経済界の考え③

排出量取引制度に対する懸念
〜国内排出量取引制度について、極めて慎重な検討が不可欠〜

(1)持続可能な社会の形成の足枷となるおそれ

排出権を購入すれば自ら削減しなくても目標を達成できるので低炭素化投資が減少するおそれ。
製品段階の貢献など、LCA(Life Cycle Assessment)の取組みが勘案されない。
リサイクル推進策と温暖化対策が矛盾する場合。

(2)技術革新の足枷となるおそれ

日本企業が有する優れた環境・エネルギー関連技術のシーズが摘まれるおそれ。技術によって世界の低炭素社会構築に貢献する日本のあるべき姿に逆行するおそれ。
革新的技術の開発に投入すべき資金を排出枠の購入に投入すれば、技術開発の原資が喪失。
排出権を購入すれば自ら削減しなくても目標を達成できるため、技術開発が抑制されるおそれ。

(3)炭素リーケージのおそれ、地球規模の温暖化対策に逆行するおそれ

エネルギー効率の低い国への生産シフトのおそれ。
地球規模の排出量は減らない、あるいは、増えるおそれ。
自由貿易をリードする日本にふさわしい、実効ある国境調整措置が不可欠とされるおそれ。

(4)日本産業の国際競争力の低下のおそれ、モノづくりの現場で働く人々・家族の生活に悪影響のおそれ

BATによる削減可能な量以上の温室効果ガスを削減しようとすれば、生産削減または排出権購入によるコスト上昇以外に道はないが、経済や雇用に深刻な影響。
制限のない国への生産シフトや制限のない国からの輸入が増加のおそれ。

(5)企業間の公正な競争が阻害されるおそれ

排出量取引制度の特徴は、製品がユーザーから評価され生産が増加した企業に不利、ユーザーから評価されずに生産が減少した企業に有利。
同業企業間で製品の種類、品質等が異なる中で、政府が公平性を証明できるキャップ、モノづくりの現場で働く人々が納得するキャップは可能か。

(6)世界最高効率の業界が排出権購入を強いられるおそれ


(7)行政コスト・民間の対応コストが増大


(8)持続可能な社会の形成の足枷となるおそれ。

生活や企業活動に不可欠なエネルギーコストが上昇。
地域間の格差が拡大。
所得間の格差が拡大。

国内排出量取引制度、再生可能エネルギー全量固定価格買取制度、温暖化対策税について、全体として、削減効果や国民生活、企業活動、雇用への影響を示した上で、国民的議論を行う必要。



官主導の統制経済/行政コストの増大

排出枠を行政が決定することは官僚統制(大きな政府)を招き、企業の自主性を著しく阻害。また、将来の生産・産業構造を正確には予見できない中、排出枠を公平に割り当てる仕組みを構築することは不可能
行政コストおよび行政手続きに対応する民間の手間・コストとも高くなり、国民経済全体で見て非効率
財政状況が厳しい中、どれだけの行政コストが国民経済に発生するか、真剣に考えるべき(cf. EU-ETS発足後に設立されたドイツ連邦環境庁の排出量取引局(DEHSt)にはレジストリや割当、モニタリングなどを担当する職員が約100名が勤務)。



地域間格差

日本に排出量取引制度が導入されたら?
地域別の排出量取引の世帯エネルギー支出への影響



所得間格差

日本に排出量取引制度が導入されたら?
所得階層別の排出量取引の世帯エネルギー支出への影響