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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’10/10月15日〜’10/11月11日)

 11月11~12日開催のソウルでのG20首脳会議を前に、この期間、ドルと人民元をめぐる「米中通貨戦争」が激しさを増す中、米FRB(連邦準備制度理事会)の量的緩和追加策(QE2と呼ばれている)や、経済主要国が経常収支を一定範囲に制限して世界の不均衡を是正しようとするガイトナー米財務長官の提案に関する論評が、英米の主要メディアで数多く見られた。
 
 NYT(10/16)社説は、「FRBのさらなる介入によって、中国に人民元安と他国の輸出への圧迫をやめさせることができれば、結局は世界経済をよくすることができる」と述べて、予想されるFRBの量的緩和追加策(11月3日実施決定)を支持し、「ユーロ圏と日本は、FRBを見習い、自国の経済にさらに多くの資金を注入し、通貨価値を下げるべきだ。そうすることで、中国に対して人民元を上がるに任せるよう圧力を加えることになる。もし日本とユーロ圏がFRBと調整して行動すれば、ドル、ユーロ、円の間の急激な変動は避けられる」と提案している。そして、中国に、人民元高を容認するように求めている。
 さらにNYT(11/9)社説も、量的緩和追加措置についてドイツなどG20の多くの国から批判があるけれども、「FRBの措置は、米経済を刺激しデフレを回避しようとするもので、大いに必要な対策である。米国の景気低迷が長引き、さらに悪化すれば、世界的な需要と経済成長の主な源のひとつが失われることになる」として、量的緩和追加策を強く支持している。そして、「G20は、FRBを批判するよりも、これを補完するような政策の立案に集中すべきだ」し、「中国はこの機会に対ドル人民元高を許容し、自国の消費に重点を置くように政策を方向転換すべきである」と述べている。この主張はNYTの社説で一貫している。
 エコノミスト(10/16号)社説は、「確かに人民元は安過ぎる。安い人民元は西側諸国だけでなく他の新興国(特に変動相場制を採っている国)に損害を与えているし、内需からさらなる成長を引き出す必要がある中国自身にとっても良いことではない」としながらも、「中国に対して、(米国債の購入を許さないといった)報復的な資本規制や貿易制裁を通じて厳しい態度を取る」ことによって、人民元に対する中国の強硬な姿勢を変えさせようという米国内の主張については、「そのような脅しは、効果のないブラフであるか、あるいは危険な挑発のように見える。貿易の最後を突き付けられたなら、米中の『G2』という考えに思い上がった中国政府は、同じように米国に報復した方が政治的に安上がりだと判断するかもしれない。貿易戦争はそのようにして始まるのである」と述べて、「通貨戦争」を「貿易戦争」にしてはならないと警告している。
 
 ガイトナー財務長官の提案についてFT(10/23)社説は、「議論を経常収支へ向けるのは理にかなっている。経常収支が世界の不均衡の核心だからだ。為替レートはそれに影響を与える単なる道具にすぎず、しかもたったひとつしかない道具というわけでもない」として、「この提案は経済的に健全であり、政治的にもいい結果を生む可能性がある」と支持している。そして「最良の場合、中国に対して(圧力をかけて)人民元で具体的に譲歩させるのではなく、例えばインフレ率を上がるに任せ、家計支出力を引き上げるなど、自分たちに合ったやり方で収支の不均衡是正を働き掛けることになる。しかしもちろん、ガイトナー長官が明らかにしているように、為替レートの調整も必要である」と述べている。
 NYT(10/30)社説も、「新しい提案は打開策になり得るかもしれない。中国政府への圧力を強めようとしてきたオバマ政権が、世界中の経済大国に、貿易不均衡是正のための数値目標に同意するよう求めている」と指摘し、「(これは)中国にとっては国内支出を拡大し、人民の生活を向上させ外国との不均衡を減らすという、人民元切り上げ以外の手段があることを認めるものである。中国は賃金を引き上げるとともに、医療・教育・年金といった社会保障費に膨大な蓄えを充てることもできる」と希望的に述べている。
 しかし、「中国の経常収支黒字に焦点が移ったからといって、中国の通貨操作が問題にならなくなったわけではない。目標達成のため、中国は人民元高を許容し、輸入品を増やし、輸出の伸びを抑えなければならない」と指摘し、また、「中国の黒字が減るからといって、米国の経常収支赤字がなくなるということにはならない。それには、米国は所得をもっと貯蓄へ回すことが必要である」とも戒めている。
 これに対して、WSJ(10/25)社説は、「G20財務相・中央銀行総裁会議に出席した財務相らは『通貨安競争』に抗するために結束することを宣言した。同時に、財務相らは事実上、ドル安の継続を容認し、中国などの国の通貨は上昇が必要とした。米国の貿易赤字を削減するために世界をドルで溢れさせることは『通貨安競争』とは見なされないようだ」と皮肉っている。
 そして、「中国などのドル・ペッグ制を導入している黒字国が敗北を認めて通貨を再評価するまで、米国はドルを刷り続けるようだ。欧州やその他の変動相場制を導入している国はFRBの金融緩和に追随するか、自国通貨高を受け入れるかを選択せねばならないだろう。これは通貨市場の混乱を減らすのではなく、増やすためのレシピだ」として、FRBの量的緩和追加策を批判し、「ガイトナー財務長官の『不均衡是正』重視は見当違いも甚だしい。世界経済の真の問題は、先進国の大半、とりわけ米国が世界経済の成長に十分貢献していないことだ。これを解決するのは、より多くの雇用を創出し、より多くの資本を引き付ける米国の成長政策だ」と論じている。さらに「米国の主要な成長政策がドル安であると世界が信じる限り、世界は米国の話に耳を傾けようとはしないだろう」と警告する。
 WSJ(11/11)社説でも再び、「オバマ大統領とガイトナー財務長官のグローバルな『不均衡』に対する見解は一理あるものの、彼らは問題を誤ってとらえている。自国の貿易黒字および赤字に関する意見――それらをGDP(国内総生産)比4%以下に抑えるというガイトナー長官の提案――は有効というより、問題の核心から離れている」と批判。その上で、G20ではそのような数値目標よりも貿易の自由化を話し合うべきだとして、「G20で貿易の議題を推し進めることは、通貨協議を放棄することではなく、通貨問題を正しい文脈でとらえ直すことになる。危険なのは、オバマ大統領や各国首脳が人民元切り上げなどの通貨問題を優先させ、為替市場をさらなる混乱に陥れ、モノとカネの効率的な配分を困難にすることで、真の世界経済のリバランスを妨げることだ。急激なドル安は、米輸出に対する保護主義を強めかねない」と述べている。 

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