『経済広報』(2016年4月号)掲載
グループ広報戦略(5)

日本コカ・コーラの広報・パブリックアフェアーズ活動

日本コカ・コーラ(株)

 「コカ・コーラ」は言わずと知れたグローバルブランドであり、コカ・コーラ社は全世界で事業を展開するグローバル企業である。日本コカ・コーラは、米国本社のザ コカ・コーラ カンパニーと連携するとともに、日本各地にあるボトラー社や関連会社と強いパートナーシップを結び、事業や広報活動を展開している。世界各地のコカ・コーラ社とのグローバル広報体制と国内グループ広報体制について聞いた。

日本コカ・コーラの組織体制と広報方針

 日本コカ・コーラは、ザ コカ・コーラ カンパニー(本社:米国ジョージア州アトランタ)の日本法人として1957(昭和32)年に設立され、1964年の東京五輪や、2002年のFIFAワールドカップ日本・韓国共催大会を協賛するなど、日本経済の発展と共に成長を続け、来年には創業60周年を迎える。主な業務内容としては、守山工場(滋賀県)を拠点に全国のボトラー社に原液を供給するほか、日本の市場や消費者・購買者の分析を通じて製品開発やマーケティング戦略を策定している。
 同社の広報活動は、広報・パブリックアフェアーズ本部が担っている。社内でも広報は重要な役割を担い、社長直下の組織として、マーケティングや、経営戦略などといった部署と同列になっている。広報・パブリックアフェアーズ本部では、コミュニケーション、政策渉外、消費者コミュニケーション、危機管理の4部門から成り立っており、それぞれの部門が、ボトラー社の広報部門と連携し、社内外向けの情報発信を行っている。
○コミュニケーション
 コミュニケーション部門は、ブランドコミュニケーション、コーポレートコミュニケーション、インターナルコミュニケーション、デジタルコミュニケーションの業務を担っている。ブランドコミュニケーションでは、マーケティング部門と連携し、自社ブランドの製品をどのようにPRしていくかの戦略を立案・実行している。一方、コーポレートコミュニケーションでは、企業ブランドや会社自体をどのようにPRしていくかを考え、競争の激しい飲料業界で、会社のレピュテーションを上げることを目標に日々活動を行っている。インターナルコミュニケーションでは、社員全員に新製品や新キャンペーンの情報を適宜共有・理解してもらうことで、全社員が会社の“アンバサダー”として社内外に自ら情報を発信していくことを後押ししている。また、紙による社内報は発行していないが、世界のザ コカ・コーラ カンパニーの社員が使用しているイントラネットを使い、各国から各地域の情報を発信・共有できる仕組みを導入した。デジタルコミュニケーションでは、同社が取り組んでいる様々な活動を伝えるコミュニケーションプラットフォームとして、2013年に「Coca-Cola Journey」を新たに立ち上げた。新製品や新キャンペーン、サスティナビリティー、ボトラー社の活動といった情報をストーリー仕立てに編集したウェブマガジン型企業サイトとして展開している。また、同サイト内に、「広報ブログ」と呼ばれるページを設置し、リアルタイムでスピード感をもって、情報を発信し、読者を飽きさせることのないよう、積極的に情報の更新をしている。
○渉外
 渉外では、地域のコミュニティへの社会貢献活動と政策渉外活動を行っている。
 コミュニティ活動のひとつの大きな柱は、東北の被災地復興支援である。同社の親会社に当たるザ コカ・コーラ カンパニーは、東日本大震災直後の2011年3月24日に「公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団」内に「コカ・コーラ復興支援基金」を立ち上げ、総額25億円の拠出金とコカ・コーラシステム従業員、消費者からの寄付で、「心豊かでたくましい人づくり」の活動理念に基づいて、次世代を担う子どもたちの教育支援を中心に、4つの取り組みを実施してきた。
 防災機能のさらなる向上に向けた被災3県55の公立小・中学校への太陽光発電設備の設置助成のエコ支援事業。設置後には、クリーンエネルギーを通じた環境教育の授業も実施している。沿岸被災地の将来を担う青少年の育成支援を目的に、岩手県内の高校、特別支援学校へ計5台のバスを寄贈した。
 米国から来たボランティアスタッフと被災地の子どもたちが一緒にショーを創作するワークショップ形式のプログラム「ヤングアメリカンズ東北ツアー」への協賛や、中学生・高校生を対象にした英国・米国「ホームステイ研修プログラム」を提供した。米国への「TOMODACHI Summerホームステイ」研修では、岩手・宮城・福島の高校生を、ホームステイや英語研修プログラムに派遣し、異文化体験を通じてグローバルな視野を身につけると共に、「震災体験を踏まえて自らと出会う」ための学びの機会となっている。この「TOMODACHI Summerホームステイ」研修には、2014年までの3年間で累計239人の高校生が参加した。

 そのほかにも、「コカ・コーラ教育・環境財団」では、青少年への育成を目的として、大学生への奨学金制度やアスリートを全国の学校へ派遣して、走り方の出前授業を行う「かけっこ教室」を開催。また、北海道には「コカ・コーラ環境ハウス」を設立した。栗山町の歴史ある元小学校を改装し、宿泊施設も備え、全国の環境教育の拠点としている。ここでは、毎年、地域の環境保全活動を促進することを目的とした「コカ・コーラ環境教育賞」の最終選考会、表彰式を開催、文部科学省、環境省、有識者、栗山町の方々が集い、全国各地の青少年による環境ボランティア活動を顕彰している。

 このように全国で幅広く活動を支援しているのには、全国各地にあるボトラー社の存在が大きい。各社にパブリックアフェアーズと呼ばれる組織があり、地域のコミュニティでの活動に積極的に参加しているため、全国各地で、ニーズに合った活動をすることができる。それにより、日本の一部の地域だけでの活動ではなく、全国規模のスケールの大きな活動をすることができる。

サステナビリティーフレームワーク

 同社では、サステナビリティーをビジネスの成長の必須条件と位置づけている。サステナビリティーの取り組みは、事業を営む国において様々なステークホルダーと協力し、前向きな変化と社会的価値を生み出すことを世界共通のビジョンとして掲げている。世界共通で取り組む9つの重点分野において、グローバルな目標に加え、ローカルの課題に合わせた活動を行っている。本社が、共通したビジョンとフレームワークを策定し、世界各国のコカ・コーラ社へ発信する。それぞれの国にあるコカ・コーラ社はそのビジョンと地域が抱える課題を照らし合わせ、その展開地域で社会貢献活動を計画し実施している。
サステナビリティーフレームワーク
 日本コカ・コーラでは、東北の被災地支援や、女性管理職比率を高める施策、日中最長16時間、最大で消費電力を95%削減できる「ピークシフト自販機」の積極的な市場導入、全国20カ所の工場の水源域で水資源保護活動を展開するなど、本社のビジョンを具体的な計画に落とし込み、日本全国をコミュニティと定めて実行している。
 また、世界各国での取り組みを共有する体制も整っており、世界各国の担当者を集めたワークショップや、アジア地域の担当者が直接顔を合わせる会議などを定期的に行い、各地の取り組みを共有し、それぞれの地域での活動のレベルアップを図っている。全世界のコカ・コーラ社が共通のビジョンを持ち、地域の人々と連携して課題解決に取り組むことはコカ・コーラ社の大きな強みである。

前身がコールセンターのCIC(Consumer Intelligence & Communications)

 広報・パブリックアフェアーズ本部の中にあるCICは前身がコールセンターである。現在もコールセンター機能があり、顧客からの質問や指摘に対応する最前線となっている。顧客とコミュニケートできる唯一の部署であるので、経営トップも重要視しており、社長を含め定期的に直接声を聴く機会を設けている。
 また、同社の特徴は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に特化したチームを配置していることである。従来のコールセンターの機能を発展させ、SNSエリアでも消費者の生の声を収集し活用するため、発信者のコメントをキーワードを定めて拾い、分析している。また、コカ・コーラ社に対するポジティブな投稿とネガティブな投稿の両方に対して積極的にアプローチし、消費者とのコミュニケーションを図るよう努めている。
 コールセンターでの対応は、会社と消費者の間で完結してしまい、疑問やその回答が外に伝わることは少ないが、SNSでは、そうしたやり取りも含め、第三者がフォローできる環境でコミュニケーションを取ることになる。例えば、ある消費者が「コカ・コーラ社の自販機で商品が出てこない、どこに連絡をすればよいのか」とSNSに投稿すると、SNSチームはその投稿を素早く見つけ出し、SNSで、迷惑をかけたお詫びと共に連絡先を案内する。
 すると、投稿した人が「コカ・コーラが素晴らしい神対応をしてくれた!」とコメントし、それがSNS上で「神対応」として話題になることがあった。消費者一人ひとりが語っていることに耳を傾け、きちんと誠意をもって、会社として対応する。困っていることがあれば、その投稿を見過ごすことなくサポートする。これこそがまさに「コンシューマーエクスペリエンス」を消費者に提供することであり、これからのコンシューマーカスタマーリレーションズには欠かせないものである。そして同時に、外からもしっかりとしたサポートをしている企業だという認識を持ってもらえるきっかけとなる。
文:国内広報部主任研究員 西田大哉
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