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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’10/12月10日〜’11/1月10日)
 この期間、ますます閉塞感が強まる日本の政治状況と菅首相の年頭記者会見での消費税増税提案や2011年度予算案に触れてWSJAFTが対立する見方を示している。また、民主党政権下で初めてまとめられた「防衛計画の大綱」について、軍事力増強と国際社会で自己主張を強める中国の行動に対する世界の懸念を背景に、主要紙が論評している。その流れの中で、前原外相訪米時における日米同盟関係修復へのメッセージは歓迎されたようだ。
 
 WSJA(1/5)社説は、菅首相と小沢元党代表の党内抗争を批判した上で、「(首相が)年頭に持ち出した消費税増税は、昨年の参院選で敗北を喫した要因であり、景気の足を引っ張ることが確実な評判の悪い政策である」と、この時期の増税に反対している。
 その上で、やるべきことは社会保障などの給付金の削減による財政健全化だとして、誰が首相になっても、「嫌な結果に直面する前に問題に取り組まなくてはならない。成長促進に向けた減税や、社会保障費、農業補助金の削減をしなければ、日本はこのままギリシャと同じ道を進むだろう」と警告している。
 そして、「菅首相あるいはその後任が議員を説得して、各種給付金を持続可能な軌道に乗せることができなければ、税金は収奪同然の水準まで増加し、日本全体がさらに壊滅的な損失に見舞われることは必至だ。そうなれば、菅首相の望む消費税増税が、タイタニック号船上でのデッキチェアの並べ替えに過ぎないことが分かるだろう」と述べている。
 一方、FT(1/6)社説は、「菅首相が税制改革を推進し続けていることは、称賛に値する。税の引き上げによって日本の弱々しい景気回復が損なわれるべきではないが、財政改革によって国家財政を確実な基盤に乗せることが急を要するのは明らかである」と、菅首相の税制改革の考えを支持している。
 さらに、「国家は税収以上の借り入れによって国の経費を永遠に賄っていくことはできないが、それが日本の今の状態なのである」と指摘した上で、「もし菅首相が与党内の反対を押し切り、野党が国益のために妥協案を模索することに合意したならば、首相のリーダーシップによって政治家に対する有権者の不信感は弱まるかもしれない」という。
 「日本には、まだ増税できる余地があるが、菅首相らは、(経済への)被害を最小限にとどめるような税の変更を探らなければならない。財産や貯蓄に対する税金を検討すべきである。なぜなら、政府は大きな借金を抱えているが、家計や企業はそうではない。これは政治的には困難なことかもしれないが、日本の民間の財産は豊かな税基盤である。そこに税をかけることは、貯蓄を減らし消費を増やすことになるかもしれない。それこそ日本が必要としていることだ」と論じている。
 
 「防衛計画の大綱」(新防衛大綱)について、WSJA(12/24)でAEI(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所)のマイケル・オースリン日本部長は、「久しく待望されていた新防衛大綱が12月18日に発表され、日本もようやくポスト冷戦時代に入った。日本政府は、日本の国益に脅威をもたらす可能性の最も高い国が中国であることを認識し、それに沿って戦略の焦点をシフトさせた。日本政府は、中国の海軍・空軍増強に対抗する上で最も重要な兵器システムをささやかに増強させる意向も示唆している」として歓迎している。
 さらに、新防衛大綱での「最も重要な変更点は、新たな防衛戦略の導入だ……新しいアプローチは、地域環境を形づくるための『動的防衛力』の構築を求め、米国との一層緊密な協力・連携、海外における防衛活動の活発化、ほかのアジア諸国との協力強化を提案している」と評価しながら、同時に、「防衛予算や自衛隊の人員を削減しながら、どのように防衛活動を拡大させるのかは、まさに、安全保障問題に関して民主党がどれほど信頼できるかの試金石となる」と懐疑的に述べている。
 そして、「いろいろな意味で、新防衛大綱の成否は、米国との同盟関係の維持にかかっている。自衛隊と同様、米国の海空軍も、将来的な予算の緊縮と人員装備需要の増大に直面している……米政府は今後、防衛負担の多くを同盟諸国にこれまで以上に分担してもらう必要がある。この点を認識して、日本の民主党は、米国と一層緊密に協力する意向を再確認している。今後、日米は、アジアの海の平和を維持するための具体的な兵力、計画、政策を打ち出す必要がある。日米が防衛面での確実性を維持するなら、中国が高圧的な姿勢ではなく建設的な対話のメリットを認識する見込みも高まるだろう」とオースリン氏は言う。
 FT(12/15)社説は、「日本が戦略的現実に対応しようとすることは間違っていない。ソ連は消滅したものの、中国が急速に軍備を近代化しており、北朝鮮のミサイルと核計画は増大する脅威を表している」と述べて、新防衛大綱を慎重ながら支持している。
 また、「自衛隊の配置転換はアジアにおいては物議を醸すだろう。アジアの広範囲にわたる戦略地図を変えてしまうからである。日本の新しい部隊編成は、これまでと比べて、中国と北朝鮮に端を発するアジアの安保問題に対処するために米国が考える日・韓・米『三国同盟』構想に、よりよく合致する。これは日本の『専守防衛』の政策を超える可能性を示す」と同社説は指摘する。さらに、「中国はこの転換を好ましく思わないだろうが、中国自身にも責任がある……中国の強硬姿勢は、特に中国との間に領土問題を抱える近隣の小国をおびえさせてきた。日本の新しい防衛政策はそういった国に安心感を与える。しかし、日本政府は慎重に行動しなければならない。アジアでの過去の過ちについて敏感な問題を抱えているからだ。防衛政策の転換を進める一方で、日本は、中国とアジアとの友好関係を求める姿勢を見せるべきである」と説いている。
 訪米を機に前原外相にインタビューしたWPのフレッド・ハイアット論説面担当エディターはWP(1/10)で、「(前原外相訪米中に)米国政府関係者が最も注目したことは、前原氏が日米同盟を重視するとともに、民主主義と自由貿易という価値観の共有を重視したことである」と指摘して、前原外相の日米同盟関係修復への積極姿勢に対するワシントンの好意的な受け止め方を示している。
 そして、「中国に対する日米共通の幻滅」が最近の日米関係修復への動きに大きく働いたのだとしながらも、「オバマ政権は過去2年間、中国やロシアのような独裁国家がいかに予測不可能なパートナーでしかないかを見てきた。今、民主主義国の同盟国日本が、アジアにおける『平和と安定の礎』としての『揺るぎない日米同盟関係』を呼び掛けているのである。なかなか結構な取引ではないか」と述べている。  
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