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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/11月10日〜’11/11月30日)

 この期間、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加について、主要各紙誌は概ね好意的に論評し、世界の自由貿易への貢献の可能性を歓迎している。また、ハワイでのAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議からバリ島でのEAS(東アジアサミット)までの一連の国際会議で、オバマ大統領が示した米国外交戦略の「アジア太平洋シフト」について、TPPや東南アジア諸国の反応も含め、この地域で台頭する中国を牽制するものとして肯定的な論評が多いが、中国を締め出すのでなく、取り込む必要を説く論調(FTなど)も見られた。
 この関係で、これまでの閉鎖的、強圧的な軍事政権からの転換を目指し、中国離れに動くかのように見えるミャンマー新政権に対して米国が好意的に反応し、クリントン国務長官を派遣したことについてタイムズ、FT、WPなどが歓迎しながら、関係改善はミャンマーの民主化への改革に合わせて慎重に進めるべきだと論じている。
 
 日本のTPP交渉参加について、WP(11/12)社説は「(バブル崩壊後)日本は漂流を続けている。高齢化と経済の停滞、そして壊滅的な東日本大震災にふらつく日本には、世界との経済関係をどうするかを含めて構造的改革が必要である。より開かれた日本は米国にも利益をもたらすものであり、米国は世界でいまだ第3の経済大国である日本への市場アクセスの改善を長年求めてきた。だから、野田首相のTPP交渉参加の決定は、日本のグローバルな役割における歴史的な変化となる可能性があるばかりでなく、米日関係の新たな発展が期待できる」と述べている。
 その上で、「しかし、野田首相の決定は、暫定的で簡単に挫折したり覆されたりするものだと見られがちであるし、それはあながち間違っていない」と警戒的である。
 WSJ(11/14)社説も「野田首相がTPPへの日本の交渉参加の方針を明らかにしたことは、世界貿易の自由化に向けて大きな一歩となる可能性がある。成功すれば、TPPの参加国で世界経済の35%を占めることになり(編集注:カナダ、メキシコも交渉参加を表明したため、これらを入れると世界経済の40%になる)、将来のWTO(世界貿易機関)の合意の枠組みとなるだろう」と論評、「TPPの合意を完全に実施する政治的意思があれば、最大の勝者は日本になる」と述べている。そして、国内の反対にもかかわらず、「TPPの交渉は、日本にとって歴史的な機会なのである。日本の政治家が多くの既得権益よりも国益を優先させることができれば、日本経済は“第三の開国”と呼ばれるにふさわしい飛躍を遂げる可能性がある」としている。
 エコノミスト(11/19号)社説は見出しで「環太平洋の貿易を自由化するという刺激的な構想は、米国と特に日本の勇気いかんにかかっている」として、野田首相のTPP交渉参加発表を「非常に大胆な行動である。合意に署名することになれば、日本にとってはコメに掛けられている800%の関税や、日本から米国への輸出と米国から日本への輸入が65対1という自動車貿易が劇的に変わることを意味する。また、野田首相の決定は(TPPの傍観者であったカナダ、メキシコの交渉参加に繋がったように)、日米が手を組み、さらに他の国々もTPP参加に駆り立てることによって、TPPの今後の見通しをも変える可能性がある」と日本の参加に期待を示している。
 そして「TPPに参加することで、日本は、日本経済の中でサービス産業のような時代遅れの部門を改革せざるを得なくなるであろうし、改革は日本の成長を促すことになろう。再活性化した日本は、より自由化されたアジア太平洋地域の活力をさらに強めるであろう。それは間違いなく戦う価値がある」と論じている。
 FT(11/15)社説は、「オバマ大統領は、現在のTPP参加9カ国に可能なら日本を加えて、2012年末までに『次世代の』通商協定に調印したいと考えている。日本から踏み込んだ合意を得ることは極めて難しいだろうが、日本なしではTPPは単なる寄せ集めの協定にしかならない」と日本の参加の重要性を認めているが、同時に「中国が参加しない協定は不完全だ」として、「今後は中国が協定の目標や基準を実現できるよう外交的な努力を払う必要がある」と主張している。
 
 オーストラリア議会での演説などオバマ大統領の一連のアジア太平洋重視の政策発表について、NYT(11/20)社説は、「就任初期には、オバマ大統領は中国に対して敬意を払い過ぎだった。先週のアジア訪問では、彼は、米国は太平洋において、いかなる譲歩もすることはないという明確なメッセージを送った。好ましいことである」と述べ、「オーストラリアでオバマ大統領は、来年からダーウィンの基地に2500人の海兵隊と海軍の艦船と飛行機を駐留させるというオーストラリア政府との合意を発表した。これは大きな数字ではないが、米国の関心を表す明確な意思表示である」と評価している。
 そして「ブッシュ前大統領と同様、オバマ大統領は、中国の指導者たちがより責任ある行動を取るようになることを期待して、中国に国際機関や国際合意に関与させることに政策の力点を置いている。それは健全な長期的戦略である。しかし、中国は、本気で持続的な反対を受けなければ、その経済的・軍事的影響力を使って近隣諸国に圧力をかけ恫喝することをはっきりさせている」として、なぜ米国の強い姿勢が必要かを述べている。
 WSJA(11/18)社説は、「中国の覇権主義に対抗するアセアン」の見出しで、米国のアジア太平洋重視と中国の軍事行動を牽制する政策を期待・歓迎するアセアンの動きに触れ、米国の対応を支持し、アセアンが共同して対抗することを呼び掛けている
 この社説は「中国は、インドネシア・バリ島で開かれる東アジアサミットで南シナ海の領有権問題を取り上げないよう加盟国に圧力をかけたが、逆に領有権問題はサミットの焦点になった」と指摘。その上で、「アセアンは、中国の自己主張の進行・拡大を止めるために拘束力のある行動規範を断固として要求している。さらに、米国は軍事上および外交の拠点を今や南アジアと東アジア中に拡大している。今週オーストラリアで発表した、ダーウィンに米海兵隊を駐留させるという合意は、その最も直近の例である。シンガポールは、米国の新型艦『LCS(沿海域戦闘艦)』の基地を提供する。ベトナムは、米海軍にメンテナンスと補修のためのカムラン湾使用を受け入れた。米軍機や艦船がアジア諸国の基地から出動するのを認める発表が今後も期待される」と述べ、「中国の冒険主義をアジア諸国が阻止する最良の方法は、共同戦線を張ることである。ここで危機にひんしている国際法の原則を守らなければ、中国はさらに大きな要求をしてもよいと思うだろう。中国が、大国としての振る舞いを習得するのは、まだまだ先のことだ」と論じている。
 この点でも、TPPに関して上に引用したFT(11/15) 社説は、「ワシントンは地域の力学が変動していることを強く認識しなければならない。インドネシアのユドヨノ大統領はAPEC首脳会議で、世界がもはや1つの超大国に支配されるべき時代ではないと語った」と指摘し、「太平洋で貿易と軍事の将来像を固めるには中国を巻き込まなければならない。米国が北京の利益を完全に無視していると見られたら、アジアへの関与を強める米国の意欲は裏目に出るだろう」と冷静に論じている。

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