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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’11/12月1日〜’12/1月11日)
 この期間、北朝鮮の金正日総書記の突然の死を受けて、北朝鮮や朝鮮半島情勢の今後とその対応について各紙誌が社説や解説、専門家の寄稿などで大々的に論評した。その中で、金正日後の北朝鮮と米国(およびその同盟国)が話し合いを続けるべき(FT)で、後継政権の下で路線変更するチャンスにも期待できる(NYT)とする主張のほか、甘い期待は持たずに北朝鮮にプレッシャーをかけ続け(WSJ)、“金王朝”の維持・継続による朝鮮半島の安定よりも北朝鮮崩壊によるレジームチェンジ(体制転換)が起きる可能性も考えるべきだ(エコノミスト)といった主張もあり、論調は分かれた。
 
 NYT(12/20)社説は、「所有する核兵器の増加と、常軌を逸した指導者が組み合わさっている北朝鮮における権力移行は、間違いなく困難を伴うだろう……(金正恩が)再び核実験や韓国攻撃など何か挑発的なことをする懸念がある。こうした政権移行期は非常に危険で、米国と同盟諸国が緊密、かつ慎重に連携することが必要だ。オバマ大統領が、朝鮮半島の安定と韓国の安全に対する米国のコミットメントを再確認したことは適切であった。しかし、オバマ大統領は、彼の政権が北朝鮮と話し合う用意があることを明確にする必要がある。米朝両国は最近、北への食糧援助と北の六者協議復帰について交渉していた。(北朝鮮が核問題に関する交渉に復帰することが)可能かどうか分からないが、金正日の死で、彼の後継者に路線を変更するチャンスが生まれたことは確かだ。米国と同盟諸国は、厳しい制裁を続けながらも、話し合いをする用意があるというはっきりとしたシグナルを出すべきだ」と述べている。
 FT(12/20)社説も同様に、「金正日の死去は恐らく重大な転機となるだろう……彼の死に伴う権力の継承は北朝鮮の疲弊した経済の復興だけでなく、世界で最も危険な地域に安定を取り戻す機会になり得る」としながらも、「金正恩は韓国への攻撃を強めることで勇気を証明したいと思うかもしれない。北の核計画が進めば、これは壊滅的な結果を招きかねない」と指摘して、「そのような不確実性があるので、国際社会の対応は慎重でなければならない。米国は最近、北朝鮮の核計画に関して北と二国間協議を再開し、ウラン濃縮計画停止の見返りに新たな食糧援助に合意したと伝えられている。このような協議はやめるべきではない。たとえ権力継承で交渉のペースが落ちることがあっても、北朝鮮が交渉のテーブルにとどまるよう仕向けるべきだ」と述べている。
 その上で、「より重要なことは、手に負えない事態に至った場合には、各国の連携が必要だ。中国は、北朝鮮の体制が崩壊した場合の緊急時対応計画を共同で準備しようという米政府の提案を、かつて拒否したことがある。(この問題で米中は)対話を再開する努力をすべきである。韓国、米国、日本は、民主主義体制の韓国の下での朝鮮統一を望まない中国とは戦略目的が異なるかもしれない。しかし、核兵器を保有した国の不安定な状況は誰の利益にもならない。悪夢のシナリオは、金王朝の崩壊ではなく、米中の部隊が北朝鮮の核施設を確保しようと国境を越えて突入する際に衝突が起こることである。そうした事態を避けることが優先されるべきである」と論じている。
 
 一方、WSJA(12/20)社説は、「金正日の突然の死で、世界からまたひとりの独裁者がいなくなったことになるが、悲劇なのは、恐らく死去によっても、彼の下で17年間続いた圧制から北朝鮮の国民を救うことにならないということである……金正日の死去によって、彼の後継者がこれらすべてを変えて世界への開放を目指すのではないかという、もっともな期待が寄せられている。しかしその可能性は低い」と厳しく見ている。
 そして、「最近、米国と韓国は北朝鮮に、人道的食糧援助の提供と引き換えに六者協議に戻るよう呼び掛けていた。それはこのような利益供与と、将来さらに大きな利益供与があるという希望によって北朝鮮がさらなる挑発行為をしなくなるのではないかという期待があるからだ。このような援助はこれまで、金正日が権力の座にとどまるのを助けただけであり、彼の後継者に対しても同じことになりそうだ」と指摘、「最善の策は、金正日が常に破ってきた類いの約束を今後さらにしても、その見返りに新たなエサを与えないことである。北からの『変わりたい』という『重要な意味のある』合図があるまで待つ方がよい。その日まで、西側は北朝鮮にプレッシャーをかけ続け、その国民を救う道を探すべきである」と述べている。
 エコノミスト(12/31号)社説は、「国境の不安定化を恐れる」中国が金体制を支援するから、北はすぐには崩壊しないだろうが、「中国のジレンマは、『何をしようと北朝鮮はいずれ崩壊する』という点にある。改革が進まなければ行き詰まる。一方、国を開放すれば、間違いなく金体制は終わりを迎える」とした上で、「中国は今こそ、(北朝鮮の)変化を進める方がいいということ、それも、コントロールしながらがいいということを、認めるべきである。たとえ北朝鮮の崩壊が無秩序な経過をたどったとしても、朝鮮半島が平和になれば、北朝鮮国民にとってばかりでなく中国を含む近隣諸国にとっても、その長期的な恩恵は潜在的な不安定化よりもはるかに大きい」と論じている。
 「残念ながら、現実に金体制を支持しているのは中国だけではない。米国(世界的な危機の再来を懸念)も韓国(国を丸ごと受け入れる負担を懸念。韓国の多くの若者にとって、北朝鮮はもはや外国としか思えない)も、そして日本(朝鮮半島の統一を懸念)も、残忍な体制を支えてきた。しかし、金体制が永遠に続くことはあり得ない。金一族に代わる体制についての話し合いを始めるのが早ければ早いほど、地域の安定だけでなく、忘れられ虐げられてきた北朝鮮の人々にとって良い結果がもたらされるはずだ」。
 この関連で、米国のCSIS(戦略国際問題研究所)のマイケル・グリーン上級顧問・日本部長も、WP(12/20)で、「国際情勢や国内の混乱により北朝鮮の指導体制にヒビ割れが生じれば、抑圧された2300万人の北朝鮮国民の解放や韓国との統一に繋がる可能性もある。突然の崩壊は、同時に大きな危険を招く。だからオバマ政権は北朝鮮にアプローチする時には安定をまず重視すべきだ。だからといって、北の体制崩壊にいかに対応すべきかについて、この地域の同盟国や他の大国との必要な計画立案や調整をする際に、それが障害になってはいけない」と述べている。
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