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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’12/1月8日〜’12/2月16日)
 この期間、2011年の日本の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落したことを取り上げた論評は少なかったが、日本経済の問題について考察し、日本経済はいわれるほどには悪くないのだというオピニオン記事が幾つか目立った。
 
 日本が昨年、31年ぶりに貿易赤字に陥ったことについてWSJ(1/27)でジョージ・メローン元WSJコラムニストは、「日本が世界の病んだ国のひとつだという評判は誇張されたものであり、単なる貿易赤字は大きな問題ではない。我々が憂慮すべきは米国の経済である」と述べ、特に日本の民間部門の「素晴らしさ」を繰り返し強調して、次のように論じている。
 「日本は、人口の高齢化や無能なガバナンス、未成熟の金融部門、巨大な政府債務など、よく目立つ弱点のために、その大きな経済の潜在力がしばしば過小評価される……それらはみんな現実の問題だが、そのために国民の目からすると、日本の民間部門の目覚ましい成果はかすんでしまう」。
 「日本を輸出マシンにつくり上げたといわれる産官連携は、1980年代でさえかなり過大評価されていた。日本の輸出の成功は、官僚の介入とはほとんど関係なかったのであり、ひとつの単純な事実と大いに関係していた。すなわち、日本の民間企業は、世界中の消費者の目を輝かせる素晴らしい製品を非常にうまく作れるようになった、という事実こそ重要なのだ」。
 「米国の製造業は悲観論者の主張にもかかわらず、衰退していないどころか、実際には過去10年の間に30数パーセント増えているという事実は、一部、米国にある日本企業の工場や技術のおかげである」。
 「貿易赤字に注意が向けられたため、日本の国のキャッシュフローは依然としてプラスだという事実がぼやけてしまっている……日本企業の海外での利益が消えてなくなるような世界的な経済危機が起こらない限り、日本の経常黒字は今後も続きそうだ」。
 NYT(1/8)でイーモン・フィングルトン(ジャーナリスト・作家、日本のバブル崩壊を著書で予言した)は「日本の失敗という神話」と題する長い論評を書いて、「日本は今や全く覇気のない国になってしまった。実際後退すらしている」という、CNNコメンテーターの見方に代表される日本のイメージは間違っているとして、「そのような日本の描写は神話である。いろいろな指標を見ても、日本経済は、1990年1月に始まった、いわゆる『失われた数十年』の間でも非常にうまくやってきた。幾つかの最も重要な指標では、米国よりはるかにうまくやってきた」と述べている。
 米国の約半分の失業率や巨額の経常黒字(2010年の1960億ドルは1989年の3倍以上で、その期間に米国の経常赤字は990億ドルから4710億ドルに膨れ上がった)のような経済の数字だけでなく、むしろ平均寿命を世界トップに伸ばした優れた医療、インターネットのインフラ構築での著しい進歩、ハイテク製品・携帯電話の世界に先駆けた普及、国民の間に広がるますます豊かなライフスタイル、などを挙げて次のように論じている。
 「このような話の多くは、量の問題ではなく質の問題に関するものなのだ。一例は、日本の外食文化である。『ミシュランガイド』によると、東京には世界のトップランクのレストランが16店もあるが、第2位のパリはわずか10店である。(GDP(国内総生産)で比べて日本は敗者だと見られているが)しかし、このことをGDPでどのように言い表せというのだろうか」。
 「(実際に日本に起こったことは、地政学的に非常に重要なことであるが、)米国人の通念を見事に出し抜きながら、日本はそれまで以上に洗練された産業基盤を着々と構築してきたのだ。事実、日本の製造業は、いわゆる生産財をつくるようになったのである。生産財は通常、高度な部品や材料、または高精度の製造装置から成り立っている。それらは消費者には見えないが、それらがなければ現代の世界は文字通り存在することはないだろう。こうした高度に資本集約的で技術集約的な製造業は、1950年代と1960年代に米国がほとんど独占していた業種であり、米国が経済的に世界をリードする上での基盤であったのだ」。
 そして「日本は、そうなってはならない警告の対象としてではなく、見習うべきモデルとして引き合いに出されるべきなのだ。国が奮起して一丸となって事に当たろうとするならば、最も見込みがない状況でさえもアドバンテージに変えることができる。そうしたモデルとして引き合いに出されるべきなのだ」と述べている。だが、思い出したように時々日本はまだまだ素晴らしい、と言われても、その記事のタイミングや意図に何かがあるのかと考えてしまう。
 
 しかし、実体経済はそう楽観的ではない。今月日銀が追加金融緩和と事実上の「インフレ目標」導入を決定したことについて、WSJA(2/15)社説は、「日銀は昨日、量的緩和策の予想外の拡大と 明確なインフレターゲットの発表でマーケットを活気付けた。発表のタイミングはサプライズであったが、その内容はそうではなかった」と述べて、追加金融緩和をあまり評価していない。
 その上で、次のように論じている。
 「日銀の対策決定には大きな問題がひとつある。日本の成長を妨げているのは金融政策ではないということである。日銀は長期国債の購入を10兆円増やして、資産買い入れ枠を30兆円にすると決定した。しかし日本には資本が足りないのではない……本当の問題は、日銀が市場に供給する資金に対する需要が少ないことである」。
 「本来なら日本企業は、もっと多くを投資していなければならないところだ。ハイテクや自動車のように伝統的に強い産業において、外国のライバルとの競争は日本企業に大きなプレッシャーをかけている。昨年の大震災とタイの洪水の影響を受けた円高とサプライチェーンの混乱もまたそうである……だから、そのような投資が実際に起きていないという事実は、『アニマル・スピリッツ』の点で何か深刻な欠陥があることを示すものである。その解決策は、日本国内にもっとアグレッシブに投資するよう誘導することであって、ただたださらなる資金を経済に供給して溢れさせ、うまくいくことを願うことではないのだ。そのためには、政治家は構造改革に目を向けるべきである」。
 「日銀は、バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長がしようとしていることに歩調を合わせてインフレターゲットを導入したが、それは、円・ドル為替レートの相対的な安定に繋がるのかもしれない。これは、日本がしばしば行ってきた通貨切り下げ競争と同じではないが、やってみる価値のある目標である……FRBが低金利政策をいつまでも続ける可能性を示唆している時にそれを達成するのは容易なことではないだろう。しかし、成長を促すことに関しては、希望を捨ててはならない」。 
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