広報とは

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1.目的・意義

広報の変遷

 

 「広報=パブリックリレーションズ(PR)」という概念が日本にもたらされたのは、比較的新しく、第二次世界大戦後である。そもそもは、GHQが日本に民主主義を根付かせることを目的としていたといわれている。
 GHQは、主に行政を対象としてPRを伝えたが、次第に民間企業にも普及していく。今日のIRの流れにつながった証券業界、社内広報を中心とした労使協調路線を打ち出した日経連(現・経団連)、広告と平行してPRのビジネス化に取り組んだ電通などが中心となり、民間企業にPRが広まっていった。
 その後、高度成長時代(1960年代頃)には、商品やサービスを売り出す販売促進が主な広報活動となった。しかし、その後1970年代に公害問題やオイル・ショックを発端とした「大企業性悪説」が広まり、企業が社会からの信頼を失いつつある中、その危機を脱するため、企業は営利活動だけではなく社会の一員としての責任を果たさなければならないことを自覚し、社会との良好な関係を回復するための広報活動が求められた。そのような状況下、企業批判が高まっていた1978年、経済広報センターは、個々の企業や業界を超えた経済界全体の立場から、日本経済の仕組みや実体、企業の果たしている役割を正しく社会に理解してもらうため、経済界と海外も含めた社会との対話促進を目的に設立した。
 その後、日本ではバブル経済が訪れ、世界経済においてはボーダーレス化が進んでいく。インターネットの発達もあり、情報が瞬時に世界中に伝わる時代が到来し、大きく経済環境が変化した。企業経営の改革が求められる中、2000年代には企業不祥事などが表ざたになり、さらに広報の責任や役割が増してきた。また、かつては広報の主な対象はマスコミであったが、株主・投資家、従業員、地域住民ほかあらゆるステークホルダーへと広がっていった。広報の内容もIR、環境、社会貢献など多岐にわたり、受身の広報から攻めの広報へと、戦略的広報に変化してきた。

 近年では、ソーシャルメディアの発達により、広報対応にも迅速性と、自社に直接関係しない人たち(利害関係者であるステークホルダー以外)を含む社会全体とのコミュニケーション、エンゲージメントにより、幅広い信頼を得ることが求められるようになってきている。


■企業広報活動の変遷
企業広報活動の変遷

広報とは

 広報とは何か。広報の定義は時代とともに変化しているが、日本の専門家の定義を紹介すると「PRとは、個人または組織体が、その関係する公衆の理解と協力を得るために、自己の目指す方向と誠意を、あらゆるコミュニケーション手段を通じて伝え、説得し、あわせて自己修正をもはかっていく継続的な対話関係である。自己の目指す方向は、公衆の利益に合致していなければならず、また現実にそれを実行する活動をともなわなければならない」(加固三郎『PR戦略入門』)とある。具体的には、企業や国、NPO、学校などの組織が、その事業の活動や方針を、広く社会に伝え、共感を得ようとする行為をいう。
 企業にとって、なぜその行為が重要か。社会の支持や共感を得なければ、その組織の運営や活動がスムーズにいかず、目標を達成することはおろか、今後の存亡をも危うくなりかねないからである。組織の存在価値(事業活動を通じて社会・経済に貢献しているか)を理解し、支援してもらうことで、企業は社会との共存を図り、さらには、持続的な成長・発展が望めるのである。
 さらに広報活動は、単に情報を発信するだけでなく、社会の一員として、ともに歩む姿勢を広く知らしめることが重要だ。同時に、社会の声を広く聞き、常に自社が世間からどう思われているかを認識し、社会にあわせて変化、改善してくことが必要となる。広報の英訳「パブリック・リレーションズ」は、直訳すると「公衆との(よい)関係(づくり)」で、まさに「双方向コミュニケーションによるよい関係づくり」であることを意味している。
 また、昨今では「パブリック=公衆」との良好な関係づくりにとどまらず、経済環境の変化や、企業の活動やステークホルダー(=公衆)の多様化から、企業経営全体を考えるコミュニケーションを総合的に「コーポレートコミュニケーションズ」(企業広報)と呼ぶようになっている。
 企業の姿、方向性を正確に伝える、また、社会の声をきちんと自社に反映し改善していく、これらは、経営と密接に結びついていなければできない。今や、広報は経営機能の一環を担っている。経営トップをはじめとした経営陣も、広報を重要視するようになり、さらに、ソーシャルメディア時代を迎え、広報部門の人員だけでなく全社員が広報パーソンとしての意識や行動が求められる時代になっている。
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2.役割・心構え

企業広報の役割

 企業の事業活動は、複雑で広範囲に及ぶようになってきており、その情報発信も容易ではない。一方で、その対象となる社会(ステークホルダー)も、消費者、顧客、取引先、社員、株主、投資家、地域住民、NPO、官庁、就職希望者など多岐にわたり、いっそう複雑になってきている。こうした広範で複雑なステークホルダーの意向・要望を把握し、よりよい企業に成長していくためには、きめ細やかで創意的なコミュニケーションが求められる。多岐にわたる相手に対し、どのようなメッセージをいつ、どのように発信していくか、常に考え、最大の効果が得られるよう広報パーソンは努力していく必要があるのだ。
 加えて、グローバル化やインターネットの普及など広報業務を大きく変える時代の変化と多岐多様なツールの進出により、従来の考えや手法に甘んじていてはならない。2008年、米国でおきた金融危機があっという間に全世界に広がったように、経済的な影響も加速化、グローバル化しており、さらに、法令の変更、環境問題、政権交代など、企業広報にも影響を与える変化の波が日々押し寄せている。それに伴い社会の常識も変化する。常に最新の動向にアンテナをはり、適宜、自社の広報戦略の中に取り入れていく必要がある。
 これらを常に意識しながら戦略・実行・評価・改善を繰り返していくわけだが、企業広報の活動としては、メディア広報、地域広報、社内広報、トップ広報、CSR(環境)広報、投資家向け広報、危機管理広報、マーケティング広報、レピュテーション・マネジメント、ブランド・マネジメント、パブリック・アクセプタンスなどがある。最終的な目的は、社会に認めてもらい、その信頼を勝ち得、企業価値を高めて、持続的に企業の成長・発展を可能にすることであるが、それぞれが独立した活動ではなく、相互に影響しあっている。また、これら多岐にわたる広報活動は、必ずしも同一組織(広報部門)内に置くわけではなく、別の部門をつくり業務を行う場合もある。一方で、コーポレート・コミュニケーションの機能を集約するため、組織を統合する企業や団体も増えている。

広報パーソンの心構えと求められる能力

 広報パーソンとして行わなければならないことは、企業と社会の良好な関係づくりである。つまり広聴(聞く)と広報(語る)という双方向コミュニケーション活動を適切に行い、ステークホルダーとの信頼関係を構築することの重要性を正しく理解することだ。そしてそのために必要なのは「事実をきちんと認識する能力と意欲」と「社会の流れを踏まえて事実を語る能力と意欲」である。まずは「社会」「経営」「コミュニケーション」「メディア」などに関する基礎知識を備えることに加え、社会動向の現状や変化、その背景、どのような議論がなされているかなどをリアルタイムに把握することだ。そのベースとなる知識・教養も必要である。常に好奇心や問題意識をもちながら、得た情報を論理的にかつ柔軟に思考する。
 その中でもまず備えたい能力「コミュニケーション」として求められるのは、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つの力である。「聞く」は、相手の話を理解することに加え、話を引き出す力が必要だ。「話す」は、伝えたいメッセージを、根拠と説得力をもって分かり易く明確に言葉として発する力。「読む」力は内容を正確・的確に理解し、多岐にわたる情報を分析し、総合的に判断してストーリーや傾向を導き出すこと。「書く」は文章だけでなく、表や写真、映像も含めたヴィジュアル的に見せる手法も含めた力である。広報パーソンは、これらのコミュニケーション力を駆使し、社内外の多くの関係者を調整していく役目も担う。聞くこと、話すこと、調整が上手くできれば、自然と自分のところに情報が集まってくるようになるのだ。
 必要な知識や教養、スキルを身につけるのはもちろんのこと、広報業務を行うにあたって人間性が重要になる。まずは、企業人である前に、良識ある社会人であること。そして様々なステークホルダーとの良好な関係を構築するためには、まずは広報パーソン一人ひとりが対人関係において信頼を勝ち得ることが条件となる。そのためには常に「誠実」でなければならない。嘘をつかない(言えない場合は言えないと明確に)、言うべきことは分かり易く言う、真摯に謙虚に相手の話を聞く、頼まれたことは迅速に行う、迎合しない、公平で客観的な視点をもつ、など普段から心がけて実行する。当然ながら、外面的にも、清潔で相手に好感がもたれ信頼できると思われる身だしなみにする必要がある。
 また、広報の仕事は、多種多様であり、時には危機案件にも遭遇する。しかし、どのような場合も、諦めず、冷静に、誠意をもって対処することが求められるのだ。
 広報パーソンは、自身の仕事ぶりや言動が、企業全体の評価に結びつき、会社のイメージが左右されてしまうということを常に自覚し、企業を代表しているという意識を持って行動しなければならない。これは、広報パーソンのみならず、企業のトップをはじめとした全社員が、「企業を代表している」という意識を持つことが重要である。

広報スキルを身につけるために

 「人間性」については、それぞれの個性に左右されるが、常に「誠実」であるべきと心がけ、広報パーソンとしてどうあるべきかを考えていけば徐々に磨かれてくる。
 また、知識やスキルを高めるには、広報関連の研修会などに積極的に参加するのも一つの方法だ。経済広報センターでも、様々な講座やセミナーを開催している。
 さらに、メディアや広報関係者の集まり、懇親会にはできるだけ参加し、情報交換を行い、人脈を広げていくことが大事だ。同様に、社外のみならず、社内のオフィス内や関係会社などへ積極的に足を運び、様子を見、いろいろな人と話すことが、後に役に立ってくる。情報収集だけでなく、自然とコミュニケーション能力も高まってくるだろう。
 また、新聞や雑誌、インターネットなどから日々、情報を入手するのはいうまでもない。
 日々のこれらの努力の積み重ねで、広報スキルが高まっていくのである。
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