経済広報

『経済広報』(2016年1月号)掲載

企業PRの「明日のヒント」 Vol.1

グローバルPRの3つのトレンド

岡本純子

 

岡本 純子(おかもと じゅんこ) コミュニケーションストラテジスト/(株)グローコム 代表
 皆さん、はじめまして!「企業やヒトがどうやったら、うまく自分の価値を伝えることができるのか」「相手の心を開くコミュニケーションとはなんだろう」。今回から始まるこの連載では、1年365日、そんなことばかり考えている筆者がたどりついた「コミュニケーションの方程式」やグローバル最新事例・トレンドなど、企業PRの「明日のヒント」となる情報をご紹介していきます。

 新聞記者10年、PRコンサルタント10年。コミュニケーション業界のいろはの「い」が分かり始めた2014年夏、「海外の最先端事例を見てみたい」とニューヨークに渡った。それから約1年間、米国のトレンドを学び、とにかく驚いたのはPRの進化の速さ。テクノロジーやソーシャルメディアの進化は、米国のPR業界の「常識」を根底から覆す大きな波となっていた。特筆すべき3つのグローバルPRトレンドをかいつまんで説明しよう。

マスメディアの凋落、ソーシャルの台頭

 日本でも、マスメディアの衰退がささやかれるが、米国はさらに顕著だ。新聞社の苦境、テレビの視聴率低迷、記者のリストラなど、マスメディアの影響力が低下。代わってBuzzFeed、Huffington Postなどのネット専業メディアが台頭。Facebook、Twitterといったソーシャルメディア、Netflixなどの動画配信メディアなどの「インテラクティブメディア」が強い影響力を持つようになり、情報の流通チャンネルも複雑化している。それに伴い、PRの重心も、企業⇒マス⇒生活者への一方通行型の情報発信からソーシャルメディアを介した企業⇔生活者や生活者⇔生活者などの相互対話型へとシフトしつつある。

PRのドメインはメディア対応にあらず

 マスメディアに対する掲載の働き掛け、パブリシティの獲得というPRの従来の活動の重要性は相対的に低下し、代わってソーシャルメディアを通した生活者やファンとのコミュニケーション活動、自社のウェブサイトなどOwnedメディアを通じた情報発信活動がPRの重要な領域とみなされるようになってきている。PRは主に、Earned(記事などとして露出を獲得する)メディアを中心と考えられてきたが、今やPRはPaid(広告)、Earned、Social、Ownedの4つのメディア(頭文字をとってPESOと呼ばれる)すべてのドメインをカバーするもの、という考え方が主流である。

企業はニュースとストーリーを語る時代

 もうひとつの大きなトレンドは、企業がマスメディアに「ニュース」を発信するだけではなく、自らがメディアとなって、「ストーリー」を語るべき、という考え方が広がっていることだ。GE、Walmart、Microsoftなど名だたる企業が自ら、社内ジャーナリストを雇い、専用サイトを設けて、直接、ストーリーを発信する「ブランドジャーナリズム」活動を積極的に展開している。

 日本では、まだまだPR=メディア対応という認識が強いが、米国の現状は、日本のPRがどれほど発展の余地を持っているのかを示しているともいえる。PRプロフェッショナルは情報を、ただ発信するだけではなく、自らニュースやストーリーを発掘し作り出すコンテンツクリエーション力が、ますます問われるようになるだろう。

岡本純子(おかもと・じゅんこ)
コミュニケーションストラテジスト。読売新聞記者、電通PRコンサルタントを経て渡米。帰国後、米ニューヨークで学んだコミュニケーションの最先端スキルを体系化した「コミュ術」に基づいて、企業のPR支援などを手掛ける。企業幹部のプレゼン・スピーチのコーチング、メディアトレーニングなど、「トップコミュニケーション」分野の経験が豊富。(http://www.glocomm.co.jp/)
pagetop