経済広報

『経済広報』(2014年10月号)掲載

ANGLE

企業広報でもさらなる女性活用を

井上喜久栄

 

井上喜久栄(いのうえ きくえ)富士ソフト(株) コーポレートコミュニケーション部長

広報は男の仕事?

 企業広報に携わって30年近くになりました。その間に転職も2回経験しましたが、私の仕事の軸は、“広報”と言っても過言ではありません。そして、「女性が広報を担当する」ということについて、世間の評価の変化に、ある意味で感動を覚えています。
 1979年に大学を卒業してダイエーに入社。創業者の故・中内㓛さんの「これからは女性の時代。そしてダイエーのお客さまは女性。もっと女性社員の活用を!」というトップダウンの指令が下る中で、広報室に配属されました。その流れに乗って、アシスタントではなく、一人前の広報担当者になるべく、新聞のクリッピングからスタートして、ニュースリリース作成、取材対応など、幅広い経験をさせていただきました。
 男女雇用機会均等法が施行される以前の時代のこと。企業で女性が男性と同様の業務を担当していることを認識してもらえずに、私が記者からの電話を受けると、「誰かいますか」ということが日常茶飯事。その中でもへこたれずに、広報業務の経験を積み、記者の皆さんとの信頼関係を築きながら、“女性”という枕詞が付き物でしたが、広報課長、そして広報部長としてキャリアを積むことができました。その間、マスコミでも女性記者の登用が始まり、“記者は男の仕事”という世界にも変化の波が。
 そして現在。安倍政権は女性活用を成長戦略の柱のひとつとして、2020年までに、指導的な地位に占める女性の割合を30%に引き上げる目標を掲げています。長らく続いた男性中心の社会を本当にチェンジできるのか、正念場です。そして企業で働く女性には絶好の追い風といえます。

女性パワー全開

 当社のコーポレートコミュニケーション部は、広報・IR・社内報を担当していますが、実は、すでに女性パワー全開です。9名の部員のうち女性が8名(うち1名育休中)。出産・育児をこなして活躍している社員も3名います。手前みそですが、広報分野での女性活用の先頭を走っていると自負しています。私のこれまでの経験から、時間が不規則になりがちな広報担当者には、子育て中の女性は厳しいのではないかと考えていましたが、これが実現できた大きな背景には、近年のICT(情報通信技術)の発展で、時間や場所に縛られない働き方が可能になってきたことがあります。加えて、企業広報そして新聞社やテレビ局でも女性の躍進によって、従来の長時間・滅私奉公型の働き方を見直さざるを得なくなったことも大きいと見ています。
 当社では、在宅勤務制度の対象範囲を2013年1月から全社員に広げ、在宅勤務用のシステム環境やコミュニケーションツールを整備し、利用の仕方も柔軟なものにしています。2012年2月から実施した実証実験の第1号は、コーポレートコミュニケーション部のママさん社員2名でした。そして、実験の終了間際にそのママさんが思わず発した一言「やれば、できた!」。
 これぞ現代版「男もすなる“広報”といふものを、女もしてみむとてするなり」です。
 私としても、広報の原点であるフェース・ツー・フェースのコミュニケーションを基本としつつ、タブレット端末などの情報機器を駆使した広報活動との両輪で、新しい企業広報のスタイルに挑戦していきたいと考えています。
 この時代の風に乗る広報ウーマンの皆さんの活躍を期待しています。
いのうえ・きくえ

関西大学法学部卒業。ダイエー入社。広報課長、ダイエーと丸紅の合弁会社ディー・エム・インターナショナル取締役営業本部長などを経て、2001年IR広報本部広報部長。2005年スタッフサービス・ホールディングス入社。広報部ゼネラルマネージャー、宣伝部ゼネラルマネージャーなどを経て、2009年4月富士ソフト入社、現職。2008年に経済広報センター第24回「企業広報賞」企業広報功労・奨励賞を受賞。

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