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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/9月8日〜’11/10月13日)

 この期間、日本については、電力業界の改革や日本人の節電努力に触れた社説とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加の必要性を説く論評が目立った。国際関係では、中国に人民元の切り上げを求め対中制裁法案を可決した米上院や民主党議員の間で高まる中国たたきと保護主義の動きを強く批判する各紙誌の論評が注目された。
 
 NYT(9/25)社説は、「3月の地震と津波、原発事故を受けて電力を節約するための大掛かりで驚くほど成果を上げた“節電”キャンペーン」について、「政府はピーク時の電力使用を15%削減することを大口需要家に要請した。電力会社は消費者にも協力を要請した。産業界、オフィス、家庭は電灯を消し、エアコンの温度を摂氏27度以上に設定した。会社員はスーツとネクタイから、かりゆしウェアに着替えた。勤務時間を早朝と週末にずらし、階段を歩いて上り、LED電球とパソコン画面の薄明かりの中で仕事をした。にっこり笑った電球のイラストが、国民一人ひとりに協力を促した」と節電への努力ぶりを説明。
 さらに、「節電はうまくいった。今月、政府は予定よりも早く電力使用制限令を解除した。東京は再び明かりを取り戻した。ピーク時の電力使用量を昨年をかなり下回るレベルに抑え、停電や計画停電は回避された」と指摘、「日本はエネルギー危機を乗り越えるために何ができるかを素早く示した。送電網が脆弱で、電力需要が莫大で、化石燃料に過度に依存している米国にとって、これはよい教訓だ」と高く評価している。
 エコノミスト(9/17号)社説も、「国民はひとつになって対応した」と述べ、NYTと同様に、日本の節電努力の内容を説明して、「驚くべきことに、日本は停電もなく夏を乗り切った」と成果を称えている。その上で、「日本国民は、必要があればエネルギーを節約できることを示した。しかし、ずっと夜勤を続けることは不可能だ」として、野田政権は電力事業の改革をすべきだと次のように論じている。
 「日本は電気事業の地域的な独占をやめ、発送電を分離し、新規参入者が送電網に接続することを制限する契約を厳しくチェックする監視機関を設立すべきだ。このような改革は、他国では、電気料金の引き下げや斬新な発想を促進してきた。日本での規制緩和に反対する者は、2つの論拠を挙げている。第1に、巨大な独占企業は電力の安定供給を保証していること。第2に、東電は、福島の原発事故で生活に影響を受けた人々への補償をするため、安定した利益を上げる必要があること。どちらの論拠も説得力がない。複数の供給源は、さらに信頼できる供給体制をつくり出す。競争を阻害することなく被災者を補償する方法はたくさんある。野田首相は電力独占の特権に終止符を打つべきだ。日本がまさに必要とするショックとなり得るし、日本の新しいリーダーは、日本の緩やかな衰退を見届けるだけでは満足しないということを示す合図にもなるだろう」。
  
 WSJA(9/16)への寄稿でヤイター元米通商代表らは「野田首相が日本経済を再活性化したいと思うのであれば、通商政策の見直しが必至だ。そうすることはまた、世界貿易における重要なリーダーシップ(を発揮するチャンス)を日本に与えることにもなるだろう。その際、TPPに焦点を絞るべきだ」と述べて、日本にTPPへの参加を促している。
 また、「日本の参加が(TPP交渉の)行き詰まりを打破する可能性がある。日本は、米国と一緒にTPP交渉の主要先進国の参加国として、必要なリーダーシップを発揮できるだろう。貿易に関して、何をしても野田政権にとっては政治リスクになる。しかし、20年に及ぶ経済の低迷の後では、今は変革する時だ。日本はリスクテーカーになることが肝要だ。TPPが日本を含む加盟10カ国すべての市場を製品とサービスに開放することになれば、アジア太平洋地域の貿易は爆発的に伸びるだろう。今後20年間で容易に3倍にも4倍にもなる可能性がある。日本にとって、これは重要かつ緊急に必要とされる経済の起爆剤になり得る。TPPへの参加はまた、日本が世界経済においてリーダーの地位へ復活するのに力となるだろう。世界経済が回復すべく苦しんでいる時に、貿易の拡大は最高の雇用創出の手段のひとつとなる」とTPPの素晴らしさを並べ立てている。
 
 米上院が10月11日に可決した事実上の対中制裁法案、「為替相場監視改革法案」は、人民元の「過小評価」を中国政府による補助金と見なして中国からの輸入製品に報復関税をかけることになるものであり、中国の報復を招き貿易戦争に繋がるとして、WP、NYT、WSJ、FTが社説で批判した。
 WSJA(10/4)社説は、この法案を1930年の「スムート・ホーリー法」以来「ここ80年間で最も危険な通商法案といえる」として、法案を推進する民主党議員だけでなく、「普通なら米国の大統領が介入して、米国および世界の経済を守るものなのだが、オバマ大統領は自身の狭い政治目的のためにちょこまか動いているだけである。これは危うい状況だ」と述べて、態度を明確にせず、この法案回避にリーダーシップを発揮しないオバマ大統領も批判している。
 そして、「(この法案による)相殺関税はWTO(世界貿易機関)違反になる。中国は間違いなく報復するだろうし、両国の企業も消費者も被害を受けることになる。もし他国がそれに倣えば、グローバル経済にドミノ効果が広がるだろう。世界の貿易体制のかつてのリーダーであり、その恩恵に浴してきた主要国の1つとして、米国はそういった事態を回避する責任を負っている」と述べている。
 また、「(今回の中国たたきは、)米議会が、円安にして巨額の貿易黒字を出しているとして日本たたきをした1980年代の再演である。25年間で円は1ドル360円から80円に上昇した。しかし、黒字は、日本のバブル崩壊後、相対的に縮小したけれども、今日まで続いている」と指摘して、人民元の切り上げが必ずしも中国の貿易黒字削減に繋がるとは限らないと論じている。
 WP(10/3)社説も、「中国の人民元はドルに対して過小評価されている。これは確かに、中国の輸出を推進することを狙った中国の為替政策の結果である。しかし、この法案を推進する議員たちが言うように、それによって米国内に何十万もの雇用が創出されるのだろうか。米国は何十年と貿易赤字を出し続けており、その中で対中貿易赤字のシェアは増加しているが、対中赤字がなくなったからといって、必ずしも米国の貿易赤字全体が減少することにはならない」と述べている。
 そして、「中国はすでに人民元を徐々に切り上げており、それは米国の圧力もあるが、主に中国経済のインフレを回避するためである」と指摘、「この法案を通してはいけない最も重要な理由は、実際の効果がそれほど期待できない対策のせいで中国の報復を招くという、高くつきかねない危険を犯す必要があるのかということである」と危険な保護主義に警告している。
 その上で、「もし議会が本当に米国の労働者を助けたいと思うなら、経済成長に?がるFTA(自由貿易協定)の批准に動くべきである。新たに米中貿易摩擦を加えずとも世界経済は問題をもう十分に抱えている」と説いている。  

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