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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’12/8月10日〜’12/9月5日)
 この期間、韓国の李明博大統領が竹島を訪問し、この島をめぐる領土問題が日韓で再燃、また中国人活動家たちが尖閣諸島・魚釣島に上陸し日中の領有権争いがエスカレート、日本政府による尖閣諸島の国有化を前にして、中国全土で反日デモが繰り広げられた。これらの事件は、南シナ海でますます強硬に領有権を主張して、周辺国との対立を強めている中国の一連の動きや、そのような中国の台頭に対抗する米オバマ政権の戦略・外交の「アジアシフト」と併せて、多くの記事、社説で論評された。
 
 尖閣諸島をめぐる日中の対立について、特にFTエコノミストは社説で日中双方に冷静な対応を呼び掛けている。FT(8/22)社説は「日中の緊張状態が再び高まっている。直接の原因は、日本が実効支配する尖閣諸島の5つの無人島と3つの岩礁である。本当の原因は国のプライドと前の戦争からのやり残した仕事である」と述べ、「(東京都または日本政府が島を購入すれば)領有権争いはエスカレートするかもしれない。日本政府は、米政府が尖閣諸島は日米安保条約の対象になっていることを確認済みだという。それは、理論的には、もし中国が愚かにも攻撃するようなことがあれば、米国の兵隊がその無人島を防衛するために命を懸けるということを意味するのだ」と、懸念を示している。その上で、次のように慎重な対応を求めている。
 「中国も日本も、強硬な姿勢を見せなければならない国内からの大きなプレッシャーを受けている。しかし双方とも、緊張を冷まし、激しいナショナリズムの高まりを抑える方法を見つけなければならない。両国は、良好な外交関係を維持し、数年前、日中間の首脳レベルの交流が事実上凍結されてしまったようなことを繰り返すリスクを冒さないことが必要だ。また、尖閣問題がほかの問題と結び付けられるべきではない。2010年に日本政府が尖閣諸島周辺で中国漁船の船長を逮捕したのを受けて、中国政府は、日本のメーカーにとって極めて重要なレアアースの対日輸出を停止した。日本政府もまた意味のない報復措置を取るのを避けなければならない。韓国に対しては、(竹島の)領有権争いで、通貨スワップ協定の見直しによって報復することを示唆した。これは間違った戦略である」。
 エコノミスト(8/25号)社説も同様に、尖閣の問題では、日中両国が「現実的な態度で臨むべきだ」と述べて、これが紛争に発展するのを避けるために、次のような対策を提案している。
 「両国間にホットラインを設けるだけでなく、いつでも電話に出るという確約を中国側から引き出さなければならない」。
 「武力行使は選択肢にないことを両国は明確にすべきだ。中国はいまだに政府の船舶を時折日本の領海に送り込んでいるが、そのようなことはもうしないと約束しなければならない。また、尖閣諸島での軍事演習を提案した中国人民解放軍の将軍のような、軍国主義の強硬派に、もっと断固とした態度で対処しなければならない」。
 「両国は2008年、領有権を争っている東シナ海のガス田を共同開発する枠組みに合意したが、2010年、尖閣諸島近海で中国の漁船が日本の海上保安庁の船に体当たりし、中国はせっかくの成果を台無しにしてしまった」。
 「尖閣諸島は今後も無人島にしておくという確約が伴えば、国が買い取るという野田首相の提案は価値あるものになる」。
 「『エコノミスト』は、尖閣諸島とその近海(さらには日本と韓国で領有権が争われているほかの小島も含め)を、海洋保護区にすることで両国が合意してはどうか、と提案する」。
 一方、NYT(8/22)のファクラー東京支局長は、尖閣のルポの中で「日本では、少数のナショナリストたちが、中国や韓国の経済的台頭と急速に拡大する中国の領土への野心に対抗するため、日本がもっと大胆に自己主張するよう要求している。ナショナリストたちは、政府の政治基盤の弱さをいいことに、政府与党に尖閣諸島に関して、より強硬な態度を取らせることによって、彼らの主張の勢いを増している」と、ことさらに「日本のナショナリストたちの役割」を指摘している。
 そして、「日本と東アジアの隣国、中国や韓国といった国々との領土問題をめぐる、ますます激しくなる言葉の応酬は、それ(南シナ海)以上に危険をはらんでいる可能性がある。各国間の摩擦の原因が資源の取り合いにある南シナ海とは違って、東アジアでの島をめぐる領有権争いの要因は、多分に歴史問題であり、数十年前の日本の残忍な支配に対する、いつまでも消えないで火が付きやすい、怒りだということである」という専門家の見方を紹介している。
 また「さらに、米国にとってはそれ以上に大きな危険は(今すぐということではないけれども)、中国と日本の武力紛争に巻き込まれる可能性があるということだ。それは米国が(日米安保)条約によって日本を防衛する義務を負っているからである」と述べて米国の懸念を示している。この懸念は、英国のFTエコノミストも取り上げている。
 
 竹島問題については、エコノミスト(8/18号)が「アジアでのプレゼンスを強化したいと考えている時でさえ、この地域で米国の同盟国がうまくやっていけないのは、絶望的でさえある」と述べて、日韓両国が領土問題で対立していることにいら立つ米国という視点の記事を出している。
 その中で、李明博大統領が竹島を訪問し、日本政府の従軍慰安婦問題に対する対応を非難、さらに、「日本の天皇は植民地支配を心から深くわびるのでなければ韓国に『来る必要はない』と断言した」ことについて、同誌は「(2008年に天皇に訪韓の招待をした)李大統領がかつて言った、この地域が歴史問題を終わらせるのに役立つ『未来志向の』外交というのはどこへ行ってしまったのか」と批判的である。
 「2009年に民主党が政権に就いてから、日本の対韓政策は融和的であった。菅直人首相は、日韓併合100周年の際には過度の謝罪を行った。天皇は長い間、称賛すべき習慣を続けて、日本の侵略を謝罪してきた。さらに、日本の新しい防衛白書では、地域安全保障と協力の重要性をうたっている。そこでは、韓国を、『歴史的にも、経済や文化の分野で、最も緊密な関係を共有する』国として扱っているのだ。それでも、これを公に認める勇気のある韓国人はほとんどいない。李大統領の前代未聞の行動で日本の民主党のせっかくの努力は無になる危険がある」と述べている。
 
 同様に深刻化する南シナ海での領有権争いについて、NYT(8/19)社説は、「中国が影響力を行使するために、その経済力と海軍や商船を強引に利用することが、この地域の力学を変え、より弱小な近隣諸国の多くを不安にさせているということに疑問の余地はない。中国政府の野望は大きい。(中国南海研究院の)呉士存(Wu Shicun)院長は本紙に、中国は南シナ海の80%を支配したい、と語った」と指摘している。そして、「(中国の主権に関することに口出しするのをやめろという)中国の外交的暴言を無視して、米国政府はこのような紛争に対して平和的な解決を求める役割を果たし続けるべきだ」と力説している。
 一方、日本が尖閣諸島に「上陸または接近した14人の中国人を逮捕して、強制送還したが、それによって中国政府との対立に発展するのを防いだ」と日本の対応を評価している。 
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