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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’10/8月7日〜’10/9月8日)

 この期間、9月14日の民主党代表選を前に、事実上の日本の次期首相選びをめぐって、菅首相の続投か小沢前幹事長かについて多くの記事で取り上げられ、社説でも論じられた。また日本が世界第2の経済大国の座を中国に譲ったニュースは、日本の経済や政策の何が悪いのかという視点から多く取り上げられた。
 
 「民主党は小沢氏を首相に選ぶべきではない」の見出しを掲げたFT(8/30)社説は、他紙に先駆けて、「小沢氏は、首尾一貫しない外交姿勢以上に、内政に関するこれまでの実績から、首相にふさわしくない」と断じている。
 同社説は、「小沢氏は、安全保障を米国にゆだねる戦後の遺産を捨て、日本が『普通の国』になることを最初に提案した一人だ。シーファー前駐日米国大使は、野党の民主党が海上自衛隊のインド洋での給油活動に反対していた時、当時の民主党代表の小沢氏との会談すら拒否された。小沢氏はまた、中国の一党支配体制を露骨に軽蔑する一方で、中国との関係強化を図っている」と述べている。
 そして、「民主党が小沢氏を党代表にし首相にすれば、日本に新しい政治をもたらすという公約に背くことになろう。その結果、民主党が政権を失うことにつながれば、責任を取らなければならないのは民主党自身なのである」と警告している。
 エコノミスト(9/4号)社説も同様に、厳しい言葉を使って、小沢氏が党代表・首相になることに反対を打ち出した。
 「小沢一郎は、だてに『壊し屋』と言われているわけではない。彼は政界の密室で策略を練って過ごしてきた経歴の中で、他党と連立を組んでは壊し、政権を倒し、透明性などの民主主義の規範を、欧米的な見せ掛けだと軽蔑してきた。しかし、彼の今回の動きは最も邪悪なものである。民主党代表選で菅首相に挑戦することで、小沢氏は12カ月で3つ目の政権を倒すことになるかもしれない。なお悪いことに、昨年、55年間に及ぶ自民党一党支配を終わらせた時に有権者が民主党に託した信頼が、いくらかでも残っているとすれば、それも小沢氏は壊しかねない。党の今後は言うまでもなく、日本の民主主義のために、民主党は、小沢氏と彼が象徴する全てのものを拒否しなければならない」。
 NYT(9/6)社説は、「日本に必要なのは、健全で信念のある指導力を一定期間発揮でき、世界を不況から脱却させ得る経済政策に国民の支持を取り付け、米国と強い同盟関係を維持できる首相である」として、次のように論じている。
 「どちらが勝っても、最優先すべきは経済対策でなければならない。GDP(国内総生産)比200%に近づく公的債務残高とGDP比10%前後の財政赤字に制約されても、日本は緊急事態に対応し、輸出依存度を減らすため、内需を刺激する対策をもっと講じなければならない。そのためには財政刺激策の継続が求められる。個人消費を促す長期戦略も必要だ」。
 「米国との関係強化も重要だ。菅氏は、長らく議論されてきた沖縄の米軍基地移設計画に前向きに取り組むことを約束している。小沢氏は再交渉を望んでいる。しかし、小沢氏は非現実的な状況を考え直す必要がある。代替案がないことを自身で認めており、米国が絶対に邪魔するだろうからだ。『米国人は“単細胞”だ』という8月の小沢氏の発言は、新しい友人をつくるのに最良の方法ではない」。
 WSJA(9/7)社説は、「日本の民主党が再びよろめきながら、いわば『偶発的な政治革命』に向かって進んでいる。半世紀にわたる政権の座から自民党を追い出し、日本を揺り動かした民主党が今、一生懸命に政策アイデアのコンテストをやっている。民主党代表選のおかげだ。これは、過去何十年間にもわたり、政策よりも舞台裏の政治家の裏取引や人間関係、利権に左右されてきた日本の政治にとって、決して小さな一歩ではない」と述べて、小沢氏の代表選出馬によってもたらされた“政策論争効果”を評価している。
 その上で、両候補の経済・外交政策アイデアの一長一短を指摘しながら、「いずれにも欠落しているのが、日本を経済的な不振から脱却させるための成長促進政策だ。日本は、菅氏が言うような緊縮だけのための財政緊縮を必要としているのではないし、小沢氏が言うような『適切に配分』されたインフラ投資を必要としているのでもない」として、起業家精神を奨励するような、自由な経済環境づくり、規制緩和や構造改革の必要を訴えている。
 FT(9/2)のデビッド・ピリング アジア・エディターは、コラムの中で、短期間で目まぐるしく首相が入れ替わる日本の政治を批判して、それがいかに日本の国際的立場を傷つけているかを説いている。
 「政治の混乱は、国際社会での日本のイメージを傷つけている。日本の指導者は、世界の舞台で無名の連中の仲間に入ってしまった。ブラジルのルラ大統領は、日本の前首相の名前を思い出せなかった。絶え間ない首相の交代は同盟国さえも苛立たせている。米政権は沖縄の米軍基地移設について、新しい首相が就任するたびに、振り出しに戻って交渉しなければならない。このような状態がもう10年以上続いている」。
  
 日本がGDPで中国に追い抜かれて世界第3位に落ちたことについて、WSJ(8/17)は「ジャパン・アズ・ナンバースリー」と題する社説で、「明らかな教訓は、国家の豊かさは生まれながらの権利ではないということだ。国民の才能を解き放つ健全な経済政策を通じて、国家は毎年、繁栄を重ねていく。(改革開放政策によって)中国は格段に企業家精神に富んだ国になった。一方で、日本は反対の方向に動いている。バブルが崩壊した1990年、世界的に最も長期にわたり、最も高コストのケインズ主義政策に日本は乗り出した。この政策は、日本の債務残高をGDPのほぼ200%に押し上げたが、成長にはほとんど貢献していない。日本は郵便貯金制度の改革にも失敗している」と指摘。さらに、人口の高齢化が進む日本では、「単に政策のみならず、国家の意思にも(中国のそれと)開きがある」として、「日本の政治システムは、持続的な成長を目指す経済政策に回帰する能力がないようだ」と述べている。
 エコノミスト(8/21号)は、「ほんの20年前には世界一を目指していた日本にとって、3位への転落は憂鬱な節目となる。しかも、それだけでは済まないかもしれない。日本が長い停滞に陥った原因である日本的資本主義の特徴の多くは、今も生き続けている。現在は、年間1%経済が成長すれば幸運という状況だ。日本はコーポレート・ガバナンスや金融自由化、規制緩和といった面でかなりの改革を実行したものの、十分というにはほど遠い。劇的な変化が起きなければ、3度目の『失われた10年』に苦しむことになりかねない」と警告している。

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