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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’10/6月11日〜’10/7月15日)

 7月11日の参院選の結果について、日本に特派員を置く英米の各紙誌は11日の夜からウェブサイトに記事を掲載し、12日付け紙誌面で大きく報じた。特にWSJAFT(アジア版)は一面トップで報じた。また、WSJAFTは、社説でも参院選の結果を論じている。
 それらの記事の主な論点は、(1)選挙結果は、国民の期待に応えられず公約を実現できないお粗末な民主党の政権運営に対する有権者の失望を示したもの、(2)日本の政治は、強いリーダーのいない、新たな不安定の時代に入る、(3)財政再建や景気回復、官僚支配からの転換、米軍普天間基地移設問題など、重要政策課題の遂行が困難になる、などである。 
 
 WSJA(7/12)でユカ・ハヤシ記者は、「参院選の結果は、日本の政治に新たな不安定な時代が到来したことを告げているようだ。菅首相にとっては、日本がギリシャのようにならないための膨大な公的債務の削減や、米軍普天間基地移設問題に関する米国との合意の実施など、重要政策課題を前進させることが難しくなる」と報じた。「選挙結果は多くの点で、昨年夏には大きな期待を抱いて民主党を選んだ日本の有権者の幻滅を表明したものといえる。民主党も結局は、長い間政権を握ってきた自民党とそれほど変わりはなく、優柔不断でスキャンダルにまみれ、それに加えて経験不足というハンディも抱えていた」。
 社説でも、「敗北の原因は民主党自身にある。昨年8月に有権者は、腐敗と無駄な支出をなくすため民主党を大勝させた。その後の9カ月間に、鳩山前首相は過去最大の予算を編成し、最も重要な同盟国である米国との関係を悪化させるとともに、陰の実力者である小沢一郎氏には献金スキャンダルが表面化した」と指摘して、次のように論じている。
 「菅首相は膨れ上がる日本の債務に警鐘を鳴らし、財政再建の必要性を強調するとともに、先進国の中で最も高い法人税率を引き下げて投資を誘致することも提案した。これまでの日本の政治を考えれば、これは革命的ともいえるアイデアと思われた。菅首相がそこでストップしていたなら、民主党は参院選でも過半数を維持、もしくは議席を伸ばすことができたかもしれない。しかし菅首相は今回の選挙を、消費税増税に対する国民投票にしてしまった」。
 「今後、民主党は参議院での連立を見直し、少数政党は影響力を得ようとして、日本の政治は恐らく内省の時期に入るだろう。それは必ずしも悪いことではないかもしれない。民主党は、経済再生という当初の公約に立ち返り、例えば、“減税”と“小さな政府”を中心とした改革案を提唱する、みんなの党に協力を呼び掛けるのがよいだろう」。
 
 FT(7/12)ミュア・ディッキ東京支局長は、「民主党の敗北は、財政再建への取り組みを遅らせ、民主党の改革意欲を失速させる恐れがある」と報じた。「投票結果は、自民党支持というよりも、民主党と、菅首相の消費税に関するブレへの失望を反映したものだ」という専門家の分析を引用している。「明らかな勝者は、みんなの党で、キャスティング・ボートをほぼ握った。それを使って、公務員制度の改革や広範な政界再編を進めたいと考えている」と述べている。
 FT(7/13)社説は、「菅首相は敗北のすべての責任を負う必要はない。前任者の失態も引き継いでいるからである。鳩山氏は優柔不断で軽率な発言をし、決断力のなさは普天間基地移設問題に象徴される」としながらも、「菅首相の選挙運動もうまかったわけではない。消費税に関して軽々しく口にしたことで、同罪なのだ」と述べている。「昨年の総選挙での民主党の勝利は、官僚依存を排した、より開かれた政治体制を期待させた。(しかし)今回の敗北で、こうした希望は破られ、日本がお定まりの無気力な政治へと逆戻りしてしまう可能性が出てきた」と指摘している。
 
 NYT(7/12)マーティン・ファクラー東京支局長は、「(民主党の敗北は)日本の硬直化した戦後秩序の改革、という約束を民主党が実行できないことに対する有権者の失望を示した」と述べ、「日本経済の長期停滞を終わらせる能力が民主党にあるかどうかという疑問が、国民の間にますます大きくなっていることを示すものである」という専門家の見方も引用している。「この参院選挙は、昨年の総選挙で自民党を破り歴史的勝利を収めた民主党の9カ月に対する国民投票だと広く見られていた。民主党が参議院の過半数を獲得することができなかったことで、ねじれ国会となり、社会福祉の強化や官僚支配に対する政治主導の強化といった民主党の公約の実現はますます難しくなった」と述べている。
 
 WP(7/12)チコ・ハーラン特派員も、選挙結果は「民主党政権に対する不満を示すと同時に、経済が難局にある時期に民主党に強力な信任を与えなかった」と述べている。「過去4年間に5人代わった首相の誰もが、経済停滞と厄介な国家債務に正面から立ち向かう力も意思も持たなかった。今回の選挙結果は、専門家によれば、弱々しい政権が続く可能性を示すものである」と悲観的な見方を示している。
 
 LAT(7/12)でジョン・グリオナとユリコ・ナガノ両記者は、「選挙結果は世界第2の経済大国の巨額の政府債務や、沖縄における駐留米軍をめぐる対立に代表される外交の機能不全など、国家的課題に対処する能力を低下させる」と報じた。
  
 エコノミスト(7/12)電子版は、参院選挙の結果、「菅首相就任後6週間足らずで、また新たなリーダーシップの危機の可能性が劇的に高まった。菅氏は4年間で6人目の首相であるが、さらなる政治停滞が予想される。ただひとつ、救いは、有権者は他の政党に投票することで、健全な経済運営と高い経済成長を求める強いメッセージを送ったように見受けられるということだ」と述べている。
 その上で、「経済を立て直すことを日本の最優先課題としているみんなの党が、日本の政治での新しい勢力として浮上した。興味深いことは、渡辺代表は選挙当日の夜、最初にやるべきことのひとつは、日銀を改革しデフレを終わらせることであると述べた。詳細は分からないが、日銀が日本の経済問題にかなりの責任があると考える者にとっては、これは手始めとしてよいものになるだろう」という。
 そして、「恐らく最も重要なメッセージは、有権者は、自分のしていることが分かっている指導者がほしいのだ、ということだ。残念ながら、そのような指導者は日本には不足している。鳩山前首相が普天間問題でブレてばかりで先月の辞任に追い込まれたように、菅首相は、消費税引き上げを議論するという約束をめぐって混乱してブレたのである」と日本の危機的な指導者不足を指摘する。

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