経済広報

『経済広報』(2013年7月号)掲載
企業広報よくある質問(4)
君島 邦雄 IRとPRはクルマの両輪
君島 邦雄(きみしま くにお) (株)ココノッツ 代表取締役
Q IRを推進するために、PRはどのように役に立ちますか。

IRは広報活動です

 広報活動が、企業を取り巻く様々なステークホルダーとの良好な関係を構築し維持する活動であるとするなら、株主や投資家などを対象に行うIRもまた広報活動の一部であると考えるのが自然です。ところが、IR担当者や市場関係者の中には、広報活動であるとの意識が薄いばかりでなく、ことさら異なる活動であると強調する傾向さえ見られます。
 金融市場という特殊性の高い世界の人たちを相手にするには、企業側の担当者にも一定の専門知識が必要となります。また、日常生活や一般社会とかけ離れた特有の価値観を共有することを求められるのも事実です。しかし、金融市場といえども、社会から孤立しているわけではありません。
 対象ごとに異なる情報を発信することは企業として許されることではありません。また、機関投資家も個人投資家も、あるいは一般の消費者も、企業から発信される情報を、これはIR情報だ、これは消費者向けの情報だ、と区別して受け取っているわけではありません。従って、どちらも同様のインパクトをもたらす可能性があります。IRだPRだという区別は企業の内部事情によるものにすぎません。両者の間に境目はなく、連続していると考えるのが妥当なのです。

PRによって強化されるIR

 ファンドマネージャーやアナリストは早朝、新聞各紙を読み、ニュースを確認することから仕事を始めます。どこの企業からどのような情報が出ているかをチェックするためです。企業財務欄ばかりを読んでいるわけではありません。優れたアナリストは、全国紙ばかりでなく専門業界紙のベタ記事まで丹念にチェックして、小さな情報から企業の大きな変動の兆しを読み取ろうとしています。技術開発の成果も人事制度の変更もCSR(企業の社会的責任)活動も事件報道もユニークな社員の話題も、それぞれの企業を理解する糸口になります。
 そのような情報の多くは個別取材やスモールミーティングの場で十分説明し得ると思われるかもしれませんが、マスメディアで報道されることで一定の価値が生じます。そのニュースに対して市場がどのような反応を示すか、ということは重要な投資判断の材料になるからです。「株式投資は美人投票だ」というケインズの言葉を思い出してください。
 私自身が企業でPRとIRの責任者をしていた時のことです。あるユニークな製品が密かに開発されようとしていました。発売はずっと先のこと。売上高もそれほど大きくは見込めず、利益も限定的、いやしばらくは赤字を覚悟しなければならないというものでした。それをあえて“開発ネタ”として、ある新聞で記事にしてもらいました。それから何年もの間、アナリストに会うと必ず開発の進捗について質問されました。実は開発経過をときどき報道してもらいながら市場の関心を維持していたのです。その製品はその後大きく成長し、現在は海外へも輸出されるようになっています。
 上場会社にとってIRとPRはクルマの両輪といえますが、どちらかといえば、IRの方がPRによって強化されるといえるでしょう。
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