経済広報センタートップページ調査報告 > 英米主要16紙の論調分析

調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’10/7月16日〜’10/8月6日)
 世界から見た日本の存在感は、ますます薄れているように見える。経済でも外交でも何も手を打てない日本は、米国から、世界から、ますます重要でなくなっていると思われている、と多くの日本人は心配する。
 これについて、WP (7/28)「米国の最も重要なアジアの同盟国、日本はどこに向かうか分からないように見える。しかし、心配すべき時ではない」と題した社説で、「(民主党政権下の混乱・ 迷走ぶりや、公約からの後退などから)日本の抱える問題は、この国の政治の力量にとって大き過ぎるのではないかという疑問を、多くの日本人や外国にいる日本の友人に抱かせている。そのような悲観的な見方は理解できるが、そう考えるのは間違っているか、あるいは少なくとも早計である。日本は依然として豊かで生産性が高く、社会が安定している世界第2の経済大国である。この国の政治の不安定さは、結局のところ、大きな難問をめぐる健全な議論が続いていることの反映である。つまり、人類がかつて直面したことのない問題、すなわち出生率の低下と長寿による高齢化の中で、いかにして経済的繁栄を維持するかという問題を反映している」と論じている。
 だから、「米国にとっての難問は、中国の台頭という脅威の下で、日米関係をどううまく管理するかということである。この1年を通して日米関係を悩ませてきた沖縄の米軍基地再編問題が、将来また再燃しそうなことは心配だが、結局、多くの日本国民が、日米同盟の重要性を再確認することになった点は重要だ。日米同盟関係が今後、つまずくことがあるにしても米国民はこのことを忘れないでおくべきだ」という。
 WSJA(7/22)でAEI(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所)のマイケル・オースリン日本部長は、「自らの存在意義に頭を悩ますドイツと日本」と題する論評の中で、自国の存在感や影響力の低下を心配するのは日本だけでなくドイツ(およびEU(欧州連合))でも共通の問題なのだという。「(ドイツのある国会議員は)EUおよびドイツ自体の世界的な影響力が低下していることや、その結果、米国に見捨てられるのではないかということを心配している。これは、欧州とアジアの多くの米同盟国に共通の懸念だ。日本を訪れた人は、まったく同じ理由による、まったく同様の懸念をよく耳にする」。
 そして、「日本は今、米国の最も強力な同盟国として認めてもらうどころか、米軍普天間基地の移設条件をめぐって揺るぎかけた日米関係を何とか修復しようと必死だ。日本もドイツも第二次世界大戦の際に行った侵略行為への反省から、平和主義を根強く掲げており、それが安全保障政策のあらゆる面に常に影響している」と述べている。
 一方で中国が、その自信と主張を強めた行動で、米国やアジアの近隣諸国と摩擦を起こしていることについて、FT(8/4)社説は次のように警告している。
 「南シナ海で中国が軍事演習に3艦隊を送り込んで大規模な武力の誇示を行い、テレビで放映した。これは、中国が地域的な戦力を投射する能力と意思を高めていることを示すものだ」。
 「中国は問題の海域からベトナムの漁船団を追い出したり、国際的な石油会社に圧力をかけて近隣国との海底油田開発を断念させようとしている。中国国防相は、中国の南シナ海に対する『議論の余地のない統治権』を繰り返し主張し、米国がこの問題を『国際化』しようとすることに反対している。中国政府は今、南シナ海を『核心的利益』の一環と位置づけており、歩み寄りは困難だ。南シナ海における海軍軍備競争の脅威は、ますます現実味を帯びてきている。中国も外交努力をする必要があり、『力は正義なり』よりも重要なことがあることを示すべきだ」。
 
  ギリシャ財政危機以来、特に、財政赤字を出しても景気刺激策を続けるべきか、歳出を削減して財政再建に重点を置くべきか、議論が活発になっている。そんな中、CBO(米議会予算局)より、2011会計年度も1兆4000億ドル台と改善しない米財政赤字の見通しが発表されて、米財政政策をめぐる論戦が起きている。
 WP(7/31)社説は、「CBOによれば、2020年までに連邦債務のGDP(国内総生産)比率は90%近くにまでなり、2035年には180%に達する。多額の政府借り入れは、民間投資をクラウド・アウト(押し退ける)することになる。金利の高騰によって増税か歳出削減が必要となるだろう。戦争や景気後退のような出来事に対応する政府の柔軟性は制約される。そして、財政危機のリスクが出てくる」と指摘している。
 さらに「財政不均衡の問題に取り組むのが遅ければ遅いほど、その対策は厳しいものにならざるを得ない。今後25年間、債務のGDP比率を安定的に維持するためには、今すぐに恒久的増税か、GDPの5%程度の歳出削減が必要となる」として赤字削減を急ぐべきだと主張している。
 FT(7/31)社説も、「昨年の景気対策が、ある程度の効果があったことに誰も強い異議を唱えないだろう」が、「財政赤字により景気浮揚があったとしても赤字削減は必要だ」として、「景気後退の影響を軽減するように税制と財政支出を選択し、構造的な赤字の削減をすることが重要である。“ブッシュ減税”を継続することは、米経済、国家の財政にとっても、失業保険の給付期間の延長よりもよくないことだ」と論じている。
 WP(7/26)でコラムニストのロバート・サムエルソン氏が、「米国企業の利益が急速に回復しているのに雇用が増えないのはなぜなのか」を考察している。
 「経営者の報酬の比重がストック・オプションに移ったことにより、経営者は景気後退時にはコスト削減に熱心になり、景気回復の初期には雇用増に慎重になる。従業員数を減らすことが企業の利益を回復させ、株価を回復させる最も手っ取り早い方法だから。(それに)労働組合の弱体化と、輸入や移民による競争、それによる労働者のバーゲニングパワー(交渉力)の弱体化が」加わって、「『ジョブレス・リカバリー(雇用なき回復)』が今日の標準となった」というエコノミストの説明を紹介している。
 しかし、「企業はコスト削減を続けることによって、持続的な利益の成長につなげることはできない。最終的には、投資と雇用を必要とする利益の成長をつくり出す必要がある」という別のエコノミストの説明を引用して、「利益を最大化するために経費を削減するとか、将来の金融危機に備えてキャッシュを貯め込むとか、販売が改善するまで採用をしない、といったことが、万一多くの企業で採用されたら、強力になるはずの景気回復を損なう可能性がある。もし、労働者が怯え、資本が過剰に慎重になれば、経済は間違いなく打撃を受ける」と警告する。
 これは米国だけの話ではない。

pagetop