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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’12/10月4日〜’12/11月8日)

 この期間、11月6日の米大統領選挙でオバマ大統領が共和党のロムニー候補を下し再選を果たしたことを受けて英米各紙が社説や解説記事で論評している。各紙とも、年末に迫った「財政の崖」を回避して財政再建と景気回復を進めることと分断された米国を再び団結させることを2期目のオバマ大統領の課題として挙げている。外交面では特に、イラン、シリアなど中東地域の問題と並んで、アジアシフトの中での中国との関係見直しについて触れている記事も見られた。
 
 「今から本当にきつい仕事が始まる」と見出しで喝破したWP(11/7)社説は、「大統領はつかの間のお祝いを済ませたら、米国がリセッション(景気後退)に逆戻りしないように、迫りくる増税と歳出削減による『財政の崖』に集中して取り組まなければならない」と強調して、次のように指摘している。
 「最も大事なことは、オバマ大統領が、1期目では避けていた、社会保障給付金、中でも高齢者向け医療保険制度のメディケアの給付金の改革や、持続不可能な債務の削減などの問題に対し、さらなる意欲というより、実際にはさらなる勇気を持って取り組むかどうかである。オバマ大統領が約束した、長期的に支出削減と増税のバランスを取っていくというのは正しい。彼は社会保障給付金改革で与党民主党の支持を取り付けなければならないし、抵抗する共和党に対しては、より高い経済成長などという希望的観測を当てにせず、税収増を図る必要性があると認めさせなくてはならない」。
 そして、「一つの米国」(団結した米国)の課題については、「オバマ大統領の成功の真の物差し、そして彼の大統領在任期間の究極の評価は、彼が4年前に候補者として、あれほど米国民を興奮させた公約の幾つかをこの2期目に果たすことができるかどうかにかかっている。イデオロギーの対立を克服すると約束しながら、それが気が遠くなるような困難な問題だと分かった社会の分裂を、2期目のオバマ大統領は緩和できるのだろうか」と述べている。
 
 NYT(11/7)社説は、「オバマ大統領の劇的な再選勝利は、分裂した国家がついに選挙の日に団結したということを示すものではない。雇用の拡大、医療制度改革、増税、均衡の取れた赤字削減を重視する経済政策と、移民、妊娠中絶、同性婚についての穏健な政策に対する強い支持であったのだ」と論評している。
 オバマ大統領(または民主党)の産業政策について、「大統領の勝利には、オハイオ州のような中西部の『ラストベルト』工業地帯での勝利が大きく貢献している。ここでは、オバマ大統領が立案しロムニー候補が反対した、国家による自動車産業の救済がうまくいったという理由だけで、広く住民の支持を得たのである。中西部の有権者は、政府には民間部門の雇用創出と経済拡大に果たす重要な役割があるという大統領の議論を支持したように見える。彼らは、連邦政府はそのような事柄には関わらないで自由市場に思い通りにさせるべきだ、というロムニー候補の立場を否定したのだ」とオバマ再選を支持した新聞らしく大統領に好意的に述べている。
 
 一方ロムニー候補を支持したWSJA(11/8)社説は「1期目はおろか2期目における政策についてほとんど語らなかった」オバマ大統領が勝利したのは、ロムニー候補に対するネガティブキャンペーンによるもので、「有権者は経験よりも希望に賭けたということだ」と述べて、「オバマ大統領は、選挙運動で彼が容赦なく分裂させようとしたこの米国をこれから統治していかなければならないのだ」と厳しく突き放している。
 
 FT(11/8)社説は「雇用統計が良くなったとしても、米経済はまだ良い状態にあるとはいえず、オバマ大統領は傍観しているわけにはいかない。企業の景況感を改善し、特に税や規制に関する不安に対処しなければならない。企業には、本当の景気回復の時に見られるアニマルスピリットがまだ欠けている。大統領はそのような意欲を助長するために、あらゆる手段を講じるべきだ」と述べて、「オバマ大統領の当面の最大の課題は来年初めに迫りくる財政の崖にどう対処するかである。合意ができれば、米国経済が再びリセッションに逆戻りするリスクを回避できるだけでなく、幅広い税制改革の基礎をつくることができる可能性がある」と論じている。
 そして、「交渉が間もなく始まるが、オバマ大統領は共和党に協調を呼び掛ける新たな努力をすべきである。大統領は彼らが拒否できない取引を提案すべきだ。例えば、社会保障給付金の改革について譲歩するといったことが考えられる。確かに、これにはリスクも伴うが、財政の崖が回避できなかった場合でも、それは共和党側の非妥協的な姿勢のせいで、大統領の方に解決しようとする決意が欠けていたからではないと自信をもって言うことができるのだから」と述べている。
 
 タイムズ(11/8)社説は、「米国は変わりつつある……拡大するヒスパニック(中南米系)社会がオバマ大統領に圧倒的に投票したアフリカ系米国人に加わり、新しい米国が形を現し始めている」と指摘して、オバマ大統領の勝利は、「この事実を認識していた」からであり、「共和党はまだそれを理解していない」と述べている。そして、「オバマ大統領にとっての試金石は、この新しい米国を統治できるかどうかである――つまり、オバマ大統領は人口構成や取り巻く環境が急速に変わりつつあるこの米国にうまく対応できる大統領となれるかどうかである」。
 さらに「オバマ大統領が今また指導者となった新しい米国は世界におけるその役割をあらためて決める必要がある。心に傷を残したイラクとアフガニスタンの戦争の経験から、米国はアラブの春にどのように対応すべきか判断しかねている。これは、イランにおける民主化要求のデモにオバマ大統領が対応できなかったことがその最たる例である。オバマ大統領の課題は、新しい世代、用心深い世代に、米国が国際問題に関与する必要性を受け入れさせることである」と論じている。
 
 この点については、WP(11/7)社説も、「3万人の市民が殺害されたシリアで示した優柔不断さは、オバマ大統領1期目の実績の中の特別の汚点であり、2期目で修正すべきである」と述べて、オバマ大統領の消極姿勢を批判している。
 
 外交の課題について、WSJ(11/7)でジェイ・ソロモン記者は、「中国の経済力の拡大と太平洋における軍事力の増強を考えると、オバマ大統領は2期目では対中政策を強化しなければならないだろう」と述べている。
 そして、さらに次のように指摘する。
 「米政権関係者や外交専門家によると、米国の台湾への兵器供与の継続について、大統領が中国から新たな抗議を受けることが予想される。さらに、アジアの多くの政府関係者は、東シナ海の島(尖閣諸島)を巡る日本と中国の領有権争いがさらにエスカレートして、日本と同盟関係にある米国が、より大きな役割を果たすよう追い込まれることを恐れている」。
 「オバマ政権はこの1年、アジア地域の経済成長と中国の影響力の増大を受けて、米国の戦略の重点を中東からアジアにシフトすることを喧伝している。そして大統領選挙戦で、共和党のロムニー候補は、中国を封じ込めるために米海軍の能力を強化すると公約していた。しかし、オバマ大統領が今後4年間で米軍を中東から大幅にシフトできるということを信じる軍事専門家はほとんどいない」。 

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