『経済広報』(2017年11月号)掲載
企業広報研究

東京ガス、オリックスグループのグループ広報

 経済広報センターは、9月12日、「企業広報講座」を東京・大手町の経団連会館で開催した。東京ガスの高瀬章弘氏と、オリックスの橋本圭司氏が「グループ広報」について講演した。参加者は106名。
高瀬章弘

高瀬 章弘(たかせ あきひろ)
東京ガス(株) 広報部広報担当部長

グループ経営ビジョン「チャレンジ2020ビジョン」

 東京ガスは1885(明治18)年に、当時官営であった東京府瓦斯局を民営化し、東京瓦斯会社が誕生したことに始まる。ガス灯事業からスタートした当社は、高度経済成長期のLNG(液化天然ガス)の輸入をきっかけとして、以来安定的なガス供給を続けてきた。2011(平成23)年にはグループ経営ビジョン「チャレンジ2020ビジョン」を発表し、総合エネルギー事業への進化、グローバル展開の加速、新しいグループフォーメーションの構築に向けた取り組みを開始。社内では、ガス事業を柱とする「富士山型」から、総合エネルギー企業を展開する「八ヶ岳型」へと大きな事業転換を行った。2015(平成27)年に創業130周年を迎え、現在は、グループ企業70社、連結従業員数は約1万7000人。デジタル化社会の進展、環境政策の加速、働き方改革の浸透など、事業を取り巻く環境に大きな変化が生じていることを踏まえ、改革的基盤強化策に取り組んでいる。

広報部の組織体制と業務分担

 広報部では、マスコミ、地域社会など各ステークホルダーと信頼関係を構築することによって、当社グループの企業価値を高めることをミッションとしている。広報部は、報道、広報、広告の各グループとCSR室、また、今年の4月に総合企画部から移管された東京2020オリンピック・パラリンピック推進室で構成され、総勢約40人。また、グループ会社に、東京ガスコミュニケーションズというハウスエージェンシーを持ち、広告制作業務やグループ広報業務をサポートしている。
 報道グループは、マスコミ対応の窓口としてプレスリリース作成、取材対応などが主な業務である。マネージャー以下9人体制であり、新聞社などの体制に合わせた業務分担をしているのがユニークな点である。経済部担当(3人)、社会部担当(2人)、生活家庭部+テレビ番組制作担当(3人)で活動している。最近増えてきた財界関連や、オリンピック・パラリンピック関連の対応はその都度グループ内のメンバー同士がカバーし合っている。
 広報グループは、グループ内広報誌、ウェブ、SNS、イントラネットの企画制作を行っている。最近では、SNSでの情報発信を強化、特にフェイスブックでは各部運営も含めて複数のアカウントを持っており、記事の投稿、グループのガイドラインに基づく監視を行っている。
 広告グループは、当社グループが行うすべてのテレビ・ラジオCM、新聞・雑誌広告の制作および各種媒体への出稿を行っている。
 CSR室は、当社グループ内のCSR経営の推進、CSRレポートの作成、また、震災ボランティアなど社会貢献活動の企画・実施、また、ガスの科学館、ガスミュージアムなどの運営・管理を担当している。

グループ広報活動体制

 グループ全体の広報活動を統括しているのは、東京ガス(株)の広報部である。グループ企業は70社あるが、「広報部」と称する組織は、東京ガス(株)のみである。子会社の広報機能を担う各社の総務セクションと連携している。ネガティブな情報は、子会社で発生した場合でも広報部に情報が速やかにエスカレーションされる仕組みが整っている。また、その情報の対外発信時期や方法についても、広報部が中心となり子会社・関係部門と協議し決定している。一方、新製品や新規サービスの発表などのポジティブな案件では、広報部が関係部門と連携し、ニュースリリースの作成などメディアへの情報発信を行う。
 グループ内の情報共有や一体感醸成のためのメディアは主に2つある。印刷媒体のグループ内広報誌『GAS』とイントラネット上で配信する「GASNEWS」である。
 グループ内広報誌『GAS』は、主に、グループ各社の取り組みや人物紹介、東京ガスの主要な政策の詳細説明といった内容となっている。当初は、『東京ガス社内報』であったが、事業の多角化などにより、子会社や東京ガスライフバル、工事会社などにも配布対象を広げ、現在3万6000部を発行している。配布対象の拡大に伴い、記事も「グループ経営」の主旨に沿った内容に変化してきている。
 一方、速報性を要するニュースは、イントラネット上の「GASNEWS」でカバーしている。外部への発信と同じタイミングで発信されるプレスリリースと各部・各社から寄せられる独自ニュースを年間250本程度配信している。また最近では、ライブ感を伝えたいトピックスについては「動画」を使って配信しているが、今後はもっと活用したいと考えている。

グループ内情報の収集体制

 グループ広報を担う上でいかに情報を集めるかがカギになっており、大小、硬軟様々なトピックスごとに情報交換会を行っている。
 グループ経営に関する重要案件や主要な広報活動方針を策定するのが「企画・広報定例会」である。これは社長をはじめ、企画担当・広報担当役員、部長が出席し、最近のトピックスから1年先の活動を見据えた上で、どのようなストーリー・スケジュールで広報活動を行うかを共有・確認している。これらの内容は、主にプレスリリースや記者会見などの対外発表に反映している。
 また、グループ各社の日常的な話題やイベントなどの“やわらかいトピックス”は、任命されたグループ各社の広報編集委員から都度情報を送ってもらっている。
 最近、グループ広報の重要性が再認識され新設したのが「八ヶ岳広報連絡会」である。グループ会社の総務部長やマネージャーが出席し、グループ各社の最新トピックスや経営動向の共有を行っている。ここで議論した内容は、取材や見学会などにつなげることになる。

コーポレートメッセージの策定と浸透

 2015年10月には新しいコーポレートメッセージ「あなたとずっと、今日よりもっと。」を発表した。電力・ガス小売りの全面自由化という、エネルギー大競争の新たなステージに向け、当社グループが顧客をはじめとするステークホルダーにどのように向き合っていくのか、新しい時代に向けてどう立ち向かっていくのかという思いが込められている。メッセージは、社内の若手と中堅を中心とした部門横断的なワーキンググループを立ち上げ、約半年間にわたる議論を経て作られた。そうしたメッセージは、ステークホルダーへの浸透はもちろん、従業員一人ひとりにいかに自分事として捉えてもらうかがポイントである。当時、全グループ従業員を対象に、理解を深めるためのワークショップが開かれたが、その模様を広報部が取材し、社内報・イントラネットなどに掲載しグループ内で共有した。トップメッセージや経営情報の共有はもちろんのこと、こうした従業員の思い、グループ会社のエンゲージメントを強める企画の配信など、「グループ広報」はますます重要になってきていると考える。


橋本圭司

橋本 圭司(はしもと けいじ)
オリックス(株) グループ広報部長(当時)

オリックスグループの事業展開

 オリックスは1964(昭和39)年に、当時まだ日本では珍しかったリース事業のパイオニアとして、オリエント・リース(株)を設立。1980年代以降にはリース事業以外に、保険、銀行などにも進出。また、プロ野球球団の経営をはじめ、事業再生や投資銀行などのエクイティビジネスを展開、現在では、水族館の運営や、介護事業、旅館・ホテルといった運営事業、環境エネルギービジネスを手掛けるなど事業領域を広げている。世界36カ国・地域に展開し、連結会社850社、関連会社170社を抱えるグローバル企業グループである。

グループ広報部のミッション・課題

 「金融」と「モノ」の専門性を高めながら、“隣へ、そのまた隣へ”と事業展開してきた当社グループ。現在オンエアしているテレビCM「Do you know ORIX?」というメッセージは、当社グループが直面している課題でもある。多岐にわたる事業領域、事業分野に拡大した「オリックス」というマスターブランドを再構築し、これをもとに事業展開した姿をいかに描くのか。事業を通じて、様々な価値、様々な活力を生み出す強いブランドとして打ち出せるか。グループ広報部のミッションは、それぞれ独自の強みを持った企業体が相乗効果を生み出し、グループとしての強い統一メッセージを生み出すことである。あらゆるサービスを創造する「総合サービスカンパニー」として、全てのステークホルダーに対し、いかに身近なブランドであるかを伝えていきたいと考えている。

オリックスグループの広報体制と役割

 当社グループは、各事業部門とグループ会社が親会社・子会社の区別なく、連携してシナジー効果を発揮する連結経営を実践している。その強みをさらに生かすために、2012年5月、オリックス(株)に各社の広報機能を統括する「グループ広報部」を設置し、グループ全体の情報の一極集中と統一感を持った情報発信を可能にする体制をスタートさせた。また、2017年6月には投資家や株主、金融機関などステークホルダーに対し、スピード感ある統一的な対外情報発信の集約を目的に、経営計画部や財務部、経理部で構成する「財経本部」内に移管された。
 グループ広報部は、メディアチームと制作チームによって構成され、総勢18人(営業職14名、部長職1名、事務職3名)。メディアチームは、グループ会社も含めた社内外の情報発信の統括、メディア対応およびメディアリレーションの構築、社内報運営、リスクマネジメントなどを7人で対応している。また、同チームのメンバーがオリックス生命やオリックス銀行といった各グループ会社、各運営施設の広報担当者と連携し、事業セグメントごとに情報発信・情報共有を行っている。一方、制作チームは、様々な事業領域を持つオリックスのブランド・CI管理、インナーブランディング推進、ウェブサイト運営、企業CM・各種制作物の制作、グループ会社広告・宣伝の統括を行っており、こちらも7人で活動している。

オリックスグループの対外広報戦略

 同グループでは広報担当者間の情報共有を図るために、主要国内グループ会社の広報担当者を含めた「週次ミーティング」を実施。また、幅広く国内グループ会社の広報担当者が集まる「広報担当者会議」を四半期ごとに実施している。そこでは、グループ全体の戦略や動きに関する情報共有、各社の活動状況の共有、広報ノウハウの共有などを行っており、広報業務の方向性を統一している。
 対外広報業務においては「攻め」と「守り」の両面で戦略的に対応。例えば、「攻め」の広報では、企画広報、営業支援広報、適時開示など時流とタイミングを見極めることを徹底させている。直近においては、高齢ドライバーの運転問題が注目されている時期に「オリックス自動車の高齢者見守りサービス」の情報を強化したり、働き方改革、労働力不足が話題になっている時期に「オリックス・レンテックの産業用ロボットのレンタル事業の強化」をアピールしたりするなど、タイムリーで効果的な露出を狙っている。

オリックスブランドを強化する社内広報

 当社グループの一員としてのロイヤルティーの向上、エンゲージメントの強化を醸成するために最重要視しているのが社内広報である。 当社グループでは、2008年に紙の社内報を廃止し、グループのイントラネットにウェブ版の社内報を制作している。ウェブ版の社内報は、トップマネジメントからのメッセージに加え、タイムリーなニュースやグループ会社の事業紹介などを主に人にフォーカスした内容で発信している。ウェブ版の利点は、タイムリーに情報発信できるだけでなく、様々な事業環境で働く3万5000人のグループ従業員が社外にいるときにもアクセス可能で、しかも、双方向のコミュニケーションが図れるという点にある。
 また、当社では、外部のメディアを活用することにより、社内へのメッセージ発信を行っている。例えば、当社グループで推進している働き方改革について、社内イントラで発信するだけではインパクトが弱かった。しかし、トップ自らが主要メディアに登場し、発言機会を増やすことで、その「本気度」を確認できたという例もある。
(文責:国内広報部主任研究員 吉満弘一郎)
pagetop