経済広報センタートップページ調査報告 > 英米主要16紙の論調分析

調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/5月14日〜’11/6月8日)

 この期間、6月2日の菅内閣不信任決議案をめぐる混乱について、東京に支局を置く英米の主要紙誌が社説や解説、報道記事で大きく取り上げた。WSJFTはニュース記事や解説のほかに、社説で論じ(社説はアジア版のみ)、NYTWPエコノミストなどはニュース記事の中でコメントしている。
 各紙誌は概ね共通して、今回の不信任決議騒動を、東日本大震災からの復興や危機的な福島の原発事故への菅首相のまずい対応に対する純粋な批判だけでなく、党内抗争の「菅降ろし」と見て、復興に全力を挙げて取り組まなければならない時に与野党の政治家は政争にうつつを抜かしている、として、「日本の政治システムへの信用をさらに落とした」(WP)と批判している。
 また、内閣不信任決議案の可決を回避するために直前に出された「退陣表明」によって、菅首相は「レームダック(死に体)」に追い込まれ、何年も続く「日本政治の麻痺状態」はさらに長引くことになるNYT)と指摘している。
 
 FT(6/3)社説は、「内閣不信任決議案の採決で菅氏が勝利したことにより、国民が熱望する政治的安定がもたらされるかもしれないという希望は消えた。(菅首相の「退陣表明」は)民主党の分裂を和らげるどころか、さらに彼らを怒らせて、菅氏は事実上のレームダックに追い込まれた。彼が今の地位に留まるのは現実的ではない。日本が今、直面している多くの重要な課題に取り組むために、立場の弱くなった菅氏が、野党はもちろん、民主党内の反対派の支持をどうやって取り付けられるのだろうか」と述べている。
 さらに、「日本の政治家は、政治エネルギーを津波と原発事故からの復興と救援活動に集中させるどころか、自己中心的な政争に明け暮れているように見える。日本をダメにしているのは民主党だけではない。広く政治家全員が、その責任を負わなければならない。3月11日の震災は、当初、政治家に新しい連帯感と目的意識を植え付け、それが日本の“失われた20年”からの脱却に貢献するかもしれない、という期待があった。国民の、無欲で冷静な反応は本当に感動的であった。だが悲しいかな、この精神は、政治家が安っぽい地位と権力をめぐって小競り合いを続ける国会の壁を突き破ることはできなかったようだ。これが変わらなければ、日本の政治の行き詰まりに終わりは見えない」と論じている。
 NYT(6/3)でマーティン・ファクラー東京支局長は、「第2次世界大戦以来最悪の大災害から日本を復興させなければならない、まさにその時に、退陣表明によって、菅首相は事実上のレームダックに追い込まれたのである。このことが、何年もの間日本を覆ってきた政治の麻痺状態をさらに長引かせるのはほとんど確実のように見える……大震災のショックで、日本は20年間にわたる経済および社会の停滞から、ついに脱出する気になるのではないかという期待がこの国にはあった。しかしながら、国民は、この国のリーダーシップにますます失望しているように見える」と述べ、「国民はまた、内閣不信任決議案の提出に至った政治的駆け引きにも怒っている。東京の街の有権者は、国の緊急事態に早急に取り組まなければならない時に、彼らから見れば『つまらない政治闘争』にかかわっている与野党の政治家に対して失望と反感を示した」と指摘している。
 WP(6/3)でチコ・ハーラン東アジア総局長は、「今回の騒動、そしてそれに先立つ数日間の抗争は、1年にひとりの割合で首相を取り替える日本の政治システムの信用をさらに落とし、3月11日の地震と津波の災害と、原発事故を受けて落ち込んだ国民の信頼を回復することはできなかった。首相交代の可能性が差し迫ったものであるということは、被災地・東北地方の復興資金の手当てと活用のカギとなる、財政措置と支出法案を可決させるだけの能力が菅首相にあるのか、という新たな疑問を投げ掛けることになった」と厳しく指摘している。
 エコノミスト(6/2電子版)は、「3月11日の地震と津波に対する反応は、日本社会が最高に辛抱強いことを証明した。6月2日の国会での失態は、政治が最悪だということを証明した。国家の緊急時のさなか、日本では恐らく数カ月間ものレームダックの政権が続くことになりそうだ」と指摘。
 その上で、「この情けない事態においては誰もがぶざまに見えるが、内閣不信任決議案を提出した自民党はとりわけ、そうである。津波と原発事故で2万3000人以上の犠牲者を出し、10万人以上が家を失った未曽有の大災害と菅政権が闘っている、まさにその時でさえ、自民党は震災復興事業に影響する可能性のある予算関連法案を参議院で阻止する、と脅かしたのである」と、特に自民党に批判的である。
 そして、この記事は「今回の出来事は、政治の停滞と政治システムへの不信を加速させるだろう」と言うテンプル大学(日本校)のジェフリー・キングストン教授のコメントを引用し、「実際に、内閣不信任決議案の前段階で日本中の人々、特に被災地の人々は、あまりにも自己本位故に、自分たちがどれほど無益な茶番劇を演じているか気付かない政治家への怒りをあらわにしている」と述べている。
 WSJA(6/3)社説も、菅首相の「退陣表明」で不信任決議案が否決されたことは「強力なリーダーが必要なこの試練の時に、先の見えない不確実な時間が続くことを意味している」と述べている。
 続けて、「菅政権がここ数カ月間で向き合う最大の試練は、実は震災からの復興ではない。その震災対応も含めた政府の活動を担保する補正予算や予算関連法案を国会で成立させることこそ、最重要課題なのだ。様々な社会保障政策を見直さなければ、この膨大な政府債務は、いずれ制御不能になる。5月31日に米格付け会社であるムーディーズ・インベスターズ・サービスが、日本国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表したのも、財政改革の進展が見られないことや、低い経済成長見通しが原因だ。それはつまり、日本の政治システムが末期の機能不全に陥っているとの認識の表れなのだ」と指摘し、「日本がこの停滞を打破するのに、より強力な指導者を見つけることは喫緊の課題だ。その候補のひとりは民主党の小沢一郎元代表かもしれない。(しかし、国民世論や様々の事情から)現実には、ムーディーズやほかの政治評論家が予測するように、精彩に欠ける別の政治家が民主党政権でまた首相になり、停滞が続く可能性は高いだろう。とはいえ、この国の債務問題がいよいよ危機に近づいている現在、政治を密室から解き放ち、国民の前でしっかり政策論議を進めることができるリーダーの、いち早い出現が待たれる」と論じている。 

pagetop