社内・グループ広報

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1.目的・意義

コロナで高まる社内広報の重要性

 社内広報には、様々な意義がある。(1)企業理念やビジョンの浸透・維持、(2)経営情報の共有、企業目標の認識・実行、(3)職場間の相互理解、(4)企業の活性化・意識改革・モチベーションの向上、(5)社内の風土・文化の醸成、(6)企業と社会の信頼関係構築への啓発(コンプライアンスの徹底やリスク管理なども含めて)などである。これらの最終的な目的は、従業員一人ひとりが社会の一員としての役割を果たすために必要なマインドの醸成と企業の持続的な発展といえよう。
 社会とよりよい関係をつくり、企業の姿・方向性を正確に伝え、社会の声をきちんと自社に反映し改善していく双方向のコミュニケーション。これらを実践するためにも、従業員全員が共通の認識のもと、行動しなければならない。そのために社内広報の果たす役割はテレワークなどが普及したコロナ禍では、一層重要なものになっている。

社員一人ひとりが“メディア”

 身近な例で考えても、取引先として接した社員や、販売窓口の社員の対応が良ければその企業に対する好感度は高まるだろうし、逆の場合は、取引を止めたり、そこのお店では買わないなどということになるだろう。私たちは接した社員一人の言動によってその企業のイメージを決めてしまう。一人ひとりの言動は大変重要だ。
 近年、従業員の多様化が進み、正社員だけでなく、派遣社員、パートタイマーなどが増加し、帰属意識、自社への理解が薄くなってきているといわれている。しかし、顧客からは、正社員も派遣社員も関係なく、同じ企業の一員としてみられている。
 さらにグローバル化が進み、言語・文化が異なる海外支社・支店で現地人材の雇用も進んでいる。また、2000年3月期からは連結決算が導入され、グループ企業全体での業績が評価されるようになった。雇用形態に関わらず、グローバル、グループを含めた全従業員が会社の代表であり、広報パーソンである時代がきたと考えられる。

ソーシャルメディア時代の社内・グループ広報

 ソーシャルメディア時代を迎え、社員がブログやSNS、マイクロブログを使って情報を発信するようになった。いわば社員自身が「メディア化」しており、そこから発信される情報が持つ影響力は一段と大きくなっている。ここで会社の姿を正しく伝える情報発信が行われるには、社員一人ひとりが経営理念や方針、ブランド戦略を共有、理解することが不可欠であり、その点で社内・グループ広報が果たす役割はますます重要となってきている。
 また、ソーシャルメディア時代においては、社員が行った不適切な情報発信が、ごく短期間で会社全体に対する信用やブランドの失墜を招く危険がある。社員によるソーシャルメディア利用のガイドラインを徹底させることも、社内・グループ広報の重要な役割となっている。
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2.社内広報の方法

社内広報の種類

 社内コミュニケーションの方法は、社内報(紙・誌)、イントラネット、社内テレビ、DVD(ビデオ)、掲示板、メールマガジンなど媒体を通じたものと、トップとの懇親会、イベントやフォーラム、広報連絡会など直接のコミュニケーションがある。これらの媒体の特徴を理解し、それぞれの長所を上手く組み合わせて、効果的な発信を行いたい。

社内報とイントラネット

 近年のネットの普及は、社内広報の媒体にも変化を及ぼしている。紙媒体を廃止してネットに切り替える企業、あるいは一度ネットに切り替えたが、再び紙媒体に戻す企業などもある。しかし、多くの企業が、社内報とイントラネットの特性を生かした役割分担や棲み分けを図り併用している。
 社内報は、紙媒体の特性である一覧性の読み易さがあると同時に、掘り下げた企画ができる。どこにでも持ち運べるので、好きな時にゆっくりと読むことが可能だ。自宅で家族に読んでもらうこともでき、自社への理解を深めてもらえる。一方で、速報性に欠け、編集・配布などに時間と手間、コストがかかる。そのデメリットをカバーできるのが、イントラネットだ。速報性に優れているので、緊急性があるものや対外的に公表したものなどを直ぐに掲載し、社員へ告知することができる。また、作成が容易であるのに加え、加筆修正もできる。しかも、低コスト。リンクなどで関連情報にアクセスも可能なので、詳細を知りたい人にはより広範な情報を提供できる。しかし、特定の場所でしか閲覧できず、工場や現場などパソコンの環境が整っていない場合、読むことができないという欠点もある。
 社内報とイントラネットを併用することで、この欠点を補い、すべての従業員に対して確実に自社の情報を届けることができる。8割を超える企業がこの2つのツールを併用しているのもうなずける。しかし今後、モバイルでのイントラネットの閲覧が広がれば、紙媒体が減少していくことも考えられる。

トップと従業員の直接対話

 イントラネットの活用が進む一方で、経営層と従業員がフェイス-トゥ-フェイスで対話する場を設けている企業もある。
 経営層、特にトップ自身が従業員に対して直接メッセージを発信し、語りかけることは、全社員の経営理念や目標の共有や、モチベーションの向上につながる重要な取り組みである。
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3.グループ会社広報

グループ広報の実施状況

 先に述べたように、連結決算導入後、企業はグループ連結経営の時代となった。業績のみならず、企業イメージの向上や信頼関係構築なども含め、単独ではなくグループベースで考えていかなければならない。環境保全が重視される昨今では、ISO14000取得や、グリーン調達の推進、地球温暖化防止、産業廃棄物削減やリサイクルなども、グループ全体での取り組みが求められている。さらに、人材育成、労働災害の防止、健康管理など人事労働面や、グループ会社の事件や不祥事を防ぐためのコンプライアンス体制の構築や意識向上、危機対応時の連携・協力などにおいても、グループとしての対応が求められる。

グループ広報の目的

 グループ広報の目的は、(1)経営方針、経営情報などのグループ内共有化、(2)グループ内コミュニケーションの推進、(3)グループ全体のブランド構築、(4)グループ社員としてのアイデンティティの醸成、(5)ステークホルダーへのグループ情報の一元的な発信、(6)マスコミ対応窓口の一本化、(7)グループ全体の危機管理対応の強化などがある。
 さらに近年は新型コロナウイルス感染症の拡大で、在宅勤務、リモート勤務が進み、社員同士の会話や情報交換が減少しているため、会社とのエンゲージメント、会社への求心力、忠誠心を増すための新たな社内コミュニケーションが求められているといえる。
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