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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/3月11日〜’11/4月10日)

東日本大震災に関する英米主要紙誌の論調

3月11~14日の地震・原発報道について
 3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれに続く福島原発事故が連日、世界のニュースメディアの報道記事、社説、コラムで取り上げられた。これらのニュース記事や論評は、①大震災で示された日本人の態度や行動に対する称賛(不屈の精神、冷静さ、連帯意識など)と同情、②日本の復興、③原発事故が明らかにした日本の問題と原子力発電への影響などに関するものであった。
 『ワシントン・ポスト(WP)(3/12)社説は、「初期段階での日本の復旧・復興努力を見ている世界中の人々に、称賛と(オバマ大統領の言うように)胸が張り裂けるような悲しみを呼び起こしたことは確かであろう」と深い同情で日本を思いやり、「停電や、列車の運休に対して、また避難先で、日本人が冷静さや助け合いの精神で対処していることは、日本の社会の特性として長く知られてきた不屈の精神と周りへの配慮をあらためて思い知らせるものである」と称賛している。
 『フィナンシャル・タイムズ(FT)(3/12)の社説も、「大災害に対処する時こそ、国民が試されるのだ。これまでのところ、日本は見事な不屈の精神でこの災害に立ち向かっている」としている。そして、「地震の直後に世界各国は支援を約束し、犠牲者への弔意を示した。これは他国が震災に遭った時に自国の専門的知識や技術を提供してきた日本の寛大さに見合うものだ」と述べている。
 『ニューヨーク・タイムズ(NYT)(3/11電子版)でニコラス・クリストフ元東京支局長は、阪神・淡路大震災での取材経験を踏まえて、「日本人は、根気強さ、冷静さ、整然と行動する点において本当に高潔である。日本語に『ガマン』という、よく使われる言葉がある。英語にすると『tough it out(耐え抜く)』といった意味で、それこそ神戸の人々がまさに勇気と団結と共通の目的を持って示したことであり、私はそのことに畏敬の念を抱いた」と述べている。
 さらに、「日本の復元力と忍耐力には、高潔さと勇敢さがある。それは数日のうちに示されるだろう。その時には、日本における地域社会の固い絆、強さ、難局を切り抜ける力も伝わってくるだろう。私は、日本人は力を合わせてやっていくと思う。米国で現在繰り広げられている、“食うか食われるか”という情け容赦ない二極化した政治とは対極的だ。だから、我々は日本から学ぶことがあるかもしれない。日本に対し、深い同情を禁じ得ず、大震災に心よりお見舞いを申し上げる。同時に、深い尊敬の念も抱くのである」と熱いメッセージを送っている。
 『ウォール・ストリート・ジャーナル・エイジア(3/14)の社説は「不屈の日本」と題して「1億2600万人の人口を抱えるこの島国が、1900年以降で世界5番目の規模の大地震にいかに適切に対応しているかは、注目すべきことである」と指摘。「この巨大地震にもかかわらず、日本人が母なる大地からのこの猛威を切り抜けるために、比較的よく準備ができていたことについては言及せざるを得ない。日本は文字通り、立ち上がろうとしている。どうすれば、人間の計画と産業社会が自然災害に対処できるか、という証として」と述べて、「世界最先端の地震早期警戒システム、緊急地震速報」や「最先端の高層ビルの建築耐震工学」を讃えている。そして、低迷する経済と政治家の失政にもかかわらず、「間違いなく日本は依然として産業大国であり続ける」と強調している。
日本の今後の復興について
 日本の今後の復興について、WP(3/16)の社説は、「問題は、戦後最悪の今回の地震が日本をさらに弱めるのか、それとも奮い立たせるのかである。世界中のすべての日本の友人のように、我々も後者であることを心から希望する」と前置きした上で、「日本にはまだ、金融面でも、人的にも技術的にも頼りにすることができる、豊かな資源がある。一旦、その直面する深刻な課題に対処できたならば、その先は長期的なガバナンスの問題に日本がいかに取り組むかということである」と述べ、「保護主義や補助金漬けの農業、低い出生率、東アジアの安全保障における日本の役割など、古くからの問題に新しい考えを当てはめなければならない。動きが遅く、コンセンサス重視型のリーダーシップの弱点が、原発事故に関する政府発表の至るところに、混乱と直接的でないものの言い方として表れている。政治文化、企業文化もこの面で変わらなければならない」と論じている。
 『エコノミスト』(3/26号)社説は、「世界中が被災者たちの冷静な態度を、驚きをもって見つめている」と讃えながらも、「膨大な人的被害は避けがたいものだったとはいえ、苦しみの一部は回避可能なものだ。国のシステムは、国民の期待を裏切っている」と指摘、「この3月の震災によって、日本のシステム、そしてこのシステムの舵を取る政治家に、さらなる大変革が必要だということがあらためて浮き彫りにされた」と述べている。
 さらに、「これまで日本では、顔の見えない総理大臣と閣僚が絶えず交代し、有効なリーダーシップが存在しない状態があまりにも長く続いた。今回の危機は、その欠陥を容赦なく白日の下にさらした。政治改革を約束していた菅首相は、今こそ、これを成し遂げなければならない。日本の国民も、政府に対して以前と違う態度を取ることによって政治改革の力になれる。ストイシズムは、逆境に立ち向かうのにどれほど有益であるとしても、変化をもたらすには不向きだ。今こそ日本人は、自分たちの期待を裏切ったシステムに正当な怒りをぶつけるべきである」と論じている。
原子力発電について
 原子力発電について、FT(3/19)社説は、「原子力を支持する――福島原発の事故によって原子力発電からの撤退を軽々しく決め付けるべきではない」と題して、「原子力発電は最も安全で最も厳しく規制されている発電方法のひとつだ。次世代原子炉は、福島の原発を襲った原子炉冷却系の危機といった可能性を大幅に取り除くことで、さらにリスクを減らせるだろう」と述べ、「今回の事故で、原子力発電の規制は見直されなければならない。IAEA(国際原子力機関)の安全ガイドラインに強制力を持たせるべきだ。しかし、原子力を全くやめてしまうという考えは非現実的だ。世界の発電量の約13%を占める原子力は簡単には他に置き換えることはできない。好むと好まざるとにかかわらず、今後も長期にわたり原子力に頼らざるを得ないであろう」と論評している。
 WP(3/17)社説は「今回の事故は米国で、原子力の安全性についての議論を再燃させた。原発反対者は、リスクが決して排除されないことが証明された、と言う。それは事実だ。しかし、チュー・エネルギー省長官は原子力を選択肢のひとつとして保持したいし、それには正当な理由があると主張した。どんな方法でも、発電にはリスクが伴う。化石燃料は有害なガスを排出し……原発と違って気候変動という深刻な環境破壊の原因になる。原発事故は恐ろしい危険をもたらすが、米政府として日本の状況を精査し、必要なら政策を調整するというのは正しい。事故は『原子力ルネサンス』に、ある程度影響を与えるだろう。しかし相対リスクについて、広範かつ決定的な判断を下すのは時期尚早だ」と論じている。 

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