経済広報センタートップページ調査報告 > 英米主要16紙の論調分析

調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/7月7日〜’11/9月7日)
  この期間、野田佳彦財務大臣が新しい民主党代表に選出され首相に就任したことについて、英米の主要紙誌の多くは「また新しい首相が誕生」という見出しを付けて、ニュースでかなり詳しく伝え、社説や一部のオピニオン記事で論評している。日本に支局・特派員を置くFTWSJWPNYTタイムズガーディアンエコノミストなどが特派員のニュースおよび解説記事を出して、社説で論評している。論調分析対象外のデイリー・テレグラフ(英)、オーストラリアン(オーストラリア)、ストレーツ・タイムズ(シンガポール)も駐日特派員の記事を掲載。オーストラリアンと、日本に特派員を置いていないLATネーション(タイ)なども社説で論評している。
 主要紙誌のほとんどすべてが、野田氏が自らをドジョウに例えて「泥臭い政治」を掲げたことを好意的に(エコノミストWP)、あるいは不可解だ(FT)と取り上げた。共通して指摘している論点・視点は、5年間で6人目の首相だと強調していることで、WPは日本の政治を「メリーゴーラウンド(回転木馬)」、FTNYTなどは「リボルビング・ドア(回転ドア)」と呼んで、首相がクルクル代わることを批判している。従って、野田新首相の課題は、何よりも首相の座に長くとどまることであると各紙誌は言う。
 また、野田首相を「財政タカ派」としてWPWSJANYT増税に懸念を示す一方、タイムズLATは評価しているように見える。
 野田政権について、各紙誌は以下のように述べている。
 
政治の安定について
・「最大の課題は、1年で辞めるという無能な前任者たちと同じような運命を絶対に回避することだ……日本はアジアにおける、米国の最も重要な同盟国だ。日本の政治のまひ状態の影響は、日本だけにとどまらない。だから我々は、メリーゴーラウンドのように首相がクルクル代わるスピードがスローダウンすることを望む。ドジョウに祝福あれ、首相の座に長く就かんことを切に願う」(WP8/30社説)
・「国民が指導者に成熟を求めるのであれば、国民自身がもっと忍耐力を身に付けなければならない。政党は世論調査の気まぐれな動きを無視し、物事を達成できるだけの時間を指導者に与えるべきだ」「強力な官僚機構のおかげで、国は今もかなりうまく運営されているが、戦略的には漂流している……日本がもっとうまくやっていくためには、政治の安定が不可欠だ」(FT8/ 30社説)
・「米国政府には、2006年に小泉氏が辞任してから首相が短期間で次々と交代することへの欲求不満が高まっている。同様に、長年の野党暮らしの後、09年に政権を握った民主党の実績にも失望している。ホワイトハウスは、野田氏の首相就任を公式には歓迎した。しかし内心では、首相の交代にあきれている」(FT8/31 アンナ・ファイフィールド記者)
 
リーダーシップについて
・「3月の巨大地震、20年に及ぶ経済停滞、また、米国の赤字が小さく見えるほどの債務にあえぐ日本は、強いリーダーシップを何としても必要としている」(WP8/30社説)
・「この国がまさに必要としているのは、国家の目的を明確に語れるリーダーシップなのである……正常な状態に戻ることを望む国民の強い欲求不満に応えるためには、彼の前任者にひどく欠けていた明確なリーダーシップを示す必要がある」(タイムズ8/30社説)
・「野田氏は月並みで、震災や原発事故、また長期の経済停滞から立ち直るために日本が必要とする、力強く創造的なリーダーシップを発揮しそうにない」(NYT9/4社説)
・「野田首相は型破りな指導者にはならないだろう。本人自ら、太って、さえないルックスを水底で暮らすドジョウに例えて、自身の平凡さを認めている……少なくとも、よい意味で自嘲的なウイットを持っているといえる」(エコノミスト9/3号社説)
・「国内の問題は別にして、日本にとって目下、最も必要なのは、日本がこの地域で強力なリーダーシップを発揮できるかどうかである……アジア諸国は言うまでもなく、世界が示した日本への同情と理解は、国際社会で日本が占める高い地位を証明するものである。従って、新政権がグローバルなリーダーシップを発揮し、この善意をうまく利用することが肝要である。さもなければ、日本は内向きの政策によって更に行き詰まることになるかもしれない」(ネーション9/6社説)
 
政策と課題増税など)について
・「野田氏の政策を見る限りでは、彼は国家主義的で(彼の勝利は韓国や中国に警戒感を生んだ)、震災復興と債務削減に充てるため消費税増税に賛成の立場の財政タカ派である。これは、日本は単純に借金をし続けるわけにはいかないのだと言う、一部のエコノミストに支持される。しかし、そうなると輸出依存症で消費嫌いの日本経済が抱える矛盾を一層拡大させる可能性がある」(WP8/30社説)
・「菅内閣の財務大臣として、野田氏は財政タカ派の代弁者だった。消費税率を2倍にし、不足が予想される社会保障費の財源とするのである……他の成長志向の改革、例えば郵政民営化の復活や、経済の大規模な規制緩和、移民改革などは見送られるだろう」(WSJA8/30社説)
・「最悪なのは、20年に及ぶ経済低迷に、世界的危機や円高、震災が加わり悪化してしまった日本の慢性的な経済問題に対し、野田氏が大胆な解決策を何も提示していないことだ。彼が積極的になっている、復興資金に充てるための増税は、経済がもっと強くなるまで延期すべきだ。現時点で増税すれば、日本を更に深い景気後退に陥れ、世界経済の回復をも遅らせることになる。喫緊の優先事項は、復興と内需の喚起である。市場と規制の改革の動きを再活性化させる必要があるだろう」(NYT9/4社説)
・「野田氏には、財務大臣としての経験と、日本のGDP(国内総生産)の2倍にも膨れ上がった公的債務を抑えるのに必要な痛みを伴う改革を行う決意という強みがある」(タイムズ8/30社説)
・「野田氏は、今後の核エネルギーという重要な問題について、菅首相とは違う立場を取ると見られる。菅氏が、いわゆる脱原発を求めたのに対して、野田氏は、更なる経済停滞を招く電力不足を回避しなければならないと述べた。それは経済界の考えと同じだ」(NYT8/30マーティン・ファクラー東京支局長)
 
官僚との関係について
・「懸念されるのは、野田氏が菅氏や鳩山氏よりも、官僚に共感を抱いているという点だ。民主党が09年に政権を獲得した際に約束したのは、責任を負わない官僚ではなく、選ばれた政治家が政策を推進するということだった。これは日本において大転換であり、現実的には実施が困難なものだった。野田氏の、特に財政政策に関する見解は、今でも強い力を持つ官僚、とりわけ財務省の官僚との協力関係を特徴としている」(WSJA8/30社説)
・「問題のひとつは、未熟な党が、国を運営するのに是が非でも必要な官僚に対して宣戦布告していたことだ。野田首相は今、官僚との和平を実現しなければならない。官僚に対し、健全なアイデアを提案するよう促すとともに、彼らの意に染まない政策の実現が阻害されないようにしなければならない」(エコノミスト9/3号社説) 
pagetop