経済広報

『経済広報』(2016年4月号)掲載
企業広報研究

PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

アンディ・ポランスキー

アンディ・ポランスキー
ウェーバー・シャンドウィック 最高経営責任者(CEO)

 ウェーバー・シャンドウィックは、世界81カ国でPRコンサルティングサービスを提供するグローバルなPRコンサルティング会社である。同社は、広告メディアのAd Ageが毎年発表するエージェンシーリストでPR会社として唯一2年連続で受賞するなど、PRの領域を超えたクリエイティビティーやイノベーションについて高い評価を得ている。同社の最高経営責任者(CEO)のアンディ・ポランスキー氏が2月下旬に来日した機会に、PRにおけるクリエイティビティーの重要性について聞いた。

様々なスペシャリストが生み出すクリエイティビティー

クリエイティビティーを取り入れたPRコンサルティングを行っていると伺っているが、どのようなことか。

ポランスキー 昨今のPR業界では、どれだけ周囲の人々を巻き込んでいけるかというエンゲージメントが重視されている。人々が情報を得るチャネル、プラットフォームが多様化しており、PR会社としては、様々な分野で専門性の高い人材をそろえることが、クライアントのニーズに合ったサービスを提供するために不可欠である。当社は、デジタルやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ブランディングなど、今までにない幅広いPRのサービスを提供できる会社であると自負している。当社の社員には、マーケティングや広報、ジャーナリスト、危機管理やそれぞれの国や地域の法務事情に詳しい弁護士など幅広い専門知識を持つスペシャリストが在籍しており、それが当社の強みとなっている。
 当社のSNS分野、コンテンツマーケティング分野での戦略プランニングは世界トップレベルであると自負している。核となるのは従来のPR分野だが、その周辺の新しい領域にも力を入れている。そうした戦略と計画の連携は、ますます重要になってきている。また、最近、組織を抜本的に再編し、社内でのコラボレーションやチームの連携をより促進してクリエイティビティーをさらに高める体制を整えた。

SNSなどを活用したクリエイティブな広報戦略を

グローバルな観点から見ると、日本企業はどのように評価されているか。
ポランスキー 日本企業は今、世界中から注目されている。2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるからだ。当社は、東京やそのほかの都市のオリンピック誘致をサポートしたが、過去の経験からすると、いずれの主催都市も開催まで世界中から注目を浴び続ける。企業はまさにこの機会を生かして、自らの知名度や認知度を向上させるためにグローバルなコミュニケーションを強化すべきだ。
日本企業がブランド力を上げるためにはどうすればよいか。
ポランスキー 日本企業の目の前には大きなチャンスがある。だが、世の中の動きが複雑化している今、そのチャンスに対するアプローチの仕方を間違えると、他社との差別化や、強力なブランドを構築することは難しいだろう。そのためにはクリエイティビティーに富んだ多様なアプローチが必要になってくる。今後、グローバル市場で、世界的な知名度を獲得するためには、国内市場で顧客を引き付けていたときとは違う、今まで経験してこなかったようなリスクをとった斬新なアプローチが求められるだろう。既に日本企業の中にも、世界へ向けてデジタルやSNSを活用したクリエイティブな広報戦略を取り始めた企業も出てきている。
それはどのような戦略か。
ポランスキー 当社は、日本だけではなく、グローバル企業のクライアントを多数抱えている。それらの経験を踏まえて、企業がデジタルやSNSを活用したクリエイティブな広報戦略を実施するために、従来のメディアリレーションズだけではなく、より幅広い対象に向けたコンテンツの制作や、成果の測定、ブランドマーケティングなどを提供することができる。また、最近は特に、企業の風評が重視されており、会社がどのように受け止められているかによって、マーケティング戦略が変わる。そのような様々な要因を網羅した形で、複雑な環境の中、企業がどのような方向性を取っていけばよいかの指針を提供できる。単にクリエイティブなソリューションを提供するだけではなく、ステークホルダーからどのような圧力があり、企業の風評にどのような影響が出ているかの分析や、その影響に対する解決策は何か、といった戦略の策定をサポートすることができる。

心に響くアプローチがカギ

内だけでなく、グローバルにステークホルダーとのエンゲージメントを高めていくためにはどうすればよいか。
ポランスキー 今まで、長年にわたり多くの企業はブロードキャスト型の広告に頼っていた。ペイドメディアを使い、あらゆる人に一斉配信をしていた。一方、近年、消費者は様々な手段、アプローチで企業情報を取得しようとしている。そのような状況下では、企業は消費者と強いエンゲージメントを築くことが重要である。もちろん、従来と変わらず、ペイドメディアは重要なメディアであるが、それだけにとどまらず、アーンド、オウンドメディアを組み合わせ、様々なプラットフォームやメディアをフルに活用したエンゲージメントを築くことが重要だ。特に、デジタル、モバイルユーザーに向けて心に響くようなアプローチができるかが今後の大きなカギになる。
グローバルなエンゲージメントといっても、欧米、アジアではエンゲージメントの仕方が異なるのではないか。
ポランスキー その通りだ。企業は何のために存在しているのか、また、グローバルで共通して伝えていきたいと思う内容は何かといったメッセージを世界で一貫して発信すべきだ。しかし、その一方で、世界の国・地域によってエンゲージメントの仕方は変えていかなければならない。消費者は、ブランドの裏にある企業がどのような企業なのかを知りたいと常に思っているので、どの消費者にも正確に伝わるコーポレートメッセージが必要である。従って、各国・各地域で企業のメッセージの発信方法や施策の実行方法は変えてエンゲージしていく必要がある。当社は世界81カ所に事業拠点があり、それぞれのローカルメディアへの対応や、その地域の文化を熟知しているため、それぞれのマーケットに最適なアプローチを提案できる。
最後に、米国の企業広報における最近のトレンドは。
ポランスキー 企業はマーケットの変化を予測し、それに合ったPR戦略を取れるかが企業の成功のカギになるだろう。最近のトレンドでは、特にテクノロジーやイノベーションに対しての関心が高まっているため、それらに合わせた戦略が必要になってくるはずだ。当社では、今後も、クリエイティビティーという強みを生かしたコンサルティングをクライアントに提供していきたい。
(聞き手:経済広報センター 常務理事・国内広報部長 佐桑 徹)
(文責:国内広報部主任研究員 西田大哉)
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