経済界は考えます



「産経新聞」「フジサンケイビジネスアイ」
(2010年3月2日~3月6日まで5日間にわたり計5回掲載)

■環境と経済両立 低炭素社会を実現
  日本経団連では1997年から、行動計画を策定し、温暖化対策に取り組んできた。これは主に製品の製造段階に着目し、2012年までの京都議定書の期間の二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指すものだ。
昨年12月には13年以降の取り組み方針として、「低炭素社会実行計画」を公表したが、この計画では、製造段階に加え、革新的な技術開発についても、アクション・プランを策定する予定だ。環境と経済を両立しながら、長期的に温暖化を止めるカギは、革新的な技術。その主たる担い手は企業であり、「低炭素社会実行計画」はその責任と決意の表明である。(このコーナーでは9つの産業の取り組みを紹介する)

■ヒートポンプでCO2を1割削減も
【電力】
  日本が世界に誇るヒートポンプ技術は、太陽光や風力と同様に無尽蔵な自然エネルギーである大気熱をわずかな電気でくみ上げることで、投入した電気エネルギーの約3~6倍の熱エネルギーが得られる。
ヒートポンプ技術は家庭用として冷蔵庫やエアコン、洗濯乾燥機、給湯機(エコキュート)などに使われるほか、最近では産業・業務用としても幅広く活用され、CO2の少ない電気との組み合わせにより、社会全体の低炭素化に大きく貢献している。
仮に、日本中の冷暖房や給湯などをすべてヒートポンプにした場合、CO2削減効果は年間約1・3億トン(国内排出量の約1割)に達すると試算されている。
産経新聞 フジサンケイビジネスアイ 2010年3月2日掲載


■大気中のCO2も製品の原料に
【化学】
  温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を化学製品の原料に有効活用する取り組みが進んでいる。
ひとつは、バイオマスプラスチック。原料のでんぷんやセルロースは、植物が大気中のCO2からつくるので、もともとの原料はCO2だ。お店のポイントカードや包装材、家電製品、自動車など幅広い分野で使われている。
また、CO2から化学合成されたポリカーボネート樹脂はCDやDVDに利用されている。
このほか、いろいろな化学製品の原料になるメタノールをCO2から合成する技術も実用化されつつあり、CO2の利用技術の開発は着実に進んでいる。

■製造工程で「下水汚泥」を有効活用
【セメント】
  社会から出るさまざまな廃棄物や副産物を、セメント製造工程で原料や熱エネルギーとして活用しており、その総量は年間約3千万トンに達した。
これは、製造プロセスの特徴と業界のたゆまざる活用技術の開発が可能にしたもので、けっしてセメントに廃棄物が混入しているわけではない。
製造工程で受け入れる廃棄物のうち、最近増加しているのが「下水汚泥」だ。全国での発生量約223万トンのうち、約36%に相当する約80万トンを有効活用している(2006年度実績)。本来なら、下水汚泥は最終処分場で埋め立て処分となるが、有効活用している分、処分場の延命に寄与している。
産経新聞 フジサンケイビジネスアイ 2010年3月3日掲載


■家庭用燃料電池でCO2大幅削減
【ガス】
  コージェネレーション(熱電併給)システムは病院や工場などで利用され、二酸化炭素(CO2)の削減に貢献しているが、家庭向けにも高分子電解質型燃料電池「エネファーム」が開発され、昨年から世界に先駆け発売された。
燃料電池は、天然ガスなどからつくられた水素と空気中の酸素を化学反応させて電気をつくりだす仕組み。その時に生じる熱でお湯をつくるので総合効率が高く、CO2排出量をこれまでより約40%減少させることができる。また、化学反応で発電するため、騒音や振動が少ない利点も。現在、より発電効率の高い固体酸化物型燃料電池の開発にも取り組んでいる。

■バイオ技術で森をさらに豊かに
【製紙】
  紙の製造は、木を植えて森を育てることから始まる。成長が早く、繊維質が多く、害虫や病気にも強い品種を育てることができれば、一層効果的に原料を確保できる。
これら製紙原料に向いた木や、さまざまな環境に適応できる木を育成するため、品種改良や組織培養などバイオ技術の開発に積極的に取り組んでいる。こうした技術により、雨の少ない地域や寒冷地でも、森をはぐくむことができるようになれば、地球上の森がさらに広がる可能性が大きい。
製紙産業は豊かな森をつくるために、絶えず挑戦を続けている。
産経新聞 フジサンケイビジネスアイ 2010年3月4日掲載


■3つの「エコ」推進で温暖化対策
【鉄鋼】
  日本の鉄鋼業界は、製造プロセスにおける世界最高水準のエネルギー効率のさらなる向上(エコプロセス)、低炭素社会の構築に不可欠な高機能鋼材の供給を通じた製品使用段階での二酸化炭素(CO2)排出削減への貢献(エコプロダクト)、そして優れた省エネ技術の途上国への移転・普及による地球規模でのCO2排出削減への貢献(エコソリューション)という3つのエコを通じて、地球温暖化対策に積極的に取り組んでいる。
中長期的には、鉄鉱石の水素還元や高炉ガスからのCO2分離回収などにより、製鉄所から出るCO2を大幅に削減する革新的製鉄プロセス技術開発(COURSE50)を推進していく。

■バイオガソリン 輸送用にも導入
【石油】
  バイオマス燃料の原料である植物は成長時に二酸化炭素(CO2)を吸収する。燃焼時に発生するCO2の排出量が計上されないカーボンニュートラルの効果から、地球温暖化対策に有効なエネルギーだ。
日本でも、2010年度までに輸送用燃料に原油換算で50万キロリットルのバイオ燃料の導入を目標とし、そのうち石油業界で21万キロリットルを導入することになっている。石油業界では既にバイオETBEを混入したバイオガソリンの販売を開始。10年度には目標を達成する見込みだ。
ただ、バイオ燃料の多くはサトウキビやトウモロコシから作られており、食物価格にも影響を与えるため、食物以外からの製造技術の開発が待たれる。
産経新聞 フジサンケイビジネスアイ 2010年3月5日掲載


■省エネ家電、エコポイントで認知
【電機】
  家電やオフィス機器の多くは、省エネ法トップランナー基準対象機器に指定され、技術革新による省エネ性能が格段に向上している。待機時消費電力の低減も進展、主要家電においては1ワット以下が達成されている。
これらの二酸化炭素(CO2)削減効果は2600万トン(政府試算)とも推計され、エコポイント制度の導入により、省エネ家電が広く認知されつつある。
たとえば、2008年度に白熱電球を電球形蛍光ランプに代替した成果は前年度から年間消費電力量が約6・4億キロワット時も減少したと推計され、省エネ・長寿命のLEDランプが新世代のあかりとして期待されている。

■さまざまな技術積み重ねて低燃費
【自動車】
  日本の運輸部門の二酸化炭素(CO2)排出量は2001年度の2億5700万トンをピークに減少基調に転じ、08年度には約2億3600万トンまで減少している。
その大きな要因は自動車の燃費改善と交通流対策などによるものであり、自動車の燃費改善はさまざまな技術の積み重ねだ。近年でも、ロスの少ない動力伝達機構として「CVT(無段自動変速機)」やエンジンの給排気の効率化を進めた「可変バルブタイミング」といった技術を開発し採用してきた。
今後も従来のガソリン車やディーゼル車のさらなる燃費改善に加え、ハイブリッド車や電気自動車などの次世代自動車の開発にも力を注いでいく。

産経新聞 フジサンケイビジネスアイ 2010年3月6日掲載

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