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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’12/5月5日〜’12/6月14日)
 
 この期間、日本経済については、今年1~3月期のGDP(国内総生産)が高い伸びを示したことをWSJAFTが社説で取り上げてコメントしている。そのほかに、エコノミスト日本の原発全てが運転停止になったことについて「歴史的に重要な瞬間を迎えた」として社説で論評している。
 
 今年1~3月期のGDPの高い伸びについてFT(5/21)社説は、「第1四半期の、前期比1%、年率にして4.1%というGDPの伸びは、一時的な線香花火みたいなものだ。エコカー補助金や震災の復興事業の押し上げ効果は、徐々に衰えていくだろう。欧州の弱々しい需要と(地震と津波に襲われた後に日本の原発が稼働停止になった結果である)電気料金値上げの影響もさらに効いてくる。これに高齢化による経済活動の減退と社会保障費の増大が加わるとなれば、日本は安心して自己満足に浸っている余裕などない」と警告している。
 その上で、「とりわけ日本は、実質と名目両方の潜在成長率を引き上げる必要がある。名目成長率の引き上げには適度なインフレが必要だが、それはこの国ではもう15年間も味わったことのないものだ。その意味では、日銀が渋々ながらも、1%というインフレの『目途』(訳注:日銀は『中長期的な物価安定の目途』とし、英訳では『目標』ともとれるgoalが使われている)を導入したことは一歩前進である。日銀がこの目標を達成するには、利用する手段についてもっと創意工夫が必要となるし、そのうちにこれを2%に引き上げることも検討すべきだ。3~4%の名目成長率が数年続けば、GDP比200%に達している政府債務残高の削減に確実に寄与するだろう」と主張している。
 そして、「野田首相の消費税率引き上げ法案(現行の5%を2014年に8%に、2015年に10%に引き上げる)は幸先よいスタートだ。もし、この法案を成立させる対価が首相の地位を失うことであるなら、野田首相はこの対価を払うべきだ」と述べて、消費税増税を支持している。
 WSJA(5/24)社説も、「政府の財政支出が寄与し、驚くほど堅調な成長を示した。この力強い数字は、震災復興事業に対する財政支出によるものだ。また、エコカー補助金を復活させたことも個人消費の大きな伸びに貢献した。それなのになぜ、誰も喜んでいないのだろうか。皆が、この高い成長率が続かないことを知っているからだ」とFTと同様の指摘をしている。
 そして、「かつて世界第2位だった経済大国は、公共投資が民間主導型の成長を実現させる一助になるというケインズ理論の主張に対する反証の役割を果たしている。日本は長期間、作った道路をすぐに掘り返すことを繰り返してきたが、第1四半期の数字が示すように、この国では民間主導による成長がまだ実現していない。公営企業の民営化に再度取り組んだり、野田首相が打ち出している自由貿易政策を進めるといった経済の活性化案がないような状態では、それをどうやって実現させていくのか見極めることは難しい。日本の有権者はそのうち、このような偽りの期待を持ち続けることはできないと決断するだろう」と述べている。
今回は5月5日~6月14日までの紙誌面を分析したものである。
 この点で、FT(5/14)でミュア・ディッキ東京支局長は、「日本の政治家たちは、小泉政権時代の郵政民営化計画を骨抜きにしたが、それによって世界第3位の経済大国を復活させるビジョンのひとつをきっぱり否定したのだ。残念なことに、彼らはそれに代わるような(成長戦略の)代替策を提示していない」と、民主党が野党・自民党らと一緒になって日本郵政の金融部門の完全民営化の期限を撤廃する法案を可決したことをコラムで批判的に論じている。そして、小泉首相以降に誕生した6人の首相が誰も、「(小泉首相の郵政民営化の半分にも及ばない)目を見張るような施策を打ち出していない」として、「成長戦略が描けない」歴代政権を批判している。「問題の一端は、小泉氏と異なり人気がない首相の率いる最近の政権が、既得権益にメスを入れることに及び腰なことにある」と指摘している。
 
 日本の原発54基全てが運転停止になったことについてエコノミスト(5/5号)は、「半世紀ぶりに日本の原子力発電がゼロになった」という書き出しで、次のように論じている。
 「日本は、歴史的な瞬間を迎えている。広島と長崎への原爆投下がもたらした原子力に対する恐怖を克服した後、日本は原子力の熱烈な支持国となった。昨年の震災までは、日本は2030年までに電力の半分を原子力で供給しようと計画していた。全ての原発の停止は、そうした情熱の終わりを告げている。世論調査によれば、国民が原発再稼働に消極的なのは、政府の危機対応に対する無言の非難を示している」。
 「幾つかの点で、現在の混乱を招いた責任は、野田首相と与党・民主党にある。野田首相は、再稼働させようとした原発が、2011年3月11日と同規模の大地震や津波に対しても安全だと判断した。しかし、安全評価を監督してきたのは、原子力安全・保安院と原子力安全委員会という、昨年の事故でその評判が地に落ちた2つの政府規制組織だ。これらの組織に欠けていた透明性と独立性、専門的能力を備えた新しい監督機関がまだ発足していないこの段階で、政府は再稼働に向けて動き始めた。3.11後の混乱を招いた大きな原因である事故対応の指揮系統を明確化する努力も、いまだ何ひとつなされていないし、福島の原発事故に対する政府と国会の調査も完了していない。原子力業界は今も、『原発は十分に安全だから機能不全に陥ることはない』と主張した人々の管理下にある」。
 この関連で、WSJA(5/17)のジョゼフ・スターンバーグ「ビジネス・アジア」エディターは自身のコラムで、原発を再稼働できない日本の状況に触れながら、再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」について、「この制度の下で政府は7月1日から国内の電力会社に太陽光や風力、地熱などで発電された電力を発電事業者から高価格で買い取ることを義務付ける。この目的は、電力の供給源の多様化を奨励し、原子力や化石燃料への依存から脱却することにある。固定価格買い取り制度がとんでもないアイデアだということは、ほとんどの国についていえる。環境保護主義者たちをなだめ、グリーン事業者の私腹を肥やすために、市場参加者は、非常に高いコスト、不安定な供給、従来の発電手段に取って代わることを望むべくもない少ない電力量など、再生可能エネルギーの経済効率の悪さに、無理やり目をつぶるようにさせられる。消費者にとっては低炭素にかこつけた“ぼったくり”でしかない」とWSJらしく、この制度を厳しく批判している。
 しかし、「普通ではない日本の経済」には、この制度は効果があるとして、次のように述べている。「他の先進国では程度の違いこそあれ、電力事業の自由化が進んでいるのに、日本は本気で自由化に取り組んだことがない。それどころか、日本は、垂直的に統合された電力会社10社が発電と送電の分野で地域独占の恩恵に浴する仕組みを、意図的にあるいは惰性で、維持してきた。これは、世界最高水準の電気料金などの非効率をもたらしている。だから固定価格買い取り制度は、現時点で、そうした独占体制を少しずつ崩していくのに最も有効な手段かもしれない」。 
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