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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/10月14日〜’11/11月10日)
 この期間、オリンパスのM&A(企業の合併・買収)に関する巨額の支払い疑惑をめぐる騒動について、特に英国人社長解任で疑惑が表面化して以来、FT、エコノミスト、WSJなどが、一企業の問題だけでなく、日本株式会社のコーポレート・ガバナンスの問題として厳しく批判、追及している。海外では、中でも、ギリシャ問題などユーロ圏の政府債務危機への対策に関する各紙誌の論評が目立った。
 
 オリンパス事件についてFT(10/20)社説は、「近年、日本企業はコーポレート・ガバナンスの強化に取り組んできたが、まだ重大な不備が残っている。オリンパス事件は、ほぼ全ての不備を浮き彫りにしているように見える。すなわち、経営幹部の説明責任を担保する適切な制度の欠如、事を荒立てることに対して文化的に反感があること、低い情報開示基準、株主による効果的な監視の欠如、といったものだ。日本の当局は、ほかの企業が同じ運命をたどるのを防ぐために行動を起こすべきである。日本の優れた製造技術はかなりのものだが、生み出された価値は、日本企業の金融慣行のせいで有効活用されないことが多い。ガバナンスが改善されなければ、こうした状況は今後も日本の産業の活力をそぎ、成長を妨げ続けることになる」と述べている。
 WSJA(10/27)社説も一企業の問題を、日本企業全体のガバナンスや企業文化の問題として厳しく論じており、要注意である。「どういうわけか、日本企業のガバナンスは常に改革の入り口で足踏み状態にある。スキャンダルがきっかけで改革への取り組みが進んだとしても、結局、企業幹部が説明責任を逃れるための新たな方法を見つけて終わり、ということが何度あったか知れない……1980年代、経営陣が説明責任を免れられることは、企業の長期戦略が可能になり、社会の調和も促すため、日本経済の強みのひとつと見なされていた。しかし実際のところ、(説明責任が問われないために)企業幹部は、利益ではなく市場シェアを追求し、企業の損益でなく、彼ら自身の人間関係に基づいて経営判断を下したのである」と論じている。そして「日本には、経営者に説明責任を持たせる規制の枠組みと文化が欠けている」という専門家の言葉を引用して断じている。
 更に、「これほど派手な失敗も、日本のエリートが結束して隠蔽する企業セクターの慢性的な経営ミスに比べれば、それほど重要ではない。恐らく、産業界や官公庁、議会でトップを占める人間は、この制度に満足し切っているのだ―共同体主義とうたわれるが、実は彼ら個人の利益に資するこの制度に」とまで厳しい見方を示している。
 タイム(11/14号)ビル・パウエルのエッセイも、野田首相が「一企業の行いによって日本全体がその汚名を着せられるべきではない。世界は、日本を資本主義のルールを守らない国と決めつける恐れがあるが、日本はそのような種類の社会ではない」とFTに語ったことを引用して、「(しかし)実際には、日本はそういう社会なのだ」と断じている。
 更に、「オリンパス事件が(エンロン事件など外国の同様のスキャンダルと)違うところは、外部の犯罪組織が何かしら絡んでいる可能性があることである。日本では、経営者と犯罪組織がごく親密であることが分かっても、驚く者はほとんどいないだろう」と、犯罪組織やヤクザとの関係の可能性にまで触れて、「オリンパス事件が示しているのは、日本企業の役員会議室はまだまだ秘密主義で、詐欺的で、恐らく犯罪的でさえあるのだということだ。悲しいかな、それがまだ日本の資本主義のルールなのだ」と日本の企業社会を描いている。
 
 ユーロ圏の債務・金融危機への対策について、FT(10/28)社説は、「各国首脳はサミットで、議題だった3つの課題を概ね達成した。すなわち、ギリシャ問題に対するアプローチを改めること、ユーロ圏の救済基金を使って、市場のパニックが他国(特にイタリア)を巻き込む事態を防ぐこと、そして欧州の銀行システムを強化することだ。肝心なのは、これらをどう実践するか、だ」と一定の評価をしながらも、今後の見通しには楽観的ではない。だから「レトリックとは裏腹に、今回の首脳会議は説得力のあるものではなく、危機管理に必要な政治的指導力が生まれた瞬間でもなかった」と述べている。
 エコノミスト(10/29号)社説の評価はもっと厳しい。「今週(10月下旬)の首脳会議は、ユーロ危機に終止符を打つはずだった。だが、そうはならなかった」と断言した。そして、「よく見ると、この救済策には明らかに幾つかの穴がある。その方法は混乱していて、説得力に欠ける。“混乱”というのは、金融工学が巧妙過ぎる上、意図せぬ結果に対して無防備だからだ。あまりにも多くの具体的事項が不足していて、根本的にユーロ防衛の任に堪えられないものであり、結果として説得力不足の内容だ」。
 また、「今回の首脳会議で最も目立つ成果は、民間部門が保有するギリシャ国債の元本を50%削減すると合意したことだ」と評価しながらも、「ギリシャの債務減免の“対”として不可欠な措置は、多額の債務を抱えているが支払い能力はあるイタリアなどの国の周囲に確実な防火壁を築くことだ。信頼を回復させ、欧州の銀行のバランスシートを保護して銀行が融資業務を続けられるようにするためには、それが唯一の方法なのだ。だが、今回の包括策では、EFSF(欧州金融安定機関)には、イタリアやスペインで取り付け騒ぎが起こった場合に耐えられるだけの資金はない。支援を無制限に供給できる唯一の資金源であるECB(欧州中央銀行)は、ドイツとECB自身の反対で除外された。ユーロ圏北部の債権国は、更に多くの資金を拠出することを拒んでいる。それに、ドイツがEFSFへの拠出金の追加を渋っているのに、なぜ中国やブラジルが多額の資金を投じるだろうか」と批判している。 
 「中国からの施し」と題したNYT(11/8)社説は、サルコジ仏大統領やEFSFのレグリングCEO(最高経営責任者)が今回のユーロ圏救済のため中国に出資協力を要請していることについて、「中国の外貨準備高は3兆ドルを超え、その約4分の1を欧州の債券に投資している。しかし、豊かな欧州が中国に施しを求めることはみっともないばかりか、政策としても良くない。(そんなことをすれば)中国は欧州への資金協力をテコに、人民元安や人権問題に対する欧州の批判の声を黙らせようとするだろう。支払う対価としては高過ぎる」と反対している。
 そして、「欧州の混乱を解決する上での主要な障害は、自前の資金を使うという政治的意思が欠けていることである。救済のための資金1.4兆ドルはユーロ圏のGDP(国内総生産)の10%をわずかに超える程度である」と指摘した上で、「中国の輸出の補助金となっている、人為的に過小評価された為替レートや低利の信用供与、外国の知的財産の無断使用、国内産業を不当に有利にする原料の違法な輸出禁止など、中国の略奪的貿易政策は全て世界経済の問題になっている。欧州および米国は、抵抗する更なる力を中国に与えるのでなく、そのやり方を変えるよう圧力をかけるべきである」と論じている。これは FT(11/1)社説でも主張された論点である。 
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