経済広報

『経済広報』(2014年11月号)掲載
技術広報研究(2)

富士フイルム ホールディングス(株)

富士フイルムが技術の会社であることをまず伝える
 富士フイルムホールディングスは自社の写真フィルム技術をコアに化粧品や医薬品など幅広い事業分野に進出している。同社の高い技術力を発信し続ける技術広報とはどのようなものか。

技術広報をより強化し始めた経緯

 富士フイルムが技術広報をより意識し強化したのは、2004年の中期経営計画「VISION75」からである。「VISION75」は創立75周年(2009年)に向けた中期経営計画であるが、この中には研究開発体制の刷新も含まれていた。2006年には新しい研究施設として神奈川県に富士フイルム先進研究所を設立するなど研究開発関連の動きが活発となり、それに合わせて技術広報を本格的に強化した。
 2000年を境に写真フィルムの需要が低下していく中、新たな成長戦略として化粧品分野や医薬品分野に進出した時から、「なぜ富士フイルムがこれらの分野を始めるのか」との問いに、「写真フィルムの技術を生かすことができる」と同社は発信し続けている。発信の手法のひとつが技術広報であり、化粧品や医薬品における同社の技術力の高さを示すため、学会での研究発表内容などを積極的に発信してきた。
 同社は、記者に会社の説明をする際、必ず技術の話をするようにしている。写真フィルムの開発などを通じて培ってきた技術が、新分野への進出の背景にあることを確実に伝えてきた。
 また、技術広報を通じて、自社技術の新たなアプリケーションを探索することも重要だ。メディアの報道がビジネスパートナーのニーズに触れるきっかけになることもある。

富士フイルムの技術広報の特徴

 同社の社外広報の人数は約10名で、そのうち技術広報を担当しているのは2名である(いずれも事業広報などと兼務)。製品の技術についての広報活動は事業広報担当が行うが、研究開発の段階やニーズ探索段階の技術などの発信は技術広報が担当している。技術広報の担当者は研究開発部門から年間の大まかな研究成果発表時期や内容を聞き、外部への発信の進め方を検討する。製品リリースと同様、技術リリースも幅広く一般の方に向けて発信するため、一般の方が理解できる内容にしている。ただし、一般の方向けではなく、社外のビジネスパートナーのニーズを探る技術リリースの場合は、想定するターゲットに確実に届くよう取材などを通じて専門的な説明を付加するようにしている。なお、技術リリースをつくる際は、担当者だけでなく様々な人の意見を聞きながら作成している。通常の製品リリースに比べて、技術リリースは文章だけでは理解しにくい場合も多いので、図やグラフなどのビジュアルを示して理解しやすいように心掛けている。噛み砕き過ぎると不正確になることもあるので、研究開発部門と相談しながら、正確さを失わずに分かりやすい表現を目指している。
 同社コーポレートコミュニケーション室の田口貴広マネージャーは、「印象に残った技術リリースは2014年1月20日の『Open Innovation Hub(オープンイノベーション ハブ)の開設』である」と話す。2014年1月20日は、創立80周年に当たり、記者会見と見学会を開催し、同社が誇る技術に触れる場の開設を発信した。「本社2階に開設した『Open Innovation Hub』は、製品に使用されている技術や新しい技術などを可視化できる。ビジネスパートナーと共に新しい価値を創造していく、共創の場とするのが狙い」と語る。

(文:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
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