経済広報

『経済広報』(2015年10月号)掲載

グループ広報戦略(4)

「コーポレートブランドの価値向上」を目指した

グループ広報戦略

帝人グループ

 帝人グループは2003年に「帝人グループの認知度向上と正確な理解の促進」「国際市場での存在感の向上」「帝人グループの一体感と求心力の向上」を目的に、“テイジンブランド”の確立を打ち出した。広報、宣伝を中心に「コーポレートブランドの価値向上」を意識したコミュニケーション活動を実践している帝人グループのグループ広報戦略を聞いた。

コミュニケーションの組織・体制

 帝人グループは1918(大正7)年に帝国人造絹絲として発足し、繊維事業からスタートした。その後、事業の拡大と多角化を進め、現在では「高機能繊維・複合材料」「電子材料・化成品」「ヘルスケア」「繊維製品・流通」「IT」など、多岐にわたる事業をグローバルに展開しており、企業理念である「Quality of Life」の向上に努めている。国内58社、海外94社の合計152社(2015年3月31日現在)のグループ会社を持ち、欧州、北米、アジアなど全世界に展開。従業員数は国内9268人、海外6512人の合計1万5780人(2015年3月31日現在)であり、海外の従業員が多いことも特徴である。
 コーポレートコミュニケーション部(以下、CC部)は、これらグループ全体の広報、宣伝をはじめとするコミュニケーション機能、ブランディング機能を統括している(組織図参照)。この中で、東京広報では海外広報も含めて担っており、CSRコミュニケーションとしては、社会貢献、統合報告書などを主に担当している。また、BtoB素材メーカーでありながら、「テイジン未来スタジオ」と呼ばれるショールームを2007年11月に開設し、帝人グループの製品、技術を顧客などのステークホルダーに広く発信するための総合展示場として運営している。帝人グループの技術力はアピールポイントのひとつであるが、素材メーカーの製品は、どこにどのように使用されているかを紹介するのも難しい。CC部はこのスタジオを運営・活用することによって、説明が難しい内容も含め、社外へしっかりとアピールしていく考えだ。
 一方、グループ会社の中には、独自に広報機能を持つ会社もある。IT事業を手掛けるインフォコムという会社はJASDAQに上場しており、広報・IR機能を担う組織を持っている。ここでは、リリースの発信や取材対応は独自に行っているが、CC部とは定期的にミーティング機会を持っており、情報共有体制を整えるなど密に連携している。
グローバル広報について
 CC部では、海外への情報発信も強く意識しており、積極的に発信を行っている。現在、帝人グループとして、日本語でのニュースリリースが年間200件近くあるが、そのうち英文、中文で発信して意味のあるものについては極力海外に向けて発信するようにしており、内容や表現は、その言語でより効果的に伝わるように心掛けている。また、こうしたことを背景に、英語、中国語での広報対応が可能な体制づくりを目指している。
 一方、海外にもインフォコムと同じく独自に広報機能を持つグループ会社がある。2000年に買収した、オランダでアラミド繊維事業を手掛けるテイジン・アラミドという会社で、欧州中心の広報活動を展開しているが、同社とも日ごろより連携を図りながら活動を進めている。こうした取り組みも含め、まだ緒についたところではあるが、帝人グループではCC部がグローバルに広報活動を推進している。

コーポレートブランドの価値向上が目標

 現在は、「コーポレートブランドの価値向上」をミッションとしてコミュニケーション活動を推進しており、成果も見えてきているが、以前はBtoB素材メーカーということもあり、世の中に実体が伝わっておらず、事業が多様化しているにもかかわらず、「古い体質の繊維会社」とのイメージを持たれていたことがあった。こうした状況に対し、1997年ごろからは「広報、IRは経営トップの仕事」と位置付けられるようになり、IR活動もスタート。広報、宣伝と一体となったコミュニケーション活動を展開してきた。2012年には広報・宣伝とIRが分割されたが、引き続きこの3機能は密に連携して対応している。この間、一貫してテイジンという「コーポレートブランドの価値向上」を目指して活動してきたわけだが、その中で広報機能としては、大きく「社会的責任を果たす(情報開示)」「前向きに情報提供する(情報発信)」「ブランド価値低下を防ぐ(リスク・クライシス対応)」の3点を担ってきており、メディア露出の増大や、認知度・好感度の向上といった形で成果を挙げている。
 最近では、コーポレートブランドの価値向上に加え、マーケティングに資する活動にも積極的に取り組んでいる。帝人グループの場合、プロダクトブランドは本来各事業の管轄であるが、CC部は広報、宣伝、ウェブ、ショールームなど、製品プロモーションを支援できる機能やツールを多く持ち合わせているため、特にリソースを投入しにくい新製品や、消費者が関心を持ちやすい製品について、情報発信を通じてサポートしていく考えだ。これもまたコーポレートブランドの価値向上に繋がるものと考えている。また、そのほかに、アワードやランキングなどで社外からより高い評価を得ることも意識しており、そのためにも今後より一層、関連部署と連携して進めていきたいとしている。

事業グループとの情報共有・連携体制

 CC部では、国内外にグループ会社を持つ各事業グループと密接に連携している。特に情報発信の機会損失を避け、各事業の情報について広報バリューを見定めて効果的な広報活動に繋げるためにも、CC部は常に最新の情報が手に入る環境にあることが求められている。帝人グループでは、事業グループごとに、海外のグループ会社に関することを含め、情報が入ってくるようになっている。日常の情報収集努力はもちろん大切であるが、それを支える仕組みもまた重要であるということだ。以前、持株会社制に移行したときには、各事業からの情報収集や密な連携を行うため、「グループ広報・IR委員会」を設置し、四半期ごとに会議を開く仕組みを整備した。ところが、分社化されたことで事業間の壁が高くなり、情報共有や議論などがうまく回らず、形式的な会議になってしまったという。
 そのため現在は、各事業・機能との連携をより密にして広報活動を行っていくために、毎年、年度初頭にCC部が事業と膝詰めでやりとりし、年間の情報発信計画を策定している。そして、その進捗状況や、月々の計画・実績、主なアクションなどについては、毎月開催される経営会議体で共有・審議している。広報担当者の具体的な動きとしては、計画の進捗を確認しながら、新たな情報入手、発信のタイミングの調整、効果的な発信方法の選定などを日常的に行っており、これにより、取りこぼしのない最大限の発信、そして最も効果的な発信方法の選定が可能となっている。

PDCAサイクルによる効果的な情報発信

 関係現局と連携して広報活動を行っていくためには、その広報活動の戦略、そして成果が非常に重要になる。CC部では、効果測定としてよく行われているアウトプット(報道)の評価・分析のほか、インプット(発信)についても独自の管理・評価を行っている。
 アウトプットの効果測定は、露出量、論調、広告換算の3つの要素を指標化して報道分析を行っており、半年単位で集約するとともに、毎月の進捗をチェックしている。また、英文、中文の報道についても、国内の分析ほどではないが、発信量、露出量などをチェックしている。
 一方で、インプットについては、策定した情報発信計画の進捗状況を把握・フォローするとともに、各事業・機能の責任者を中心とした積極的な情報発信を期して、情報発信を点数化し、各事業・機能に目標値を設定して、毎月管理している。運用ルールや配点基準なども、試行錯誤しながら整備を重ねてきており、昨今は、社内でその点数の進捗などを意識した会話が交わされるようにもなっている。こうした取り組みについては情報発信強化に有用なこととして、毎月の経営会議体で報告、共有を行っており、広報活動の取り組みを目視化すると同時に、各事業・機能から広報活動に対する理解・協力を得るためにも効果を発揮している。
 このように、同社では、情報発信計画の策定から積極的な情報発信、経営層との共有・連携、実績のフォローまでの「PDCAマネジメント」を実践しており、より効果的な情報発信に結びつけている。

インターナルブランディングの着実な推進

 2003年の持株会社制移行に際し、分社化されて内から外への遠心力が働く中で、テイジンブランドの名の下にグループの一体感、求心力を醸成するための活動としてインターナルブランディングの推進が求められた。CC部はそのけん引役を担う立場として、ブランド管理を強化するとともに、グループ内への意識づけのためにブランド研修を行ったり、グループ報をインターナルブランディングツールと位置づけて、経営トップのメッセージはもちろん、ブランディングに資する活動を行う社員や組織の紹介記事などを発信している。また、2013年からは全社的な取り組みとして、“One Teijin”というスローガンを掲げ、全ての社員が、組織や事業、地域や国境、営業/技術といった職種を超えて持てる力を結集し、一丸となって強くたくましい帝人グループを創っていくことを目指している。
 以前は、事業グループ間、営業・技術間、地域間などに壁があり、同じ顧客に対して各事業が別々にアプローチしているようなことがあった。このようなことをなくし、顧客に対して帝人グループが一丸となって取り組むことができれば、より付加価値を高めた提案に繋がり、グループ全体の収益向上に貢献できる。全社的な施策としては、営業担当が一堂に集まる営業大会を開催したり、グループ横断的な営業研修、マーケティング研修などを強力に推進しているほか、“One Teijin”を冠したアワードなども展開している。その中にあってCC部としては、“One Teijin”を推進するためのツールを制作・活用しているほか、帝人グループの総合展示場であり、“One Teijin”を象徴する場とも言うべき「テイジン未来スタジオ」をグループ全体の融合の場としても活用している。
 CC部では、このようなグループ全体での一体感の醸成、また、社員、組織の行動変革を目指して、さらにインターナルブランディングを推進し、広報・宣伝をはじめとするエクスターナルの取り組みとともに、究極のミッションである「コーポレートブランドの価値向上」にさらに注力していく考えだ。
文:国内広報部主任研究員 西田大哉
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