経済広報

『経済広報』(2013年4月号)掲載

企業広報研究
経済広報センター調査に見る1980年以降の広報活動の変遷
 経済広報センターは、1980年以来、3年ごとに「企業の広報活動に関する意識実態調査」を実施している。この調査では企業を取り巻く経営環境の変化に合わせて、企業の広報活動に関する意識や実態がどのように変化しているかを浮き彫りにしている。2012年3月には第11回の調査結果を発表したが、本稿では、1980年の第1回から最新の第11回調査までの変化をまとめた。

広報部門の業務拡大で組織の独立が進む

 1980年実施の第1回調査では、広報部門の組織について聞いたところ「広報部(室)として独立している」と「総務部内で広報担当者がいる」との回答が共に33.8%で最多であった。「総務部内に広報課がある」が21.7%で続いた。総務部内に広報担当者がいる時代だった。
 「広報部(室)として独立している」との回答は、その後急速に伸びている。第2回(1983年)36.0%、第3回(1986年)42.3%、第4回(1989年)45.0%、第5回(1993年)59.6%、第6回(1996年)57.0%となっており、広報部門が独立した組織になったとの回答が半数を超えたのは、1990年代に入ってからである。
 また、第5回調査(1993年)から、企画部内や社長室に属するなど、広報部門を経営の中枢に位置付ける企業が増加し、広報組織の重要度が増しているといえる。
 そして、第7回調査(1999年)以降、広報を“社内の窓口”としてではなく、1段階進んで経営機能を担う部門と位置付ける動きが出てきた様子が見て取れる。第8回調査(2002年)、第9回調査(2005年)では、組織改革により広報をCSR(企業の社会的責任)やIRと一体で推進する企業が増加した。第10回調査(2008年)以降は、新たな変化が見られる。IRやCSRなど拡大した業務を、広報部門から独立させる企業が出始めた。

業務量と人員は増加、予算は経営環境により増減

本社広報部門の平均人数
 第7回調査(1999年)以降、グループ広報やグローバル広報の強化、IRや宣伝広告機能の移管、事業拡大による関連業務の増加、メディア対応の多様化など、様々な要因で広報部門の業務量が拡大傾向にあるのが分かる。それに伴い、人員も増加傾向が続いている。
 一方で、予算は、第7回(1999年)、第9回(2005年)は増加傾向、第8回(2002年)、第10回(2008年)、第11回(2011年)は減少傾向と、調査を実施した時期の経営環境により増減する結果となっている。

「インターネット」から「ソーシャルメディア」の広報へ

 ホームページについては、1993年には「既に開設」という企業が36%であった。その後、1996年には、95%の企業が「既に開設」と回答し、「開設を検討中」を合わせると、ほぼ100%の企業がホームページを開設している。1993年から1996年にかけて急増したといえる。
 また、第11回調査(2011年)は広報活動にソーシャルメディアを活用しているかを聞いている。2010年に当センターが行った「企業によるソーシャルメディア広報に関するアンケート調査」によると、ソーシャルメディアを活用した広報活動を実施している企業は24.9%だったが、第11回調査(2011年)でソーシャルメディアを「活用している」と回答したのは33.8%。2010年から2011年にかけて約4分の1から約3分の1へと企業のソーシャルメディアの活用が進んだといえる。
 1996年以降、急激に電子媒体の活用が進み、ステークホルダーへの情報発信は“一方向”から“双方向”へとコミュニケーションスタイルが変化してきた。 

社内広報は「社内報・社内誌」「イントラネット」で棲み分け

 電子媒体の活用が普及するのに伴い、1996年以降、社内広報で活用している媒体は「社内報・社内誌」「イントラネット」の2大媒体が定着している。紙媒体を廃止し、電子媒体に一元化するという傾向が一時見られたが、速報性に優れた「イントラネット」と、時間や場所を問わず読むことができる「社内誌」で、現在では用途に応じて棲み分けがされるようになったと思われる。

強まる社員重視

 重視している広報活動の対象者を聞いたところ、第7回調査(1999年)以降、全ての調査で「テレビ、新聞等のマスコミ取材への対応」が突出して多い。他には「株主・投資家」「取引先・顧客」「社員・グループ会社社員」が挙げられている。「マスコミ」重視は変わらないものの、年が経つにつれ、相対的に「マスコミ」や「株主・投資家」「取引先・顧客」の回答が減少し、代わって、「社員・グループ会社社員」と回答する企業が増加している。「社員・グループ会社社員」を重視する傾向が見られる。

海外広報活動の対象は北米から中国・東南アジアへ

 近年の急速なグローバル化に伴い、第8回調査(2002年)から海外広報についての設問を設けた。広報活動が必要な海外の関係会社、支社を持つ企業は、第8回(2002年)48.3%、第9回(2005年)47.1%、第10回(2008年)46.4%、第11回(2011年)52.1%と大きな変化は見られない。また、海外広報の実施体制については「現地広報が対応し、本社広報に連絡が入る」が全ての年で最多であり、海外の関係会社、支社の広報は現地に任せる傾向が強まっている。

  今後、海外広報活動を重視する地域については、第8回調査(2002年)では「北米」が39.5%で最多、次いで「中国」が38.0%だったが、第9回(2005年)以降、中国が最多となっている。また、「東南アジア(アセアン)」は第8回(2002年)では27.3%と「北米」「中国」「欧州」に次いで4番目であったが、第11回(2011年)では「中国」(75.4%)に「東南アジア(アセアン)」(66.4%)が続き、「北米」からアジア重視にシフトしている。

危機管理、広報部門の関与深まる

 危機管理体制について、設問を設けた第8回調査(2002年)以降、広報部門が何らかの取り組みを行っている企業は全体の9割を超えている。危機管理は、広報部門の主要業務として定着してきたといえる。具体的には「広報部門が社内の『危機管理委員会』のメンバーである」「広報部門に『危機管理マニュアル』がある」などの回答が多い。

  トップ・役員のメディアトレーニングの実施については、第8回(2002年)12.8%、第9回(2005年)20.1%、第10回(2008年)26.2%、第11回(2011年)38.9%と着実に増えている。企業の不祥事や事件、東日本大震災への対応など、トップや役員がメディアに出る機会が増え、その影響を重視する企業が増えてきたと考えられる。

(文責:前 国内広報部専門研究員 佐々木光寿)
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