経済広報

『経済広報』(2014年2月号)掲載
GLOBAL PR 1
ロス・ローブリー
グローバルPRに欠かせない2つのステップ
ロス・ローブリー エデルマン・ジャパン(株) 社長 
 企業のニーズが変化し、日本のPR業界も進化するにつれ、その変化を表すバズワードを多く目にするようになった。戦略PR、ステルスマーケティング、コンテンツマーケティングといった言葉はそのほんの一例にすぎない。競争が激化するグローバル環境において、「グローバルPR」もこの1年でバズワードとなった。しかし、多くのバズワードと同様に「グローバルPR」も言葉だけが先行し、明確な定義付けはされていない。この7回の連載では、その意味を明らかにし、グローバル環境における戦略策定のポイントについて触れていきたい。

「PR」はもっと広い意味に使われる

 まず注目したいのは、「PR」の定義についてである。海外では、日本国内と比較して「PR」という言葉自体がより広い意味を持つ。メディアリレーションを中心としたより狭義な「広報部」では、グローバル広報戦略を実施できるだけの体制を整えるのは難しい。
 現在では、広告と広報の壁がなくなり、また情報の民主化で全ての企業がメディアの役割を果たせるようになり、企業と消費者の力関係が変化している。グローバル市場で勝ち抜くためには、企業はより多角的なアプローチをとらなければならない。海外では、PRは以前にも増してマーケティングミックスの中心を成している。これは、海外の広報部がブランディング、社内、デジタル、エグゼクティブなどの全てのコミュニケーションにおいて、重要な役割を担っていることを意味している。より多角的な「コミュニケーション機能」を持つことがグローバル広報戦略を実施する上で必須だが、多くの日本企業にとって、この体制構築が根本的な課題となっている。

グローバル企業にはストーリーがある 

 次に重要なのは、世界のステークホルダーに向けた企業を表す包括的なストーリーである。これはただ単に社是や企業価値を示すものではなく、企業の「人格」を表すより深いものである。
 多くの企業は、これまで企業の歴史や製品、レピュテーションを通じて、国内のステークホルダーの信頼を得てきた。日本国内ではストーリーを作る必要がなかったのである。しかし、一部例外を除いて、日本企業は海外のステークホルダーにあまり深くは知られておらず、買収の際に、この問題が顕著になる。海外企業を買収する際、通常、その企業が築いてきたブランディングがそのまま保持されるため、企業の「人格」となるストーリーがなければ、グローバル企業としてのイメージは薄れるからである。包括的なストーリーは、全てをまとめ、つまりコーポレートレピュテーションやブランディングのみならず、エンプロイー・エンゲージメント、製品ブランディング、エグゼクティブ・ポジショニング、そして、メディアや政府、規制当局者、投資家とのエンゲージメント確立においても、強固な基盤を作ることを可能にするのである。
 「PR」の定義を広く捉えた「コミュニケーション」に対する、より多角的なアプローチと強固で包括的なストーリーが、グローバルPRを実施していくための2つの重要なステップとなる。この2つがなければ、たとえ「インターナショナルPR」は実践できても、真の意味での「グローバルPR」は実践できない。 
ロス・ローブリー氏  
複数の証券会社で上級管理職を経験した後、PR業界に入り、ギャビン・アンダーソンのマネージング・ディレクターとして、M&Aや外資系企業の日本市場参入キャンペーンなどを手掛ける。プラップ・ジャパン専務取締役兼最高執行責任者を経て、2010年より現職。
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