経済広報

『経済広報』(2015年1月号)掲載
マスコミ事情
共同通信社の組織・取材体制と企業報道
谷口 誠

谷口 誠(たにぐち まこと)
(一社)共同通信社 経済部長

 経済広報センターは2014年9月9日、都内で「企業広報講座」を開催した。共同通信社の谷口誠経済部長が、通信社の役割や企業の広報部に求めることについて講演した。参加者は93人。

通信社の役割

 共同通信は、加盟社である約50の全国紙、約150のテレビ・ラジオ局に向けてニュースを配信している。取材から記事を作成するプロセスは一般紙と同様だが、紙媒体を持たない点が通信社の大きな特徴だ。
 通信社の報道では、ニュースをいち早く加盟社に向けて配信する速報性が重視される。締め切りはなく、状況が変化すれば原稿を差し替えていく。また、多数のメディアに記事を配信するため、正確性も非常に重視している。
 昨今は、従来の新聞・テレビ・ラジオに加え、インターネット上のデジタルメディアへもニュースを配信している。インターネットの影響力に我々も注目しており、今後は独自のコンテンツの開発にも取り組む方針だ。
 新聞の紙面と違い、インターネット上では、重大なニュースとそうではないニュースが同じ大きさに並べられ、記事の重要性がとても分かりにくい。そのため、価値のあるニュースを取捨選択しながら記事を提供していく必要性も日々感じている。
 一方で、インターネットから情報を収集することも、業務のひとつとなりつつある。弊社には、インターネット上でどのようなニュース、情報が大きく扱われているかを分析する、3名ほどのチームを置いている。分析によって得られた情報は、政治部や経済部、社会部などの出稿部に連携され、その情報をもとに各部が取材を行うこともある。

経済部の組織体制

 共同通信は東京・大阪・名古屋に経済部を置いている。東京は記者が約50人、デスクが15人の体制だ。東京に重点的に人員を置いており、大阪・名古屋の人数は少ない。
 経済部のほかに、経済データ部という組織があることが弊社の特徴のひとつだ。経済データ部は市況面を扱っており、データは大手全国紙にも活用されている。そのほか、多メディアサービスという、デジタルメディアなどに対応する10人ほどの組織や、海外の経済ニュースを専門に扱う外国経済デスクを9人置いている。
 また、海外特派員はロンドン、ワシントン、ニューヨーク、上海や、ムンバイにも置いている。ムンバイに特派員を置く国内メディアはまだ少なく、弊社に強みがある地域である。 

共同通信の経済報道

 経済報道で重視していることは、大きく3つある。1つは、暮らしへの影響に対する意識だ。1つの事実が人々の生活にどのような影響を与えるのか、という視点を常に持つよう、記者に指導している。また、分かりやすくニュースを伝えるために、難解な専門用語やシステム、経済の動向などは、できる限り平易な言葉に書き換えることを念頭に置いている。 
 2つ目は、地方への情報発信だ。弊社の加盟社は地方紙や地方テレビ・ラジオ局が多く、「東京発の地方ニュース」の需要が非常に高い。全国紙では小さな記事でも、地方紙では一面トップにくることもよくある。そのニュースを欲しているのがたとえ1社だけであっても、地方の要望に応えていくことは我々の重要な役割である。
 3つ目は、「社論」を持たない姿勢だ。昨今、新聞社の社論がはっきり表れる傾向が見られるが、紙面を持たない通信社としては、どちらか一方に軸足を置くことなく、功罪両面をきちんと押さえた記事とするように心掛けている。ここが、新聞社と最も異なる部分ではないかと思う。

企業広報と報道の関係

 企業広報の方々への要望を、報道に携わる者としての立場から大きく4つお伝えしたい。
 1つは、メディアの特性に合わせた広報をお願いしたい。一般紙や通信社は、中学生が一読して分かるような記事の作成を目指しているが、専門的で難解なリリースの文章を見掛けることがある。伝えたい内容を常に頭の中で整理しておき、問い合わせを受けた際には、相手の知識レベルに合わせて、伝えることを心掛けていただきたい。記者は誤報を最も恐れているので、理解できた部分だけを書いたり、最悪の場合は記事にならない可能性もある。
 2つ目は、経営トップと常に意思疎通を図り、モノを言える広報であってほしい。特に不祥事や事故などの危機発生時に、経営トップの判断にモノが言えずに、対応を誤るケースもあると聞く。常日ごろから、社外の視点を社内に取り込み、経営トップに進言することと、経営トップの考えを把握しておくことが重要だと感じる。
 3つ目は、目的を明確にして発表を行ってほしい。単に事実を伝えるだけではなく、それによりどのような効果や影響を見込んでいるかなどについて踏み込んで説明いただけると、記者がニュースの価値を判断する際に役に立つ。発表文の工夫や、常日ごろの記者とのコミュニケーションの段階から、そうしたことを心掛けている広報は非常に強いと思う。
 4つ目は、記者との信頼関係の構築に努めてほしい。特に、記者が特ダネやスクープを書こうとして広報に情報を確認する際のミスリードは避けてほしい。広報の立場はこちらも重々承知しているが、例えば、事実に対して「全く根も葉もない話」などと対応されると、情報の確認先として広報が信頼できなくなる。そうすると、次回から広報に情報を確認しなくなり、誤報のリスクが高まる。

共同通信が求める情報

 最後に、現在共同通信が企業に求めている情報をお伝えしたい。
「グローバル」+「ローカル」な情報
 1つは、地方紙の取材が手薄になりがちな東京発の地方ニュースと海外の情報だ。安倍政権の掲げる地方創生と人口維持は、地方の重要な課題であり、関心度が高い。例えば、地方の工場や営業拠点の統廃合に関する情報も、地方の雇用に大きな影響を及ぼす。できる限り具体的に、どこの拠点かなどの情報を提供していただきたい。同時に、東京と地方拠点との情報連携を緊密に行い、地方紙が取材しやすい体制を築いていただくことをお願いしたい。
 また、新興国に結び付くニュースも関心が高い。例えば、「インドに輸出する新商品は国内の○○工場で生産している」といった「グローバル」+「ローカル」な情報は、弊社にとって非常に価値がある。
視覚に訴える写真や図解
 最近の大手紙を見ても分かると思うが、難しい内容を分かりやすくするために、写真や図解を用いる紙面が増えている。面白い写真や分かりやすい図解が加わることで、小さなベタ記事が経済面のトップにくるような場合もあるため、積極的に写真・図解を提供してほしい。この点は、加盟社からの要望も強い。
企業の新戦略を独自コンテンツで
 経済部では、企業の新戦略の背景や考え方を掘り下げ、インターネット向けの独自コンテンツとすることを検討している。字数制限がないという利点を生かし、通常の紙面には掲載し切れないような深掘りした企画を、企業と連携することで実現していきたい。電話でも構わないので、経営トップや役員のインタビューにはぜひ積極的に応じていただきたい。
キーワードを意識した情報発信
 現在、経済部で重視しているキーワードは、人口減少と高齢化、日中関係、ROE(自己資本利益率)、消費税増税などである。中でも特に、人口減少と高齢化は地方にとって大きな問題であり、弊社の通年の重要なテーマとしている。また、女性の活躍推進やベアの動きなども取材対象となる話題だろう。こうしたキーワードを常に意識した広報戦略を実施することで、企業の対外発信力が強化される。

(文責:国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
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