経済広報

『経済広報』(2014年9月号)掲載
広報管理職講座(1)
篠崎良一
広報管理職に必要な3つの知識
篠崎良一(しのざき りょういち) PR総研 所長/広報の学校 学校長 

中身が見えない広報の仕事

 世間を騒がせる不祥事もなく、社長交代を抜かれることなく広報部長の任期を無事全うして子会社の役員就任が決まった某氏に、全国紙の経済部デスクは「うまくいって当たり前。ちょっとミスがあれば広報が悪いと言われるのが常の世界。大過なく広報を卒業する時は鯛のお頭付きで赤飯を炊いてお祝いするのが礼儀。今回だけは、安い店ですが私が持ちます」と言ったという。
 社内の一部からは、記者と酒を飲んでゴルフをするのが仕事と見られている向きもある広報は中身がよく見えない。しかし実態は、責任は重く、ストレスの大きい、地味な仕事。
 広報管理職には、これがなければ広報管理職失格という、業務上高いレベルの3つの知識が必要である。
 まず、企業についてのベーシックな知識。加えて経営トップの基本的な考え方と経営戦略。そしてそれがなぜ、どのように決められたのかに関する理解。次に必要なことは業界全体に関する深い知識。マーケットの変遷と現状、将来についての分析、解説力である。広報管理職は自社と業界の百科事典でなければならない。ジョブ・ローテーションで社内の各部門を経験して広報管理職に就くケースが多い日本企業では、この2つの知識はまだ何とかなる。問題なのは、3つ目のメディアについての知識である。広報経験なしで突然、広報部長を内示されることも多い日本企業。メディアや記者は小説やテレビ、映画の中でしか知らない未知の世界、門外漢にとっては理解できない異質な人たちが住む世界である。

メディアを十分に理解する

 そもそも広報の役割は、ステークホルダーへの情報公開を軸に会社の良い評判をつくることにある。企業とステークホルダーの間に相互に利益をもたらすウィン・ウィンの関係を構築・維持することが最終目的である。
 法的には、公表(公式の情報公開)は会社の代表者、またはその委任を受けた者(広報)によるものと定められている。情報公開は社長と広報の専管事項といえる。このステークホルダーに対する情報公開の多くが、メディアとのリレーションによって成立する。メディアに関しての深い知識がなくては広報管理職の役目は果たせない。メディアに関する基礎的な知識はもちろん、一層、影響力を増しているインターネットやソーシャルメディアも含めたメディアの取材、編集のプロセスやシステム、仕事の仕方、彼らのものの考え方、視点についての十分な理解を必要とする。困難だが、こうしたメディアに関する知識、深い理解を短期間に素早く身につけることが要求されるのが広報管理職といえよう。
 資質として、聴くこと、書くこと、話すことの高度なコミュニケーションスキルが不可欠なことは言うまでもないが、事実が何よりも基本となる広報(メディア)の世界で最も必要とされることは、いい時も悪い時もどんな時でも誠実であることである。誠実に対応する中で自社の最も社会にアピールしたい基本的なメッセージを、敵をつくらずに訴える能力こそ広報管理職に必要なものである。
早稲田大学卒。出版社を経て、共同ピーアール入社、取締役、常務取締役、取締役副社長を経て現職。企業・団体の広報・危機管理コンサルティング、広報・危機管理研修担当。2003年5月「広報の学校」を開校。2013年1月「PR総研」を設立。著書に『実戦企業広報マニュアル』『会社を守る!もしものときのメディア対応策』『広報・PR概論』(共著)、『広報・PR実務』(監修)など。
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