経済広報

『経済広報』(2014年10月号)掲載
広報管理職講座(2)
篠崎良一
管理職と担当者の違い
篠崎良一(しのざき りょういち) PR総研 所長/広報の学校 学校長 

広報専門職に求められる資質

 通常、広報職は大きく3つの階層に分かれる。まず、現場で実務担当者として日々戦術レベルの業務をこなす広報部員。次に、広報計画を立て、広報活動を組織化、コントロールし、戦略・戦術レベル両面で広報課題を解決する中間管理職。そして、リーダーとして活動全体を統括し、マネジメントレベルで社会変化を深く迅速に識別・分析して広報戦略を立案し、PDCAサイクルを回して会社の評判(レピュテーション)やコーポレートブランドを構築・強化・維持する責任者の3層である。
 この3層の広報専門職に求められる基本的な資質は共通している。そもそも広報に携わる者の職務は、企業とステークホルダーを、情報を通じてコーディネートすることである。この職務を遂行するには、まずベーシックなコミュニケーション力、次に情報を収集・分析・評価し情報発信に生かす情報力、さらに社会と最も近いコンタクトポイントである広報故に得られる外部の視点と客観性を武器とする判断力の3つである。
 担当者と違い広報管理職に特に求められる能力は、高いレベルの情報力と判断力である。広報管理職が担当する戦略やマネジメントレベルの仕事では、変化を鋭いセンサー、あるいはナビゲーター力で早期にウォッチし、深く洞察し、分析する情報力と、情報を評価し、正しく見極める判断力、とりわけ優先順位付けの能力が問われる。

広報の新時代

 日本の企業広報の中心領域は社会と共に変化してきた。無料広告の位置付けの時代から、パブリシティー重視のマーケティング広報、不祥事対応の企業防衛型広報、社会との共生をアピールする企業イメージ向上広報、幅広くコミュニケーション活動の統合を志向するコーポレートコミュニケーション、さらにはコーポレートガバナンス、CSR(企業の社会的責任)へと活動領域はシフトしてきた。
 情報伝達の目的も、認知(アテンション)からステークホルダーの共感の獲得へと大きく転換した。これには、メディアと情報接触パターンの構造変化の影響が大きい。ただメディアの変化を、マス(オールド)メディアの衰退とインターネットの隆盛と捉えるわけにはいかない。今もネット上の情報の80%はオールドメディアの新聞・テレビ発である。しかも情報の信頼度はオールドメディアに軍配が上がっている。最も大きな変化は、自分から情報を取りにいくプッシュ型から、ニュースはフェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアで友人・知人からやってくるプル型へとシフトしたことである。マスメディアは、ネットから得た情報を事実確認するメディアへと位置付けを変えつつある。
 こうしたメディアと社会の大変革から何が起こるのかを察知するナビゲーター、センサー機能が広報の重要な役割となってくる。変化から派生する「イシュー」「クライシス」を予測し、対処の戦略を立てる「イシューマネジメント」が、広報管理職のこれからの最大のテーマという時代が来たのである。広報領域がコミュニケーション分野を超えて、経営戦略分野に入り込むという時代を迎えている。
早稲田大学卒。出版社を経て、共同ピーアール入社、取締役、常務取締役、取締役副社長を経て現職。企業・団体の広報・危機管理コンサルティング、広報・危機管理研修担当。2003年5月「広報の学校」を開校。2013年1月「PR総研」を設立。著書に『実戦企業広報マニュアル』『会社を守る!もしものときのメディア対応策』『広報・PR概論』(共著)、『広報・PR実務』(監修)など。
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