経済広報

『経済広報』(2014年4月号)掲載

ANGLE

広報のベテランが12人、「キャリア講座」大学で連続授業

尾関謙一郎

 

尾関謙一郎(おぜき けんいちろう)明治学院大学 特命教授
 2013年秋、明治学院大学で広報のベテラン12人が、交代で「キャリア講座・業界研究」の授業を行った。明学ではもちろん他の大学でも12人の広報のベテランが集中して授業を行うのは珍しい。大学の授業は15回で1単位だから12人というと、毎回別の顔が別の話をするわけで、学生も飽きる暇がない。
 取り上げたのは「電機業界」「金融業界」から食品、流通、サービス、都市開発、ITシステム、とバラエティーに富み、中小企業まで12の業界。現役の広報部長、元広報部長という役職ながら、本音ベースで所属企業やその業界を紹介した。広報としての成功、失敗、苦労話はもちろん、社会人としての心構え、就活の心得まで、いずれも中身の濃い講座だった。
 最後の授業で学生からアンケートを集めた。87人の履修生のうち72人の回答があった。「視野に入れていなかった業界を知ることができて、とてもプラスになった」という声に代表されるように、多方面への業界研究のきっかけとなったようだ。「講師によって話し方や話す内容が異なるので、その業界にどのような人が働いているのかを知る目安になった」という。
 会社説明会との違いも敏感に感じている。「人事と違う視点のため、マニュアルにはないリアルな生な声をたくさん聞くことができた」という。これをきっかけに、考えていなかった業界にもエントリーしたという回答さえあった。
 また、「ベテランの人が多く、苦労話も笑い話として話してくれたので、仕事に就くことに前向きになった」とモチベーションを高めたようだ。特に就活の心構えも、「一緒に働きたい人を求めている」という話から、単なるスキルではなく、人間性を表現することにしたという。どの講師も熱心で、熱意が伝わってきた、との評価が多かった。
 現代の就活生は、就活会社の指導や会社説明会に疑心暗鬼、不安もいっぱいだ。そこで「片足は企業、片足は社会」の経験豊かな広報マンが話すことで、客観的な見方での業界、企業を知ることができ、学生には十分、納得のいく授業だったようだ。
 広報は、マニュアルが役に立たない、経験しかプラスにならない、とよくいわれる。それだからこそ、ベテランが伝承に努力しなければならないのではないか。今回の講師12人は、2012年に結成された「企業広報講座研究ネットワーク」の会員30人の中からの希望者だ。「広報の伝承」の一環としても、この授業は役立ったと思われる。
1975年読売新聞入社、福島支局、社会部、経済部、経済部デスク。ヴェルディ広報部長、本社宣伝部長、プランタン銀座広報担当取締役など歴任。現在、明治学院大特命教授、メディアと広報研究所主宰、日本広報学会理事、東久留米市教育委員長。
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