経済広報

『経済広報』(2014年2月号)掲載

CC時代のインナーコミュニケーション(1)
従業員の一体感を醸成するインナーコミュニケーション

カルビー(株)

 カルビーはトップと従業員のリアルコミュニケーションと、イントラネットと社内報を活用した従業員参加型のコミュニケーションを組み合わせ、積極的にインナーコミュニケーションに取り組んでいる。2010年には都内4カ所に分散していた事業所を丸の内に集約した。新オフィスでは、各自の席を固定しない“フリーアドレス”など画期的な仕組みを導入している。

カルビー・イノベーティブ・フィールド

 カルビーは2010年、4カ所あったオフィスを丸の内に集め、従業員同士のコミュニケーションを活性化させ、イノベーションを生み出すことを目的にフリーアドレスを導入した。フリーアドレスでは、その日に座る席をランダムに決める「ダーツ」という仕組みを採用している。従業員は出勤すると、まず入り口のパソコンにIDカードをかざし、その日の業務内容に合わせ、「コミュニケーション」「ソロ」「集中」と3つに分かれた座席タイプと自分の所属するエリアを選定する。すると自動的にパソコンが席を指定し、その席に座る仕組みとなっている。以前、一部事業所でフリーアドレスを導入したことがあるが、その時は声掛けのみによる取り組みだったので徹底されずに終わってしまった。そのため、今回は強制的に混ざり合えるような仕組みを導入した。
 席が取れるのは最大4時間までとなっているため、お昼ごろには再度席を取り直し、また違う席に座る。フロア中央には社長・会長席がオープンに配置されており、経営層とのコミュニケーションも取りやすくなっている。執行役員も一般従業員と同じようにフリーアドレスでその日の席を決めている。
 初めて会う人とは最初に自己紹介をするため、所属を超えた横串のコミュニケーションが活発化した。また、自分の所属する部署だけではなく、よりマクロな視点が養われるという利点もある。フロア面積も広く、端から端まで横断すると、多くの部署の従業員から話し掛けられるなど自然にコミュニケーションを取ることができる。
 このフリーアドレスは社内コミュニケーションの活性化だけにとどまらず、従業員のモチベーションアップにも効果を発揮している。この話題をきっかけに他社からのオフィス見学やメディアへの露出が増え、注目されるようになった。このことは従業員が外からも見られているという意識、他企業からベンチマークされるようなオフィスで働いているという誇りを持つことやオフィス環境の維持に繋がっている。

年2回のタウンホール・ミーティング

 同社は、トップと従業員とのリアルコミュニケーションにも積極的に取り組んでいる。そのひとつが、経営陣によるタウンホール・ミーティングだ。基本的に年2回、“夏の陣”、“冬の陣”として全国23カ所ほどの拠点を回っている。ミーティングでは最初に、トップ2人からのメッセージを全従業員に直接伝えている。その後質疑応答と懇親会を行い、最後はトップと握手をして帰る人もいる。ほぼ全ての従業員がトップと年2回、直接コミュニケーションを取ることができる場なのだ。
 また、挙手制で参加できる「松塾」という取り組みも2010年より行っている。これは毎月1回、土曜日に主要拠点を塾長2名が巡回して、朝10時から夜7時まで一日をかけて開催されている。午前中に松本晃CEOと創業家元社長松尾雅彦相談役による講義が行われ、午後からはワールドカフェスタイルで、メンバーを代えながら7~8人程度での対話を繰り返す。松本CEOらも各テーブルに割り振られ、従業員の輪に入る。この「塾」では単に何かを教えるのではなく、「学ぶことの大切さに気付いてもらう」ことをモットーにしているという。
 その日は勤務扱いにならないにもかかわらず、「松塾」の参加者アンケートの満足度は非常に高い。新入社員からベテランまで職種や年齢層も幅広く、中には何度も参加する者もいる。参加者からのクチコミで参加を希望する人も増えてきている。

積極的なトップ広報の効果

 トップの積極的な広報に対する姿勢は社内にも影響を与えている。以前の広報活動は新商品のリリースがほとんどだったが、現在は企業全体の取り組みを含め、取材依頼には可能な限り対応している。トップ広報から派生して別件の取材申し込みに繋がることもある。
 また、トップが社外に発信することで社内の意識が高まるという効果もある。社内外を問わず、同社の経営陣が意識していることは「同じことをシンプルに繰り返し伝えること」である。繰り返すことで社内の理解が深まり、従業員へも浸透していく。従業員に語っていることと社外に発信していることが一致していれば、従業員からの信頼もさらに高まり、モチベーションの向上にも繋がるという考えだ。

従業員参加型を意識したイントラづくり


イントラネット
 カルビーでは社内報、イントラネットをインナーコミュニケーションの主なツールとしている。広報部では、ツールを通じて従業員同士のコミュニケーションを活性化させたいと考え、社内報とイントラの大幅リニューアルを行った。
 特に大きく変わったのがイントラネットだ。それまでは「CMF(カルビーマネジメントフォーラム)」と題し、トップからのメッセージ、全社的な出来事の発信が主なものだった。新たなイントラネット「LOOP+WEB」は従業員参加型で、双方向コミュニケーションを可能にするような企画を意識している。例えば、企画のひとつが「カルビトカレンダー」である。これは従業員を1人ずつ、カレンダー方式で紹介していくコーナーで、従業員のプロフィールや写真を掲載している従業員名鑑のようなものだ。イントラネットは随時更新され、更新内容は週に2回、従業員にメールで通知している。
 リニューアルにあたって、イントラネットと紙の社内報の役割分担も以前より明確になった。イントラで重視しているのは速報性、紙の社内報『LOOP+』で重視しているのは従業員の一体感の醸成だ。例えば、社内報では海外事業の紹介や新人研修の様子など、図や写真、文章を通じて物語性をもって伝えられるような特集を組んでいる。活躍する1人の従業員にスポットを当てる「私の流儀」という企画も好評だという。
 カルビー本社の社内報担当は基本2人で運営しているが、営業所・工場などに社内報編集委員を置いている。編集委員は職場の出来事や出産・結婚情報などを、情報提供している。
(文:国内広報部専門研究員 鈴木恵理)
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