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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’10/4月16日〜’10/5月11日)

 この期間、沖縄の基地問題を巡る迷走ぶりで日米関係をおかしくしている鳩山首相民主党政権について、厳しい論評が幾つも見られた。また、欧州全体を襲ったギリシャ財政危機に関しても多くの論評が見られた。
 
 中でも、WSJA(4/22)でAEI(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所)のマイケル・オースリン日本部長は、「日米関係は『ジャパン・ディッシング(日本蔑視)』とでも呼ぶべき新しい時代に突入した。鳩山政権は、様々な失策や一貫性のある政策を提示できない無能さによって、オバマ政権から非難を買い、ますますないがしろにされている」と厳しく断じている(「ディッシング」には、1980年代の経済摩擦の時の「ジャパン・バッシング(日本たたき)」、90年代の「ジャパン・パッシング(日本外し)」より厳しい、拒絶、切り捨ての意味が込められている)。
 そして、「この状況をもたらしたのは、沖縄の米海兵隊基地移設の2006年日米合意をにしながら、その代替案を示せずにいる鳩山首相自身」であり、「中でもひどいのは、鳩山首相はオバマ大統領に2度も『解決する』と約束して、自らの信頼性を賭けたことである。鳩山首相の信頼はズタズタで、米国の政権内では公然とではないが、彼をますます見放すようになっている」と指摘、「米国との緊密な関係なくしては、日本は今以上に孤立することになるだろう」が、「誰も日米同盟が崩壊することを期待してはいないけれども、もし鳩山首相が状況を改善できなければ、日米関係は優先事項ではなくなって後回しにされてしまうことは明白だ」と懸念を示している。
 FT(4/22)でデビッド・ピリング アジア・エディターも「45年以来の東アジアの安全保障の要石である日米同盟関係が、これほど不安定に見えたことはなかった」と指摘し、「『ワシントン・ポスト』のコラムで『哀れで、(オバマ政権内の一部の意見によれば)ますます現実から遊離しておかしく(loopy)なっている』と書かれた鳩山首相は、普天間問題を5月末までに解決するという約束を繰り返し発言して、さらに自分自身を窮地に追い込んだ。日米間の亀裂を考えれば、それは無謀とも見える」と述べている。
 WSJA(5/10)でキャロリン・レディ米外交評議会・日立国際問題研究員(元米国家安全保障会議不拡散戦略部長)は、普天間問題を巡るこれまでのばかげた対応ぶりから学ぶべき教訓は、「(1)日本は物理的な防衛体制を強化すべき、(2)安全保障政策の強化と日本政府の聖域、すなわち、日本が米国や他の民主主義同盟国の対等なパートナーとなることを妨げている憲法問題の解決をすべき、(3)米国は、日本との安全保障体制が、東アジアの安全保障の基軸となるという素晴らしい構想を実現する見込みがないことをそろそろ認める時」であると言う。そして、同盟国(日本)に「能力と政治意思」がないのであれば、「日本があけた空洞に踏み込んで穴を埋めるため、米国は韓国やオーストラリア、インドといった、この地域の他の民主主義国家への依存を深めることになるだろう」と論じている。
 
 FT(5/11)社説は、5000億ユーロの融資と政府保証(IMF(国際通貨基金)の資金を合わせれば7500億ユーロ)を供与するというギリシャ財政危機に対する緊急救済策について「市場のパニックを収めるのに十分」と述べて、一応の評価をしている。
 しかし、「正常に機能していない証券市場に対応するためEU(欧州連合)各国の国債を買う、というECB(欧州中央銀行)の決定」は「ユーロ圏諸国からの圧力にECBが屈したことになる」と指摘、これによって「経済的・政治的リスクが高まった」と述べている。「経済的危機は明白だ。融資と政府保証により、当面の政府の資金調達リスク(ソブリン・リスク)を回避するだろうが、そう長くは持たない。流動性があるということと支払い能力があるということは同じではない。な国家に時間稼ぎをさせるということは、赤字幅を減らしたり債務を安定化させることにはならない。さらに、この金融安定化策を促したのが市場の暴走だったということは、欧州版『グリーンスパン・プット(中央銀行が何とかしてくれるという期待)』が懸念される。これはモラルハザードを誘発する可能性がある。借り手の政府だけでなく金融部門さえも、根本的な改善をしないまま納税者に頼るということを覚えてしまう恐れがある」と懸念を示している。
 WP(5/11)社説も、「この一時的な猶予に対して欧州が支払わねばならない対価について、誰も幻想を持ってはいけない。リスクの大きな緊急対策の中でも最も危険なのは、ECBが採った新しい政策だ。ECBは欧州政府の最もリスクの大きなクズの国債を、最後の手段として買い上げることに合意したのである」と同様の懸念を示して、「巨額の救済策は欧州の政府に、それぞれの財政を立て直す時間を与えただけである。しかし、これらの政府がそうするという保証はない。EUは、加盟国に財政秩序の約束を守らせるよう、もっと厳しい方法を採択すべきである。それなくしてユーロは生き残れない」と述べている。
  
 WSJA(4/27)の社説は、グーグル問題だけでなく、外資に対する最近の中国の一連の動きは、開放改革をやめようとしているのではないかとさえ思える、として「中国のビジネス環境が今大きな転換点にあるという証拠が増えている。世界的金融危機以来、中国当局は、ある種の外国企業に対して公然と敵意をむき出しにし始めた。多くの外国企業が成功を続ける一方で、中国経済の自由化に後戻りはないという前提は、急速に崩れつつある」と指摘している。
 そして、「説明のひとつとしては、中国の思い上がりである。金融部門の規制緩和を過度に進めた結果、先進国がダメになったのを見た中国の指導者は、自らの経済モデルの方が優れており、外国の助けがなくても発展できると考え始めたのである。しかし、これは真実味に乏しい。国レベルでは中国の抱える問題の大きさは十分に認識されており、経済成長、雇用、技術進歩などに対する外国企業の貢献は高く評価されている」と述べ、さらに、「もっと説得力のある説明は、中国政府が外国の直接投資のペースをスローダウンさせたいと望んでいるのではないか」と言う。
 また、「中国の指導者は、互恵ということになると強硬になる。中国企業が海外の企業を買収する際に直面する問題を見た中国当局は、外国企業に中国企業の買収を自由にさせなくなっている」し、「外国企業社会には、いまや中国はプーチン大統領下のロシア経済のように、ある種のクローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)に向かいつつあるという見方が広がっている」と指摘して、「これらの状況を放置すれば、長期的には中国に悪い結果をもたらす。中国政府が改革の継続に対する信頼を回復するために意思を示さなければ、その代償を支払うのは中国自身なのである」と述べている。 

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