経済広報

『経済広報』(2016年12月号)掲載
マスコミ事情

新聞記者の攻略法と中日新聞の関心事

林 浩樹

林 浩樹(はやし ひろき)                       
中日新聞 経済部長

 経済広報センターは9月15日、「企業広報講座」を名古屋市で開催した。中日新聞の林浩樹経済部長が、名古屋本社経済部の体制や担当紙面の特徴、最近の関心事などについて講演した。参加者は20名。

中日新聞名古屋本社経済部の体制

 新聞社には、日本経済新聞のような専門紙や、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞の全国紙、地域で発行している中日新聞のようなブロック紙などがある。名古屋はトヨタ自動車を中心とする製造業が盛んだが、このように製造業に特化している地域はブロック紙の中でも珍しい。
 名古屋本社の経済部は、デスク(夕刊1名、朝刊2名)、製造業担当(自動車・航空機など)、非製造担当(電力・ガス・鉄道・金融・流通など)、遊軍担当(トレンド、社会現象、選挙取材など)を配置している。非製造担当は、各記者が1~2業界・企業を担当しているが、その垣根を超えて仕事をすることもある。遊軍担当は特に持ち場はなく、現在は雇用関係に特化した取材などに力を入れており、時期によってプライオリティが変わる。また、昨今女性の活躍推進が叫ばれているが、経済部には女性記者が3名(そのうち、産後休業と育児休業が1名ずつ)所属している。

経済部記者の特性

 新聞記者の特徴として、次の4つを挙げる。
・ 真実に近づきたい…使命感や社会正義の実現のため、記者には“真実に近づきたい”という思いが根本にある。
・ 特ダネが大好物…いかに自分だけのスクープを抜くかが、自己実現や評価のひとつとなっている。
・ 特オチは避けたい…どの報道機関でも報道されているのに、自分だけが知らないという状況だけは記者としてどうしても避けたい。
・ 実は何も知らない…記者はなんでも知っていると勘違いされがちであるが、経済部に配属される記者は新人もいればベテランもいるため、記者も最初は何も知らないと理解しておいてほしい。懇切丁寧に説明をしておいた方が、紙面に記事が出る際も内容や意図が違っているというリスクが少ない。また、記者は、読者目線でいることが最も重要で、何も知らないという感覚をずっと持ち続けなければならない。
 さらに、新聞記者の中でも経済部記者には、次の3つの特性があるといえる。
・ トップといかにパイプをつくるかが生命線。
・ 人事そのものがニュースになるため、人事に詳しい広報担当者に一目置く。
・ 企業の言いなりでは広告や広報と同じになってしまうため、ニュース価値にシビア。

中日新聞記者の攻略法

良い広報・悪い広報
 自社の組織や現場に詳しいことはもちろん、トップの考え方や人間性についてもよく理解し、「担当者は話せないと言っていますが、記事に必要だと思うので説得します」など、消費者やメディアを意識したスタンスを持って対応ができると、記者からの安心感や信頼感へと繋がる。さらに、自社の業界以外の記事をよく読んでいたり、経済面以外でも「この記事が良かった」などの会話ができると親近感が増す。
 一方で、リリースの内容をきちんと理解していなかったり、対応が遅かったりすると、記者は不信感を抱く。不祥事をリリースで済ませるような対応は最も避けるべきで、会見を開かないのは何か隠しているからではないかと、真実に近づきたいという記者魂に火をつけてしまい、スクープ合戦やメディアスクラムを起こしてしまうこともある。
不祥事会見は腕の見せどころ
 不祥事など不都合なことが発生したとき、どう対応するのかを考えておくことが危機管理の本質だろう。不祥事会見こそが広報の腕の見せどころで、会見をコントロールすることが求められている。会見をコントロールするには、次の4つを押さえておく必要がある。
・ どの段階で、誰を出すのかをしっかり決めておく。
・ “分かっている”ことと、“分からない(調査中)”ことを整理しておく。
・ 想定問答を作成する。
・ 会見で話す内容の線引きは妥当なのか、記者・読者が納得できるものなのかを確認する。
プレスリリース作成時のポイント
 プレスリリースを作成するときは、次の3つに気を付けていただきたい。
・ 新聞記事のスタイルと合わせて見出しを重視し、最初に結論を述べる。
・ 記事に厚みが出て必然的に掲載スペースも大きくなるため、経緯や背景、データも載せる。
・ 専門用語が多いと読者に伝えたいという意識は薄いと判断されるため、専門用語はできるだけ避けて分かりやすく書く。
自社をアピールするには
 良いニュースはいつでもあるわけではない。広報担当者はニッチなところでアピールし、ニュースをつくっていくという意識が非常に重要であろう。記事のコンテンツから、自社でアピールできる商品や取り組みはないか探したり、自社の年間行事や周年イベントと世の中の旬なトピックとを関連付けたり組み合わせたりして、ニュースをつくることができる。
 中日新聞には、次のようなコーナーがある。
・ 職場発うちの秘策…各企業での社員のやる気を引き出し、他社に負けないサービス・製品を生み出すための、特徴的な人事や制度、取り組みなどを紹介。
・ 街角トレンド…街角でトレンドとなっている商品やサービスを大きめの写真付きで紹介。
・ ゆうかんさろん…人に焦点を当てた経済面以外のコーナー。ボランティアや街の活性化への取り組みなどを紹介。

最近の関心事

 前述の通り、自動車産業は東海地方の基幹産業であるため、やはり記者の配置も記事の掲載分量も多くなりがちである。自動運転車の実用化や環境車の動向をはじめ、今後もしっかりウォッチしていきたい。
 また、日本のものづくり産業の6割ほどを占める地域であるため、堅実に地道に進めていく風土が根付いており、逆にベンチャーが生まれにくい土壌でもあるといわれている。そのような中、“ものづくり+IT”の発想が全く異なるもの同士が融合する、AI(Artificial Intelligence)やIoT(Internet of Things)などは非常に面白いと感じる。
 そのほか、MRJ(三菱リージョナルジェット)や、今後市場の拡大が見込まれる航空産業、2027年のリニア中央新幹線開通による再開発、ストロー現象、観光振興などのリニアインパクト、海外への新幹線輸出、マイナス金利などに注視している。

NIBの取り組み

 新聞は、寄り道文化・道草文化と呼ばれるが、自身が知りたかったこと以外にも同時に様々な情報を得ることができ、自身の幅を広げることができる。
 一方で、インターネットは、検索能力の高さや情報量の多さから、早く答えがほしい者に適している。また、興味のある分野には、より強く・深くのめり込む傾向があるが、興味のない分野には無関心になりがちだ。そのため、ネット世代の新聞離れによる、教養や会話能力の低下を危惧する経営者が多い。
 そこで、中日新聞では、仕事に新聞を活用してもらおうと、企業の新人研修で「新聞の読み方講座」を実施するなど、「Newspaper In Business(NIB)」という新しい取り組みを行っている。
(文責:国内広報部 主任研究員 古川典子)
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