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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’12/4月13日〜’12/5月10日)

 この期間、民主党政権になって初めてホワイトハウスで行われたオバマ大統領との首脳会談や、首脳会談を控えた野田首相の政策・課題についての社説や記事が、一部の米紙(WSJA、WP)に掲載された。また、日本の経済・社会について英国が学ぶべきこととして論評したFTと、急速な人口の減少と高齢化に悩む日本をネガティブに取り上げたNYTの記事が見られた。
 
 日米首脳会談について、WP(5/2)社説は「オバマ大統領と野田首相の首脳会談は4月30日のワシントンで全くといっていいほど、注目されなかった。そのこと自体、かつての重要な同盟関係の相対的低下を物語っている。しかし、ホワイトハウスでの記者会見で集中した、北朝鮮や中国に関する質問の陰で見過ごされたものは、小さいが重要な意味を持つ外交面でのブレークスルーであった。すなわち、2年間に及ぶ沖縄の米軍基地をめぐる日米の行き詰まりに打開の兆しが出てきたことである。控えめに見ても、この合意は日米首脳会談が否定的なトップ記事になるのを防いだし、好意的に見れば、これによって、タイミングよく東アジアでの戦略的協力の強化への道が開かれることになるかもしれない」と述べている。
 そして、直前に発表された在日米軍再編計画に関する共同文書について、「この合意は、それ自体沖縄の基地問題を解決することにはならないが、日米の戦略的協力を(基地問題から)切り離し、新しい共同訓練計画などの構想を進めることが可能になるという。日米双方にとって、この妥協は高い政治的成熟度を反映している」と指摘し、「(鳩山首相の下で引き起こされた)日米安全保障関係の混乱」を経て、「今回の日米合意は日米関係の大きなトゲを抜き、これまで以上に必要になっている同盟関係の強化に向けての歓迎すべき第一歩である」と評価している。
 WP(4/19)で、野田首相に官邸でインタビューしたフレッド・ハイアット論説ページエディター(元WP東京支局長)は、「日本の問題は、欧州や米国のそれと少しも変わらない。つまり、民主主義国は今でもまだ国民を奮い立たせ難問に取り組むことができるのだろうか、というものである」とした上で、首相が、日本が直面する数多くの問題の中から消費税増税、原発再稼働、沖縄米軍基地問題、TPP(環太平洋経済連携協定)参加という4つの問題を選んで取り組む決意だ、と語ったことを紹介している。
 そして、「野田首相は、オバマ大統領との首脳会談で自分の政治基盤が強化されることを期待している」が「ワシントンには、どれほど野田首相を助けてやるべきかについて、ためらいがある。彼の前任者たちが中国と米国との間でバランスを取るという考えをもてあそんだ後に野田首相が出てきて、日米同盟関係を日本の戦略の中心に戻したことを米政権は評価している。しかし、日本の首相がメリーゴーラウンドのように目まぐるしく代わることと、約束を守れないことにいらだっている。たとえオバマ大統領との首脳会談が成功しても、野田政権は長くは続かないかもしれない。だから、ある程度、米国の腰の引けた態度は理解できる」と、米国の民主党政権評や野田首相評を示している。
 「比較的派手だが、何にも分かっていない首相が2人続いた後では、野田首相の堅実さは歓迎だ。もし野田首相が日本を、より持続可能な軌道に乗せることができれば、日本は、台頭する中国に対処する米国の力にもっとなることができるだろう。そしてもし彼が、日本が持続可能な道を歩むことを支持する政治家を、国民が懲らしめることのないように説得できれば、野田首相は他の民主主義国に対してひとつの手本を示すことができるかもしれない」と述べている。
 一方、WSJA (4/27) 社説は、TPP推進に対する野田首相の意欲が薄れているとして「オバマ大統領との首脳会談の席上、野田首相は日本の『第3の開国』となるTPP交渉への正式な参加発表をかねてから計画していた。伝統的に閉鎖性の強い日本経済にとって、TPPへの加盟は、ペリー提督の黒船来襲、第二次世界大戦後の米軍の日本占領に続く日本現代史の3回目の『大転換点』になるはずであった」と指摘。
 しかし、実際にはそうならなかったのは、「首相がTPPより格段に価値のない課題である消費税の5%から10%への引き上げを優先させてしまったからだ。財政赤字の削減、収支均衡を目指した措置とはいえ、日本のデフレ経済の下での税率の引き上げは、いつまでたっても学ぶことがないと批判される日本の政治家でさえも、馬鹿げた試みと認識している問題だ」と述べて、「これは野田首相が直面する大きな政治問題をクローズアップしている。つまり、国民が現段階では論外と考えている増税に猪突猛進するあまり、政府がここ数年真剣に考えてきた経済成長促進策を先送りしようとしていることだ」と厳しく批判している。
 
 日本経済・社会についてFT(4/11)でニック・ピアス英公共政策研究所所長はキャメロン英首相に宛てた「東京からのメモ」として、キャメロン首相の訪日や日産横浜工場訪問に触れて、「今日では、日本は沈滞した、バブル崩壊後の経済で、公的債務と高齢化に打ちひしがれていると見なされがちである。しかし、それは日本経済のほんの一部に過ぎない。実際は、日本は今でもなお、英国が(そして他の国々が)学ぶことのできる点を幾つか持っている」と述べている。
 そして、日本の特許申請数の多さ、イノベーションに対する熱意、強力な産学連携、また、メーカーとサプライヤー、銀行、政府省庁を結ぶ緊密なネットワークなどを指摘。中でも、「新幹線は素晴らしいインフラの代表的なものだ。それとは対照的に、我々のギシギシと軋む運輸システムと老朽化した住宅は、財政緊縮の時期に設備投資を削減してきた歴史を物語っている。しかし、日本人はインフラを建設するだけではない。彼らはそれを、例えば、JR東日本が新幹線を走らせるに当たっては、電力や、信号、列車、旅客サポートなどすべてを、一貫したシステムの中で管理している。そのコントロール・センターを訪問してみれば、2011年に大震災が発生した時に走っていた27本の新幹線は1本も脱線することなく、また、これまで新幹線の事故で誰ひとり死者が出ていない理由が分かるであろう」と述べている。
 一方、NYT(4/29)のコラムでロス・ダウサット氏は「出生率が非常に低く平均余命が高い日本は、やがて米国の退職後の高齢者居住地区であるパームスプリングスの人口構成と同じような特徴を持つようになるだろう」と述べて、急速な人口減少と高齢化によって変貌する日本の姿は、「P・D・ジェイムズの反ユートピア小説の中に描かれた子どもの生まれない(グロテスクな未来の)英国を連想させる」と述べて、明らかな偏見をもって日本をネガティブに描いている。そして、そのような日本の問題の原因について、「日本の文化が自由主義(リベラリズム)と伝統主義を、特にひどいやり方で組み合わせたものであるからだ」とか、「日本は世界の中で最も宗教的でない国のひとつであり、婚姻率は下がり、離婚率は北欧よりも高い」と間違った指摘をしたり、「米国では結婚せずに親になるのが当たり前になりつつあるのに対して、日本には伝統的に未婚の母になることを不名誉と見なす習慣が残っているため、日本人は結婚しないで子どものいない状態を選択している」と指摘、「未婚で出生率が高いのは、子どもが全く生まれないよりはましである……米国は様々な問題を抱えているにもかかわらず、21世紀の米国民は、日本と同じ衰退に向かっていないことに感謝すべきである」と述べているが、米国の一流紙といわれるNYTのコラムニストの「知性」はこの程度なのだ。 

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