経済広報センタートップページ調査報告 > 英米主要16紙の論調分析

調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/1月11日〜’11/2月9日)
 この期間、中国の胡錦濤国家主席の5年ぶりの米国公式訪問・オバマ大統領との首脳会談について、米英の主要紙誌が社説などで論評している。経済力に自信を深め、国際経済、安全保障の分野で自己主張を強める中国の行動に対して米国の評価が厳しくなる中での胡主席の訪米は、主要紙誌の間で評価が分かれた。このほか、「第三の開国」をうたう菅首相のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を含む経済成長戦略、財政・税制一体改革の提案についてエコノミストが評価する社説を掲げている。エジプトの民主化要求の動きについては多くの論評が見られたが、ムバラク大統領の即時退陣を求める意見がほとんどである。(ムバラク大統領は、この期間の後、2月11日に辞任した)
 
 WP(1/22)社説は、胡主席の訪米は「米国民の間に広がる不安、つまり、中国によって米国は経済的に言いなりにさせられ、身動きできなくなっているという不安を鎮めるまでには至らなかった」と否定的な評価を述べている。
 「中国は、その経済が離陸(テイクオフ)したので、重商主義的政策を押し付けるのに熱心なように思われ、第2次世界大戦後に米国やその同盟国が築いてきた国際法の規範をまだ受け入れようとはしない」と、そのやり方を批判している。そして、その例として、「①通貨の過小評価に固執、②米国の知的財産の組織的盗用を阻止することを拒否、ないし実行不能、③政府調達における米企業の差別、④レアアースの独占的立場を利用した日本への懲罰、などがある」と指摘、「中国のこのような不公正な行為には抵抗すべきである」と論じている。
 WP(1/24)で経済コラムニストのロバート・サムエルソンも、「外から見る限り、先週の胡主席のワシントン訪問は、一方的な米中関係をほとんど何も変えなかった。(一方的な関係)とは、米国の雇用や技術、金融パワーを組織的に中国に移転し、その見返りに、中国は、イランおよび北朝鮮の核兵器開発計画の阻止に、形ばかりの支持をするというものである」と指摘している。
 「米国と中国には平和と繁栄に対する大きな共通の利益がある……しかし、目指すものは大きく異なる。米国は、相互に有利な貿易に基づいた戦後の国際秩序を拡大したいと考えている。一方中国は、新しいグローバル秩序を追求するそれは、中国の必要性を優先する秩序であり、輸出に補助金を付け、必要不可欠な輸入品(石油、食糧、鉱物資源)を統制し、先進技術の移転を強制する秩序である」と述べ、そのような中国に、米国はこれまでの、ほとんどアメばかりの対応でなく、ムチでもって対応すべきだと論じている。そして、今回の米中首脳会談を「ほとんどが意味のない“協力”の約束を交わした」と批判している。
 AEI(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所)のマイケル・オースリン日本部長は、WSJ(1/22)電子版で胡主席の訪米の結果、「米政府は米中関係をつくり直すチャンスを得たただし、望もうと望むまいと米国は中国と競合関係にあるのだと腹をくくる度胸を、オバマ大統領と周囲の政策担当者が持っていることが前提だ」と論じている。
 そして、増大する経済力と軍事力を背景に自国の利益を強硬に主張する中国に対抗するには、経済では、「オバマ政権はアジア、そして世界で自由貿易協定を積極的に追求し、TPPを加速させ、他国と米国の貿易・投資関係を強化」し、安全保障・戦略面では、「防衛のバランスをワシントンに有利なように変える」ため、防衛力の強化をする上で、「同盟国と共に、引き続きインド・太平洋地域広範で防衛バランスの条件を整え、また、安定維持や共通した基準の推進における優位は今後も衰えないことを明確に示す必要がある」と述べている。
 一方、FT(1/22)社説は、「中国が影響力を伸ばし、米国の基盤が以前ほど強くなくなっている中で、現在進行中のグローバルな調整が順調に進むことは皆の利益になる。この調整過程を損なうような機会がないことは喜ばしい。その基準からすると、胡主席の訪米は、この上もなくうまくいった」と前向きの評価をしている。
 さらに、「安全保障問題に関しては、オバマ大統領が太平洋における米軍のプレゼンスの重要性を主張したことは結構なことである。中国国民の人権を尊重する必要性についても率直に述べた。胡主席は、このような問題に対する中国国内でのいつものとげとげしい態度をとらずに、『人権の普遍性』を認めた。ただのジェスチャーではあるが、これは心強い米国との二国間関係と同じくらい重要なことは、中国がその台頭を、国内および世界でどのようにうまく扱うかである」と述べている。
 その上で、「中国は、その国力の増大に伴って、責任も大きくなることが分かるだろう……中国は経済的にだけでなく政治的にも世界と関係を深めなければならないことを自覚していることを示している」が、「中国が西欧諸国によって作られたルールに則ってグローバル・パワーのゲームに参加するのか、そのルールを中国の好みに合わせて変えようとするのかに、多くのことがかかっていくことになる」と今後の方向性については慎重に論じている。
 NYT(1/21)社説も、「長い間非協力的であった中国が突然、北朝鮮問題や経済、その他の難しい問題に関して協力を明言するようになった」と指摘。その変化は、「中国の強硬姿勢がほとんどすべての国を遠ざけたことを、中国の指導者たちがついに理解した(からかもしれない)。また、オバマ政権の最近の強気な発言が、今週の胡主席に対する華やかな歓迎と相まって、米国との関係を悪化させることのデメリットと、米国とうまくやっていくことのメリットを思い知らせるものだった」からでもある、と述べている。
 続けて、「中国の覚悟がどの程度か判断するには時期尚早だが、胡主席は今後重大となる可能性がある幾つかの譲歩をした……中国は物事に対する考えを明らかに改めつつある」と前向きに評価した上で、「しかし、定期的で確固たる圧力を伴って正しい方向へ導くことが必要だというのが、ここ数カ月で得られた教訓である」と強調している。
 
 菅首相の「第三の開国」の提案について、エコノミスト(2/5号)社説は、「菅首相は過去20年間の経済停滞中に出された、どんなものよりも大胆な改革案をまとめたのである。あの小泉元首相でさえ、これほど大胆な改革に取り組もうとしたことはない」と述べ、その実現の可能性や菅政権の現実はさておいて、次のように高く評価している。
 「重要なのは、この改革案は財政引き締め策と経済成長刺激策とを一体的に取り扱っていることである。菅首相はTPPと呼ぶ自由貿易圏に日本を参加させたいと考えている……米国主導の貿易ブロックを菅首相が支持するのは、日米同盟関係を修復したいとする彼の狙いがあるからである。小泉氏以降初めて、日本の首相として、世界における日本の位置と台頭する中国への対応についてのビジョンを明確に示したのである」。 
pagetop