経済広報

『経済広報』(2012年6月号)掲載

企業広報研究
話題の企業の広報
新東名高速道路開通と広報
長谷川 周三

長谷川 周三(はせがわ しゅうぞう)
中日本高速道路(株) 広報・渉外部 東京広報部長

インパクトが強かったテレビニュース

4月14日に新東名高速道路(以下、新東名)が開通したが、テレビでは連日「新東名と東名高速道路(以下、東名)の違い」や「サービスエリア(以下、SA)のグルメ情報」などが取り上げられていた。どのような取り組みをしたのか。
 

長谷川 広告・宣伝の予算は限られており、派手なことはできないし、しかも短期間で多くの人に新東名の走りやすさやSAの魅力、経済効果などを認知してもらうために、パブリシティー広報を先駆けて行い、その後、広告を打つ、という手段を用いた。
 まず、起爆剤になるものが必要だと思い、某テレビ局の人気ニュース番組のプロデューサーにお願いして、広報用に作成していたDVDを見てもらいながら説明を聞いていただいた。興味を持ってもらい、3週間に及ぶ取材に立ち会った。
 3月13日と4月10日の2回放映されたが、夜の11時からという時間帯にもかかわらず、1回目は5.2%という高視聴率でテレビ局から「新東名の話題は視聴率が取れる」と言われた。この番組がきっかけとなり、3月中に他のテレビ局8社から16回の取材が入った。
 また、別のテレビ局のプロデューサーと懇談する機会があり、日曜日の朝、お笑い系の人気タレントが司会を務める経済番組で、新東名の話題を取り上げてもらうことができた。
 この番組には当社の社長が出演し、新東名の話題はもちろんのこと、「NEXCO中日本」という、東京ではあまり知られていないブランド名を意識的に使っていただいたので、ブランド認知の向上にも繋がり大成功だった。

マスコミ対策は。
長谷川 工事中には記者や論説委員などの方々に現場を見ていただいた。現場見学の成果だったのかマスコミ内に、新東名に対する認識が急に広がった。
 また、新東名の概要や、トンネル・橋がどのような工法で造られたかなどをまとめた広報用のDVDを作成した。パンフレットを用いて説明するより、動画の方がイメージしてもらいやすく、特にテレビ局からは、「“絵”になる場所はどこか、どこまで撮らせてもらえるのか」といった質問をよく受けるので、空撮や現場の映像・写真は著作権フリーにして多くのマスコミに配布した。

関心は「経済効果」から「SA」へ

マスコミの関心事に変化はあったか。
長谷川 SAが完成していなかった時期は、人やモノの流れがスムーズになることによる経済効果や渋滞緩和、災害時の避難路・緊急輸送路としての役割などがマスコミの関心事だった。
 SAの内覧会を行った4月6日以降は、SAのグルメや土産物、出店する店舗の紹介が増えた。
 例えば、NEOPASA静岡(SA)では、静岡市に生産拠点を持つバンダイが、人気アニメ「機動戦士ガンダム」をモチーフにした男性向け雑貨・アパレルの販売店「STRICT?G」の第1号店を、上・下線のSAに出店した。今までの高速道路にない新しい形態のショップということで、NEOPASA駿河湾沼津(SA)上り線の、フランスの人気キャラクター、リサとガスパールのキャラクターを使った世界初のカフェと並びマスコミの注目を集めた。
 なお、開通前後やゴールデンウイーク中、連日報道していただいたおかげで、新東名すべてのSAが大盛況だった。
広報部門は、本社がある名古屋と、東京に?
長谷川 当社の本社広報は名古屋にあるが、東名、中央道の起点は東京で、マスコミの取材も多い。そのために、東京にも私も含めて本社広報の担当が4人いる。
 また、それとは別に東京支社に広報・CSチームという組織があり、相互で協力して仕事をしているが、今回の開通広報では本社広報がテレビ、新聞、雑誌などへのパブリシティーを担当し、支社の広報は開通式のマスコミ対応や広告・宣伝を担当した。

勾配もカーブも緩やかな新東名

あらためてお聞きするが、なぜ新東名をつくったのか。
長谷川 東名は1969(昭和44)年に開通したが、御殿場インターチェンジから三ケ日インターチェンジ間で新東名開通前は1日当たり7万4000台という交通量があり、飽和状態で渋滞することが多かった。東名が事故や災害などで通行止めになると、他の国道などが大渋滞し、輸送機能が麻痺(まひ)して経済活動に大きな影響を及ぼした。
 そのために、東名と相互で行き来ができるダブルネットワークを完成させ、災害など緊急時の代替路線を整備する必要があった。
 今回、御殿場ジャンクションから三ケ日ジャンクション間の新東名が開通したことで、東名と交通が分散され、この区間の渋滞はほとんど解消された。
 開通後のゴールデンウイーク(4月27日から5月6日の10日間)の交通量を見ても分かるように、昨年の東名が10日間の日平均で9万2500台だったのが、新東名開通後は、新東名5万9700台、東名5万3200台で合計11万2900台だった。約2万台の交通量が増えたにもかかわらず、10キロ以上の渋滞は昨年の東名だけの60回から5回に減少した。
 また、東名と国道1号線、JR東海道線が集中する静岡県由比地区は、海岸線に近く大規模な地すべり地帯であり、台風による高波の影響で東名の通行止めがたびたび発生し、防災対策推進地域にもなっているため、東名に代わる緊急道路として、新東名の整備が急がれた。
新東名の特徴は?
長谷川 坂道やカーブは渋滞の原因になる。新東名は最大勾配が2%、カーブの最小半径が3000メートルで、東名の5%と300メートルに比べ緩やかになっている。また、新東名は東名よりも山側を通過するため、近い将来予想される東海地震による津波の被害は受けにくい。
 災害対策としては、SA・パーキングエリアに、ヘリポートと自家発電設備、井戸を設置し、救急活動や災害時の拠点として機能するようになっている。安全対策にも力を入れている。最新の情報処理設備を備えた道路管制センターでは、新東名の道路上に1キロピッチで設置されたカメラや車両検知器などから集められた情報を分析して、センタースタッフが道路の標識や情報板などに事故や渋滞など的確な情報を提供している。
 道路管制センターの大型モニターにはリアルタイムで道路の交通状況や渋滞状況が表示され、事故などが発生すると即座に状況を把握し、警察、消防などに連絡するシステムが確立されている。
 トンネル内の照明は、従来は真上から路面を照らしていたが、新東名では走る方向に向かって照らし、路面は暗く、前の車が明るく見えるように工夫している。
今後は、何を重点に広報するか。
長谷川 おかげさまで多くのマスコミに取り上げてもらい認知度は向上したと思うが、今後は安全に走っていただくことを一番に啓発していきたい。
 新東名の制限速度は時速100キロメートルで、東名に比べて勾配やカーブが緩やかなことから、より快適に運転できるようになる。そこで注意しなければいけないのがスピードの出し過ぎ。悲惨な事故が起きないよう、あらゆるメディアを通じて注意喚起していきたい。
 また、今以上に快適で安全で安心して走れる高速道路や、楽しく何度でも訪れてみたいSA造りを目指していくので、高速道路をお使いになった皆さまからのご意見、ご要望をお聞きしたいと思っている。
(文責:国内広報部専門研究員 佐々木光寿)
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