経済広報

『経済広報』(2012年12月号)掲載

企業広報研究

話題の企業の広報

東京スカイツリータウンの着工からこれまでの広報

福田 康人 福田 康人(ふくだ やすひと)
東武タワースカイツリー(株) 東京スカイツリータウン広報事務局 事務局長

広く親しまれるよう、名称を公募

東京スカイツリータウンは今年5月に開業したが、いつ頃から広報面での準備を始めたのか。

福田 2003年にNHK、民放キー局の在京放送事業者が600メートル級の新タワー建設を求めて「在京6社新タワー推進プロジェクト」を発足させた。2004年末には、墨田区・地元関係者が東武鉄道に対し新タワー誘致への協力を要請。
 2005年2月に、東武鉄道として新タワー事業に取り組むことを表明した頃から、広報対応も始まった。2006年3月に墨田区業平橋押上地区が新タワー建設地に決定したことを受け、同年5月に「新東京タワー(株)」(後に東武タワースカイツリー(株))が設立されるまでは、東武鉄道総務部広報センター(後に広報部)が対応していた。

新東京タワー(株)設立後の広報活動は。また、東武鉄道の広報部門との関係は。
福田 東武鉄道の広報部門とは常に連携し広報活動を行っている。2006年10月に新タワーを中心とする複合開発事業のコンセプト「Rising East Project」を公表したが、この名称は、東京の東部、下町を活性化しようという思いが込められている。そのために、鉄道だけでなく東武グループの総力を挙げてプロジェクトに取り組んできた。
2007年10月から11月にかけて新タワーの名称を公募し、話題になったが。

福田 広く全国から、「東京EDOタワー」「ゆめみやぐら」など様々な名前が寄せられた。名前を公募にしたのは、当プロジェクトが目指す「開かれたコミュニティ」を象徴する取り組みであり、全国の皆さまに広く親しまれるタワーにしていきたいとの考えもあった。
 決定した名称である「東京スカイツリー」の“ツリー”は、英語で樹木のことであり、環境や人に優しい街づくりを象徴するような名前だと思う。

節目での広報に工夫

2008年7月の着工後の広報は。
福田 2009年4月までは、基礎などの工事が中心でタワーは0メートルだったので、あまり注目されていなかった。地上部の着工後は、現場に「ただ今何メートル」と表示したので、100メートル、200メートル、300メートルと節目ごとに注目されるようになった。すくすくと伸びていく様子を定点観測するマスコミもあり、名前が浸透する熟成期間だったと思う。現場取材など含めビジュアルに訴えることができ、“劇場型工事現場”であったといえる。
 中でも特に注目されたのは、2010年3月29日に日本一の高さの建造物になった時と、2011年3月18日に完成時の高さである634メートルに到達した時だ。634メートル到達時は、東日本大震災の直後だったので粛々と対応したが、日本復興のシンボルとして取り上げていただくようになった。
 建設中の広報では、2つの仕掛けをした。節目となるような高さに達した時には「500メートル」などと現場に表示する瞬間を撮影していただいた。また、634メートル到達の時には、その高さまでマスコミを案内することはできないので、現場から無線で地上に「ただ今、634メートルに到達しました」と連絡してもらい、マスコミが音声をとれるようにした。
 地元では、地域の活性化の起爆剤としてタワーに期待が掛かっていた。地域の方々も自発的に商店街の催しを行ったり、飲食店がタワーにちなんだメニューを加えたりしていた。また、地元の方々がスカイツリーの写真撮影スポットを紹介してくださるなど、観光客とコミュニケーションを積極的に行う様子がマスコミに取り上げられ、タワーのPRと地域の活性化が相乗的にうまくいったと思う。
この間の広報活動を評価いただき、経済広報センターより2010年度の企業広報大賞をいただいた。
竣工後の広報で工夫したことは。
福田 スカイツリー、東京ソラマチなど、それぞれ広報部門が分かれていたため、スピーディーかつ円滑な広報対応を実現するため各社の広報担当を集め、「東京スカイツリータウン開業広報事務局」を設置。窓口を一本化し、取材対応できるようにした。8人のチームで発足し、ピーク時には13人の体制だった。

内覧会とメディア対応

2012年4月からは、内覧会が始まったが。
福田 開業前のメディアの内覧については、4月17日の東京スカイツリープレスデー、5月10日の東京スカイツリータウンプレスデー、5月18日の東京ソラマチプレスデーなどにご案内し、多い時は1日1000人以上のプレスの方々に来場いただいた。このほか、5月14日の開業式典、5月22日のグランドオープンなど、多くの機会でご取材いただいた。
 工夫したのは、こうした全体の流れを前もって把握できるように、4月3日にメディア説明会を開いたこと。それぞれのプレスデーで何が取材できるかをあらかじめご理解いただいた上で、ご取材いただけたと思う。また、各プレスデーで初めて取材に来る記者向けに基本的な資料を作成した。海外メディア向けには英文の資料も用意した。

地元重視の姿勢と今後の課題

地元への情報提供は。
福田 「押上・業平橋地区新タワー関連まちづくり連絡会」を月に1度開催し、重要事項は連絡会に報告した。会自体公開で開催されていたのでマスコミが取材することもあった。また、会報や『東京スカイツリータウンプレス』を地元に配布した。
 5月3日から5日にかけては、「墨田区民デー」として地域の皆さまに向けて天望デッキ内覧会を、5月19、20日には、「すみだ観光まちびらき 区民祝賀イベント」を墨田区の企画の下、開催した。
広報として現在、取り組んでいることや、今後の課題は。
富士山とスカイツリー
富士山と東京スカイツリー
福田 「9月末までに、スカイツリーへ約224万人、スカイツリータウンへ約2095万人の方においでいただいた。安全・安心を第一にこれまで順調に営業してこられたことに感謝している。
 現在の課題は3つ。1つ目は、現在は注目され多くのメディアにお取り上げいただいているが、それをいかに維持していくか。そのためにも月に1度は大きなイベントを行い、今後も注目を集めたい。今年のクリスマスには“世界一高いクリスマスツリー”を中心にタウン全体をイルミネーションで彩るつもりだ。
 2つ目には、スカイツリーだけでなく、商業施設であるソラマチを含めたタウン全体、そして周辺地域の魅力を発信していきたい。近くには浅草、両国、向島など、日本の伝統的な文化を残すスポットがある。ハロウィーンやクリスマスだけでなく、地元のお祭り、お花見、花火大会など、ここにしかない季節の行事を含め発信し地域を活性化していきたい。
 3つ目としては、スカイツリー、スカイツリータウンと連携した東武鉄道、東武グループ各事業の情報発信に努め「東武」のブランド価値、沿線価値向上を図っていきたいということである。
(聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 国内広報部長)
(文責:国内広報部専門研究員 佐々木光寿)
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