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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’12/6月15日〜’12/7月12日)
 この期間、消費税増税をめぐって小沢一郎元代表ら50人の議員が離党した民主党の分裂を主要各紙が一斉に報じている。FTは社説でも取り上げてコメントしている。また、東京電力福島第一原発事故の国会事故調査委員会が出した最終報告書が、特に英語版の要約の中で、事故は「日本文化に根差した慣習」によって生じた「メード・イン・ジャパン(日本製)の災害であった」と強調したことについて、幾つかの主要紙が取り上げて反論している。
 
 民主党の分裂について、FTWPは、小沢グループの離党は、野田首相にとって「致命的ではない」し「新党の影響力は限定的」(FT)で、「野田首相に決定的なダメージを与えることができなかった」(WP)とし、両紙とも小沢氏の離党によって野田首相は党内をまとめやすくなり、党運営がやりやすくなる、としている。
 一方、NYTは、「かろうじて衆議院の過半数を維持したものの、人気のない野田政権は新たな敗北を喫した」との見方を示しており、WSJAも小沢氏の離党によって「政権の基盤が揺らぐことになった」として、「今後離党者が増えれば、野田首相が退任に追い込まれる可能性もある」との見方も示している。
 各紙の主なコメント。
FT(7/3)社説:小沢氏がさらなる離党者を集めない限り、今回の離党は致命的ではない。民主党は衆議院で過半数を維持している。その上、野田氏は小沢氏が出て行ってせいせいしたと考えるだろう。次々と党を分裂させるので、「壊し屋」と呼ばれる小沢氏が同じ党内にいるのは、外にいるよりももっと厄介だ。
 実際に、野田氏が現在、5%の消費税を2015年までに10%に引き上げる改革を断固として求めたことは正しかった。長い間、政治的に自殺行為だと見られていたこの増税は、日本の政治家は何も実行できないという印象を否定してみせただけではない。政策はそれ自体正しいのだ
 
FT(7/3)ミュア・ディッキ東京支局長:専門家によれば、彼らの離党は対立の絶えない与党内部のごたごたを緩和する可能性がある。多くの政治評論家によると、小沢氏の新党にはベテラン政治家がほとんど加わらないので、新党の影響力は限定的であるという。離党した多くの議員は、次の選挙で困難な戦いを強いられると予想される。
 
WP(7/2)チコ・ハーラン東アジア総局長:陰の実力者、小沢一郎と49人の小沢派議員の離党は、野田首相に対して決定的なダメージを与えることができなかった。ずっと前から予想されていたこの反乱で、首相の党は国会での過半数割れに追い込まれることなく生き残った。専門家によれば、野田首相は今では、以前より小さいが、よりよくまとまった党を率いることになるので、今後はもう彼の政策を最も声高に非難する者をなだめる心配をしなくてもよくなる
 
NYT(7/3)マーティン・ファクラー東京支局長:民主党内最大の派閥が消費税増税法案の採決で造反して離党、かろうじて衆議院の過半数を維持したものの、人気のない野田政権は新たな敗北を喫した
 離党の結果、民主党の衆院(定数480)での議席は251となった。このことは、野党がすでに参院で多数を占めている中で、国会における民主党の基盤が弱体化し、日本の慢性的な政治麻痺がさらに悪化する可能性がある。これはまた、すでに低迷している野田氏の民主党の支持率をさらに下げることになりそうだ。2009年に民主党は、“動脈硬化”に陥った日本の戦後体制を改革するという約束を掲げて、半世紀に及んだ自民党政権を終わらせた。この時の約束が果たせなかったため、幻滅した多くの国民は、政策や、また、原子力産業のような強力な既得権益との関係においても、前政権の自民党と民主党は、ますます似てきた、と言っている
 
WSJA(7/3)ジョージ・ニシヤマ特派員ほか:民主党の小沢一郎元代表は49人の議員と共に離党したが、野田首相が消費税増税法案の可決を勝ち取って1週間も経たないうちに、政権の基盤が揺らぐことになった
 彼らの離党後、民主党は衆議院でかろうじて過半数を維持することになるが、離党者が増えれば野田首相は退任に追い込まれる可能性もある。民主党率いる連立与党は55人の議員が離党すれば衆議院で過半数割れとなり、首相の不信任案を否決できなくなる。自民党と公明党の2大野党は増税案を支持したが、8月に法案が成立した後は内閣不信任決議案を提出するとしている
 小沢氏の信条は国民の意見を反映しているかもしれないが、小沢氏自身は日本で最も人気のない政治家のひとりだ。政治資金規正法違反の裁判でまだ被告であり、それもまた同氏の評判を傷つけている。世論調査によれば、有権者の圧倒的多数が小沢氏の離党を支持しないと回答している。共同通信社が行った世論調査では、回答者の60%が、なぜ小沢氏らが増税法案に反対票を投じたのか理解できないと回答、また、80%が小沢氏の新党に期待しないと回答した。
 
 国会事故調の最終報告について米コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授はFT(7/10)で、「報告書は、国民の安全よりも電力会社の利益を優先し、地震多発国における原発の大事故のリスクを故意に無視した日本の『原子力ムラ』内部のなれ合いの文化について描いている。(しかし)この報告書のどこを探してみても、責めを負うべきは誰なのか分からない」と述べている。
 そして、報告書が、「これは“メード・イン・ジャパン”(日本製)の災害であった。事故の根源的な原因は、日本文化に深く根差した慣習、すなわち、反射的な従順さや権威を疑ってみることをしたがらない態度、『計画を守り通す』ことへの情熱、集団主義、島国根性など、の中に求められる。今回の事故の責任を負う立場に他の日本人が座っていたとしても、結果は同じものになった可能性は十分ある」と述べていることを取り上げて、「責任を文化のせいにするのは究極の責任逃れである。もし文化が行動を説明できるのであれば、誰も責任を取らなくてよくなる。違う人がその任にあっても結果は同じであっただろうという指摘は、まさに誰も責任を取らなくてよいというのが報告書の結論である」と強く反論している。
 ミュア・ディッキ東京支局長はFT(7/9)の「文化のせいにしては将来の原発危機を防げない」と題したコラムで、また、リチャード・ロイド・パリー東京支局長はタイムズ(7/6)の「それでも人間に責任がある」と題した解説で、カーティス教授と同様に、事故の原因を文化のせいにすることはばかげていると批判している。
 WP(7/6)社説は「あの巨大な地震と津波は、いかなる人間のコントロールも及ばない自然災害であった。しかし、委員会の報告書は、福島原発で起こった多くの間違いは――津波の前も、その最中も、その後も――ほとんど全部が人間による過失であったことを示している」と指摘して、次のように警告する。
 「原子力は、その管理に厳格な注意、規律と同様に、その状態や危険に関する国民への情報公開が要求される。チェルノブイリとスリーマイル島事故はこのことについて、極めて重要な教訓を与えてくれた。残念ながら、福島原発事故の報告書は、これらの教訓から日本が学ばなかったことを示している」。
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