送も利用されています。

■パルパーの見学■
 パルプは原料や製法により、古紙パルプ、機械パルプ、化学パルプに分類されます。古紙からごみやインクを取り除いたものが古紙パルプ、丸太や木材チップを機械的にすりつぶしたものが機械パルプ、木材チップを薬品で煮て繊維を取り出したものが化学パルプです。
 古紙パルプを生産するパルパーは、古紙に温水と薬品を加え、解きほぐして繊維状にするドラム式洗濯機のような機械です。ベルトコンベヤーに1個1トンの古紙の塊が続々と運ばれ、4本のスクリューでほぐされ、パルパーへ投入される迫力ある光景に、参加者は見入っていました。古紙の塊は1日2400個を使い、敷地内に20日分の4万8000トンを備蓄しています。ベルトコンベヤーにセンサーが設置され、パルパー内の古紙の量に合わせ、ベルトコンベヤーの速度を調節しているそうです。
 その後、30~40分かけて古紙を溶かし、パルパー後方に設置された網目にシャワーをかけ、原料とビニール袋・紐などのパルパーかすに分類し、不要なパルパーかすを自動排出します。さらに、ホチキスの針やビニール片などの細かいごみを取り除き、薬品を加えて2時間漂白し、フローテーターへ流します。フローテーターは古紙パルプに付いたインクを薬品と泡で吸着させ取り除く機械です。高さは3.7メートルあり、底から空気を入れて泡を発生させるジャグジー風呂のような構造になっています。除去したインク付きの泡は乾燥させ、燃料として再利用します。その後、細かいちり、砂、埃を取り除き、脱水と洗浄を繰り返し、パルパーに古紙が投入されてから8~10時間かけてタンクに貯められます。 
 参加者は、41年前、日産100トンから始まった古紙パルプの生産が、現在は約20倍の1995トンと聞き、技術の進歩に感心していました。

■抄紙機の見学■
 同工場は、新聞用紙を作る6台と印刷用紙を作る2台の計8台の抄紙機が稼働しています。中でも、新聞用紙を作る最新のN-6マシンは世界屈指のスケールです。
 抄紙機は、複数のパルプをプロポーショナーで紙の特性に合わせてブレンドし、水を加えて濃度1%に調整したものをヘッドボックスへ運び、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、サイズプレス、リールパートを経て、紙を作る構造です。
 まず、ワイヤーパートで紙の土台を作ります。プラスチック製ワイヤー網が縦の方向に走行し、ヘッドボックスから噴射された原料を2枚のワイヤー網に挟んで水を絞ります。次に、プレスパートで脱水します。合成繊維製のフェルトで湿紙を挟み込み、巨大なロールでプレスしながら水分量を50%まで脱水します。さらに、ドライヤーパートでプラスチック製カンバスを用いて、蒸気で表面が100度になった33本のシリンダーに紙を押し当てながら水分量を7~8%まで乾燥させます。
 仕上げとして、サイズプレスで、紙の強度を上げて滑らかにし、インクの発色を良くするためにでんぷん溶液を塗って、10本のシリンダードライヤーに通して乾燥させます。さらに、新聞紙見開き10枚分に相当する幅8.4メートルの紙を、2本の巨大なロールで厚さを均一かつ表面を滑らかにし、つやを出します。その後、リールパートで、直径3.5メートル、長さ120キロメートルの巨大なロール(親巻取り)が巻き上げられます。この長さは、直線距離にして苫小牧から函館間に相当し、70分に1本を生産しています。
 最後は、ワインダーで円盤状のカッターを使用し、お客さまへ納入する製品サイズにカットします。製品の基本寸法は、幅が新聞紙見開き2枚分の1626ミリメートル、長さが1万3720メートルです。これは40ページの朝刊5000世帯分に相当し、重量が1トンになります。N-6マシンでは毎分1700メートル、1日で700~720トンの新聞用紙を生産しています。
 完成後、1万トンクラスの専用輸送船3隻で苫小牧港から全国の印刷工場へ出荷されます。輸送船は工場と首都圏を3日で1往復し、帰りは古紙を乗せてきます。
 抄紙機の長さは160メートルですが、実際は機械内部を蛇行して進むため300~350メートルになります。参加者からは、原料が噴射され紙が巻き取られるまでわずか12~13秒で、そのスピードが時速100キロメートルと聞き、驚きの声が上がりました。

王子ホールディングスへの質問と回答

社会広聴会員:
製紙業界を取り巻く環境について教えてください。
王子ホールディングス:
2000年(平成12年)ごろを境にIT技術が進化し、デジタル化が進んだ影響で、新聞、本、雑誌、カタログなどを紙で読む人が減少しています。また、少子化が進み、教科書など学校での紙の使用量も減少しています。このような状況を受け、現在の紙の使用量は下降気味です。そこで当社は、セルロースナノファイバーなどの新しい分野に注力しています。セルロースナノファイバーは、パルプにする技術を応用し、木質繊維を4ナノサイズに分解したもので、髪の毛や光の波長よりも細く、紙でありながら透明で、折ることも燃やすことも再生することもできます。現在は、有機ELなどへの実用化を目指し、研究を進めています。また、紙製造で培った薄く広く平らにする技術をプラスチックフィルムに応用し、ハイブリット車のコンデンサーなどで使用するフィルムなども生産しています。
 

社会広聴会員:
新聞用紙とその他の用紙の生産方法は異なりますか。
王子ホールディングス:
基本的には同じです。特に、新聞用紙は、毎日発行する新聞の印刷工程に不具合が生じないよう、品質や納期に細心の注意を払っています。新聞用紙は100種類以上あり、印刷機の特性やクセに応じて調整しています。近年は軽量化が進み、10年前に比べて2割ほど軽くなっていますが、裏から透けにくく、カラー印刷時にもしっかり発色する紙を開発しています。また、新聞社さんの印刷機で用紙が切れないよう、古紙を使いつつ、強度を保つ工夫をしています。
 

社会広聴会員:
自動化された生産工程で苦労することは何ですか。
王子ホールディングス:
自動化といっても全ては機械化できません。例えば、紙が切れてもつなげませんし、機械が検知しないトラブルもあります。その際は、職人の技術が頼りです。パルプの性質が異なっても、規格品を生産しなければなりませんし、当工場は歴史があるが故に、扱うことが難しい機械もあります。こういった技術を若い世代に伝えるために、日々、努力しています。
 

社会広聴会員:
資源環境ビジネスについて教えてください。
王子ホールディングス:

資源環境ビジネスは、森林から供給される資源を主原料とした事業です。近年は木材チップやパルプといった製紙原料だけでなく、木材加工品である家具や建材の生産販売にも力を入れています。また、電力事業にも取り組んでいます。製紙工場は巨大な機械を動かし、紙を乾かすために水力発電や火力発電設備を有しています。火力発電ではパルプの生産過程で排出される廃液や、廃タイヤ、廃プラスチックを使ったバイオマス発電などにも力を入れています。本業で培ったノウハウを王子グループで共有し、工場で発電した電力を販売しています。

参加者の感想から

●新聞紙の生産工程は自動化が進んでいましたが、何かアクシデントがあっても、最後は人の五感や職人技で解決すると聞き、安心しました。 

●軽くて薄くて透けない丈夫な紙を作る技術は素晴らしいです。日本の古紙は分別がきちんとされているので、品質が良いと聞き、リサイクルに出す際のマナーについて、少し手間を掛けても丁寧にしたいと思いました。

●間伐材や古紙の利用、川の水流による木材運搬や発電、生物多様性を重視した植林、世界に誇れる浄化技術を活用した排水など、環境への配慮に感銘を受けました。

●日本最初の製紙会社の歴史ある建物や送木水路に感動しました。苫小牧工場が地域で果たす役割を知り、「紙」からつながる社会を考えるきっかけになりました。

王子ホールディングスご担当者より

 このたびは、王子製紙苫小牧工場にご来場いただきありがとうございました。苫小牧工場は、100年以上にわたり古紙利用の推進や最新技術の導入をしながら、新聞用紙などを生産してまいりました。工場見学を通じ新聞用紙へのご理解を深めていただけたのではないかと存じます。
 懇談会では、生活者の皆さま方の忌憚のないご意見を伺うことができ、私どもにとりましても大変貴重な機会となりました。心より御礼を申しあげます。

 

 

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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