経済広報

『経済広報』(2015年1月号)掲載
技術広報研究(3)
研究・技術開発力を戦略的広報で伝える

東レ(株)

 東レでは技術に関する広報活動を、研究・技術開発の戦略的広報と呼んでいる。同社のグローバルに展開する事業を支える戦略的広報はどのようなものか。
 同社では「技術センター」が研究本部、エンジニアリング部門、開発担当部門および生産本部の技術関係部署などを横串で束ねて、分断されていない「ひとかたまりの組織」として総合力を発揮し、全社の研究・技術開発体制を推進している。

戦略的広報を始めた経緯

 東レが研究・技術開発に関して戦略的広報を強く意識し始めたのは、2002年4月にスタートした経営改革プログラム「プロジェクトNew TORAY21」(NT21)に伴う研究・技術開発の改革に着手したころだ。
 当時の役員が、東レは研究・技術開発に立脚した会社であり、戦略的なIR・広報をする上でも技術の分かる人材が当該組織に必要と考え、2002年10月より研究・開発企画部からIR室に兼務者を出し、戦略的広報を開始した。以来、IR室にとどまらず広報室、宣伝室とも連携し、トータルで東レの研究・技術開発力を発信している。

誰に向けての戦略的広報か

 同社では、戦略的広報活動の主な対象は全てのステークホルダーと考えているが、新聞(一般紙、専門紙)とテレビはその影響度の大きさから特に注力している。
 記者発表や取材対応時の表現のレベルは、一般紙やテレビに対しては、高校生が理解できる程度まで内容をかみ砕くようにしている。
 業界紙などの専門紙相手の場合は、記者の理解度を勘案しながら専門用語を用いて、専門家に特化した情報を中心に提供している。
 一般紙でも理系出身の記者もいるので、咀嚼(そしゃく)能力が高い記者には専門用語の平易な言葉への変換を任せるが、そうでない場合は、上述の戦略的広報担当者(IR室兼務者)が記者の反応を見ながら、研究者・技術者が話した内容を理解しやすい表現に置き換えて話すといったフォローも欠かさないよう配慮している。

戦略的広報の特徴

 同社では年度の初めに年間の広報計画を策定している。昨年度の積み残し案件も含め、本年度に新たに広報すべき案件について研究・技術開発担当部署からの提案を募り、各案件について重要度などを吟味し、早く発表すべき、あるいは逆に発表時期を遅らせるべきなど、タイミングについても計画し、期初に申請する。
 戦略的広報担当者は、研究本部の毎月の会議に出席し、広報計画の進捗状態や新たな案件についての広報活動の進め方などを議論している。
 また年度末に研究本部では、戦略的広報を評価し、優れた広報案件を「戦略的広報賞」として本部長が表彰している。
 これは対象年度の広報案件の中から研究成果の革新性などが正しく掲載されている記事を総合的に判断して賞を授与する仕組みである。
 同社技術センター企画室主幹兼IR室主幹の松田良夫氏は「このような賞を設けることで、加点主義による社員のモチベーションの向上だけでなく、関係部門の戦略的広報への関心の喚起、そして戦略的広報の重要性の理解促進にも役立っている」と語る。
(文:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
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