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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/2月10日〜’11/3月10日)

 この期間、在日韓国人から献金を受けていた問題で前原外相が辞任した件が、英米各紙誌で報じられた。日本の次期首相候補と見られていた前原氏の辞任は海外でも関心が高く、英米だけでなくアジア地域のメディアでも広く報じられた。それらの論調の主要点は、菅政権への打撃、外交、中でも日米関係への悪影響を指摘する一方、これほど首相や閣僚が次々と代わる日本は、そもそも財政や高齢化、外交問題などの難問に取り組めるのか、という日本そのものに対する疑問である。また、これによって在日韓国・朝鮮人の身分の問題があらためて表面化すると指摘しているメディアもある。
 
 WSJA(3/7)でユカ・ハヤシ、タダシ・ナカミチ両記者は、「(前原外相の辞任は)ただでさえ不安定な菅政権にとって打撃となり、外交面でもほころびを見せている米国などとの関係を改善しようとする努力に支障が出る恐れがある」と報じた。
 そして「このような目まぐるしい首相・閣僚の交代を受けて、増大する政府債務、人口減少と高齢化、ますます強大になる隣国・中国との関係をどう維持するか、といった難題に日本は取り組めるのかとの疑問が出ている」と論じている。
 さらに、「前原氏の辞任で、在日韓国・朝鮮人や在日中国人(華僑)の日本での扱いが注目される可能性もある。問題となった献金は韓国籍の人物が行ったものだが、その人物は生まれて以来日本に住んでいる。日本を故国と考えている人が多くいるにもかかわらず、彼らは外国人として扱われている」と指摘した。
 NYT(3/7)のマーティン・ファクラー東京支局長も、「(前原氏の)一見な違反での辞任は、支持率が20%を切って、ますます弱体化する菅氏の立場を示すものである……弱い指導者ばかりが続くことによって、慢性的な経済停滞や増大する国の債務、急速な高齢化などに対処することが一層困難になっている」と述べて、日本の政治の問題を指摘。
 さらに「前原氏の辞任によって、菅政権は中国へ強硬な姿勢をとっていた外交政策の立役者の一人を失った。前原氏はまた、日本の軍事力の増強に力を入れると同時に米国との緊密な連携を呼び掛けていた」とも報じた。
 特に米国との関係については、WP(3/7)でチコ・ハーラン東アジア総局長が「前原氏の突然の辞任は、日本が直面する国内問題、ならびに緊密な同盟国との問題を増幅させる。タカ派の前原氏はオバマ政権内で人気があった。オバマ政権の人々は前原氏を、日米両国がアジアにおける安全保障面で利害を共有するという見方の擁護者と見なしていた」として、前原氏が日米関係改善にいかに努力してきたかを指摘し、「米政府関係者は、日本政府に継続性がないことを非公式に嘆いており、目まぐるしい政権幹部の交代が、沖縄の海兵隊基地の移転計画を決着させようとする努力の妨げになっている」と報じた。
 FT(3/7)のミチヨ・ナカモト東京副支局長は、「前原氏の辞任によって、政権獲得以来2年足らずの間に幾つものスキャンダルに見舞われた民主党政権の弱点が強調されることになった」と指摘、「政策に明るく、米国との太いパイプを有する前原氏の辞任は、日本の外交関係にも打撃を与えている」と報じた。
 エコノミスト(3/7電子版)でヘンリー・トリックス東京支局長も「それだけでは、取るに足りないように見える(違反で)彼が早々と辞任したことは――それも菅氏の反対を押し切って――政権がいかに弱体であるかということを示している」と指摘、「前原氏を失うことは、菅政権で恐らく最も頼りになるイデオロギー的中心であり、国民の多くが将来の首相だと見なす人物を失うことになる。前原氏はほころびた米国との同盟関係を外相として立て直し、再び日本の外交の中心に据えた。彼は、米国を含む野心的な自由貿易グループであるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を積極的に提唱しており、また、農業改革を妨害する農業の既得権益勢力と対決している」と前原氏の辞任の重大さを述べている。
 ガーディアン(3/8)社説も「前原氏の辞任は損失である。彼は、米国との軍事同盟と、ますます重要になる中国との通商関係との舵取りをうまくできるビジョンとエネルギーの両方を備えていた」として、「他の民主主義国であれば、些細な技術上の法律違反として見過ごされるであろうが、将来に明るい展望が開かれている人間でさえ助からないのだということは、菅氏の政治的脆弱性を示すものである」と述べている。
 
 全国紙オーストラリアン(3/7)のリック・ウォレス東京支局長も、「前原氏の辞任は、太平洋の両側で反響が起こるであろう。彼は日米関係の強化を堂々と支持し、米国が推進する自由貿易圏であるTPPに日本を参加させたいと思っていた。また対中強硬派で、先週、中国へのODA(政府開発援助)を削減する方向での見直しを支持したばかりであった」と報じた。
 さらに「辞任は、オーストラリアにとって打撃である。なぜなら、菅氏と並んで前原氏は、中道左派の民主党政権では改革派のひとりで、貿易自由化を推進する決意で臨んでいた。ちょうど日豪両国が、オーストラリアの農産物その他の輸出産業に大きな利益をもたらす可能性のある自由貿易協定の締結を推進していた時に、自由貿易の支持者が辞任に追い込まれたことで、オーストラリア政府は失望するだろう」と述べている。
 韓国の英字紙コリア・ヘラルド(3/8)のシン・ヘイ・イン記者は、「北朝鮮に対して断固とした立場をとり、北の核開発への野心に対応すべく韓国との協力強化を推進した前原外相の辞任に、韓国は警戒感を示している……前原氏の突然の辞任は、日中韓外相会議など、今年の幾つかの重要な外交案件に影を落とすだけでなく、日本政府の対北朝鮮の姿勢に変化を招くのではないか」と報じた。
 また、「(在日韓国人からの政治献金をめぐる)前原氏の辞任によって、在日韓国人の身分に関する論争が再燃することになった」と述べた。       

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