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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/6月9日〜’11/7月6日)

 この期間、中国と南シナ海周辺諸国との間で領有権をめぐって高まる緊張と米国の役割や、アフガニスタンからの米軍撤退と米国防予算削減の問題などについて多くの論評が見られた。
 
 南シナ海での中国との領有権争いでフィリピン、ベトナムなどが米国の支援を求めていることについて、WP(6/27)社説は、米国の、より積極的な影響力の行使、周辺諸国への支援の必要性を主張して次のように述べている。「米国が影響力を行使しなければならない理由は明らかである。世界貿易量の3分の1を占める南シナ海での航行の自由を維持することは、米国の『国益』である。同様に重要なのは、中国の近隣諸国に対する強硬姿勢をけん制することだ。そのような国には、フィリピンのような友好的だが脆弱な民主主義国だけでなく、中国との独自の領有権問題を抱えている日本も含まれる」。
 そして、「クリントン国務長官は、米国は南シナ海における多国間の協議を実現する役割を担う可能性があることを示唆した。米国政府は中国に対して、領有権問題に対処するための東南アジアの国々との『行動規範』に正式に合意するよう圧力をかけるべきだ。そして、もしフィリピン政府が、長年の米国との防衛協力をテロ対策から、その領海における巡視と防衛にシフトすることを望むなら、国防総省は喜んで協力すべきである」と論じている。
 WSJA(6/30)社説も、「特に憂慮すべきは、人民解放軍が南シナ海を自分たちの思い通りにしようとしているらしいことで」「中国は既成事実によって南シナ海を中国の内海にするための政策をこっそりと再開したようだ」と指摘、「中国が緊張を煽り続けているので、米国はさらに強硬な対策を打ち出す時期かもしれない」と述べている。
 そして、WP社説と同様に、「中国が日常的に違反している2002年の『南シナ海における当事国の行動規範宣言』を、もっと強力で、艦船や航空機がどのように行動しなければならないかを詳しく規定したものに格上げする」ことを米国と東南アジアの関係国は目指すべきである、と主張。「アセアンが再び結束している今、米国の関与は交渉の重要な切り札になる。中国が他国の艦船や漁船に嫌がらせをする一方で平和を説くのであれば、アセアン諸国は米国との安全保障協力の強化に追い込まれるだろう。米国はアセアンの協力的なパートナーだという、もっと明確な意思表示がワシントンからあれば、それは中国政府に、軍を統制し、領有権問題を交渉によって解決する必要性に気付かせるはずである」と論じている。
 
 アフガニスタンからの米軍撤退開始についてWP(6/23)社説は、「オバマ大統領は、22日夜に発表したアフガニスタンからの増派軍の撤退について、説得力のある軍事的・戦略的論拠を示せなかった」と批判している。
 さらに、「今夏に5000人、年末までにさらに5000人を撤退させることで、(タリバンを掃討してアフガン軍に引き継ぐという)任務の遂行はオバマ氏にとって一層困難になるだろう。2009年末に増派を命じた3万3000人全員の撤退期限をすでに2012年9月に定めたことで、大統領は、戦いの現場だけでなく、タリバン指導部を政治的解決の場に引っ張り出すための努力も台無しにする危険がある。撤退によりアフガニスタンでタリバンが復活する可能性があり、核武装したパキスタンとインドを含むこの地域をひどく不安定にするだろう。もし、アフガン政府か軍が崩壊したら、米国がアルカイダに対する無人攻撃に使っている基地を失う可能性が高い」と述べている。そして、「オバマ氏の撤退決定は、戦略上の明確な裏付けがないために失敗するリスクが高い」としている。
 FT(6/24)社説も「国内政治の観点からすると、アフガニスタンに関するオバマ大統領の発表は、抜け目なく判断されたものだった。だが、政策は政治ほど見事ではない。3万3000人の増派部隊を全員、来年9月までに撤収させる計画は、11月の大統領選挙には都合のいいタイミングだが、時期が早過ぎる」と批判し、「10年間におよぶ戦争の後だけに、いら立ちは理解できる。疲れ果て、財政難に苦しむ国は、これ以上駐留することで何が得られるのかと問うている。しかし、増派戦略が10年続いているわけではない。この戦略はやっと1年経ったところで、進展を遂げている。政治的な圧力があるとはいえ、それをリスクにさらすことは嘆かわしい」と述べている。
 そして、「米国の外交・安全保障政策は目的と手段の実利的なバランスを改善する必要があるし、米国が同盟諸国に、より多くの貢献を求めることは正しい。だが、米国は孤立主義に向かわないよう注意しなければならない。大統領の演説に垣間見られたその兆候――『自国(米国)での国づくり』に取り組む時だ、と大統領は述べた――は我々を不安にさせる」と警告している。
 NYT(6/23)社説は、「米国民は、アフガニスタンの戦争に対してうんざりし、ますます絶望的になっている。10年間の戦いで、1500人以上の生命が失われ4500億ドルが投入された今、米国民はそこから抜け出す明確な道があることを知る必要がある。オバマ大統領が発表した米軍撤退の規模とペースは多くの米国民を満足させられないであろう」と、より早い米軍撤退を求めている一方で、「米軍が撤退しても直ちにアフガニスタンが内部崩壊しないという確かな見通しがあっての兵力削減計画なのか、説明が必要である」とも述べている。
 「もしもアフガニスタンが内部崩壊したら、たちまちアルカイダやその他の過激派の基地になってしまう可能性がある。彼らが本当に狙っているのは、パキスタンと同国が保有する90数発の核爆弾なのだ」から、「オバマ氏には、最低限安定したアフガニスタンをつくり上げ、同時に米軍を撤退させることのできる確かな計画があるのだろうか。彼は演説で具体的な点について十分には明らかにしなかった。米軍削減はアフガン軍の強化に見合うよう行われなければならない」と批判している。
 
 米国防費削減について、NYT(7/1)社説は、「パネッタ新国防長官の課題は、前任者の(21世紀にふさわしい優先順位に沿った軍事支出の見直しや、イラク・アフガンの米軍撤退の)実績を当てにするのではなく、さらにそれを推し進めることだ。政府の裁量支出の1ドル当たり50セントを占める国防予算のさらなる改革を強力に進める必要があるだろう。これは米国の重大な国益を危機にさらすことなく実現しなければならない」と国防費削減を支持している。
 しかし、その一方で、「戦争やその他の危機が続く中で、一律削減は問題を引き起こしかねない。世界における米国のグローバルな政策の優先順位と戦略の現実的な再評価を踏まえたものでなければならない。(パネッタ長官は)NATO(北大西洋条約機構)とその他の同盟国に対し、今後、軍事作戦における貢献度を高めるよう圧力を強めることによって、米国民の税金を有効に使わなければならない。そして……予算の圧力からではなく米国の国益として、(アフガニスタンからの出口戦略を)推進するべきだ。アフガニスタンから撤退しても、世界的な軍事責任から撤退することにはならない。米国は、リビアのような場所に急きょ介入する用意ができていなければならず、中国の軍事的な野心と、そのコソコソしたやり方を許すわけにはいかない」と述べている。  

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