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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’10/3月12日〜’10/4月15日)

 この期間、民主党鳩山政権の温暖化対策、郵政政策、日本の経済状況などに関する論評が幾つか見られた。また、グーグルや人民元をめぐる米中関係や中国の意図・背景に関して各紙誌で取り上げられた。

 鳩山政権の地球温暖化対策基本法案について、WSJA(4/1)で ジョゼフ・スターンバーグ「ビジネス・アジア」エディターは、「温室効果ガス削減のための排出量取引や炭素税の創設は日本にとっては絶対に良い考えではない。それらが与える破滅的コスト」を考えれば、2020年までにCO2(二酸化炭素)排出量を1990年比で25%削減しようとするのは「日本経済にとって自殺行為だ」と断じている。
 スターンバーグ氏は、電力、鉄鋼、セメント、製紙など「日本産業のエネルギー効率はすでに非常に高く」「日本経済には、これ以上エネルギー効率をやりくりする方法はほとんどない」と述べ、「鳩山首相のCO2削減の夢を実現するには日本企業は莫大な資金を要する。日本経団連は、CO2排出量を1トン削減するのに日本は476ドルかかる(米国は60ドル、EU(欧州連合)は48~135ドル)と話している」と指摘している。「それなのに、日本はどの国よりも大きな排出量削減を目指している(日本の25%に対して、EUは20~30%、米国は3%の削減目標)」。その上、他の主要国が排出量削減を実施しなかった場合には、「日本はさらに国際競争力の問題に直面することになる」と警告している。

 エコノミスト(4/10号)社説は、「日本の危機的財政がいずれ破綻する理由が3つある」として、増大する公的債務、長引くデフレ、弱々しい国内経済を挙げ、このような破滅から日本経済を救うために「必要なのは思い切った改革なのだ。生産性を高める構造改革、成長を押し上げる財政改革、強力な金融刺激策などを一斉に実施して、経済にショックを与えてよみがえらせるのである。これらには、法人税引き下げや消費税の段階的引き上げなど税法の全面的見直しから、農業の規制緩和、運輸・エネルギーなど保護された経済分野を外国の競争に開放すること、などが含まれる」と論じている。そして、このような大胆な政策を実行できる「新しい指導者を緊急に必要としている」と述べている。
 FT(4/15)でデビッド・ピリング アジア・エディターは、日本の今の状態を「世界は日本への愛が冷め、日本も世界に愛想を尽かしている。日本びいき以外は、最近の日本に対して、眉をひそめるかあくびを隠そうとする」と書いてみせて、「日本人は国の低迷と平和な孤立を心地良く思っている」のではないかと問い、「日本は今後数十年続く居心地の良い、うらやましくさえ思えるおいぼれの時代に入るかもしれない」という。しかし、人口の高齢化と財政赤字の増大による経済リスクと、日本を取り囲む地政学的リスクのために、この「素晴らしい孤立」はうまくいかないかもしれない、と述べている。

 預入限度額引き上げについてWSJA(3/29)社説は、ゆうちょ銀行の役割は国民の預金を国債購入に回すことであり、「この資金はしばしば無駄の多いインフラ公共事業に使われるか、政府の様々な口座に蓄えておかれる」し、この限度額引き上げが実施されれば、国民の資金を民間銀行から国有銀行(郵貯)の安全性のために吸収することになり、「これらの歪みをさらに悪化させることになる」と批判している。
 そして、これは、亀井金融・郵政担当大臣が日本郵政で働く44万人の「有権者」を考えた参議院選挙向けの対策かもしれないが、「ひどい経済政策であり、鳩山首相にとってもひどい政治である。自民党の残した数少ない重要な経済改革のひとつを否定してもよいのかどうか、よく考えるべきである」と述べている。

 人民元安グーグル問題をめぐって中国に対する厳しい見方が米国を中心に続いている。NYT(3/15)のコラムでポール・クルーグマン氏は「中国の人民元安の政策は世界の経済回復にとって、重大なブレーキになっている」と述べ、「中国は2兆4000億ドルに上る外貨準備高を毎月300億ドル超のペースで増やしている。これは主要国がこれまでにとったことのある外国為替政策の中でも最も歪みを起こす政策であり、世界の国々に深刻な打撃を与えるものである」と強く非難している。
 その上で、「中国を怒らせると、中国がドル資産を市場で投げ売りしドル暴落を招くという恐れは誇張である」と主張、米財務省は中国を為替操作国として認定し、人民元切り上げの説得が成功しなければ、1971年に日本やドイツに対して10%の輸入課徴金をかけたように、「同様の措置で中国を実際に脅すべきだ。そうしなければ、中国が政策を変更するかどうか分からない」と述べている。
 FT(3/25)社説は、グーグルの中国本土からの撤退の決定を支持して、「もし中国が(グーグルに対して)軽率な行動を取れば、外国政府は自由なネットワークを支持すべく、これまで以上に一致団結して積極的な意思を示さなければならない。経済的、政治的現実を見れば、中国が譲歩することはあり得ない。しかし、その圧政的な姿勢は、多くのいかがわしい政権がインターネットを攻撃する口実を与える結果となっている。他の国々には外交的、経済的圧力をかけることが、より効果的かもしれない。インターネットに対する規制が世界中で増えるのを食い止めるためには、譲れない一線を今こそ明確に引く時である」と呼び掛けている。
 WP(3/24)でジョン・ポンフレット北京特派員は、グーグルと中国政府との対決は、「20世紀後半の重要な協力関係のひとつである、西欧の資本家と北京の独裁政治制度の結びつきが転機にあることを表している」と、その意味合いについて述べている。
 「西側の企業人によれば、グーグル問題は欧米企業の中国政府への対応が大きく転換したことを浮き彫りにするものだ。欧米企業は公然と抵抗し始めたということである。中国が西欧企業との対決をいとわないのは、目覚しい経済成長の結果によるものだという指摘もある。中国政府はもはや、かつてのように西欧の投資を必要としないし、西欧の技術を獲得したいという欲求についてはますます厚顔無恥になってきている」。
 WP(3/26)でコラムニストのセバスチャン・マラビー氏は、現在の中国の行動の背景には、「20年前の日本のように、中国経済の奇跡的発展が政治の成熟度を上回っている。そして、20年前の日本のように、中国は今、そのアイデンティティー探しをしている」という事情があるので、「この過程で、奇妙な考えが出てきて、通貨やインターネットの自由などをめぐる論争が避けられず、米国では怒りの反応を示す者も出てくる。しかし、西側にとって賢明な選択は、行き着くところまで自己発見の旅を中国にさせることである。中国の台頭は不可避であり、自分たちが誰で、何を望むかを決めるのは中国人である。その時はおそらく、西欧の規範を受け入れることが結局彼らに合うということになるだろう」と述べている。

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