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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’12/11月9日〜’12/12月13日)
 この期間、中国共産党第18回全国代表大会で習近平国家副主席が胡錦濤氏に代わって、党総書記に就任したことを取り上げて、中国新指導部の課題などを主要各紙誌が社説で論じている。
 
 NYT(11/14)社説は、習近平氏は「この10年間驚異的な躍進を遂げた反面、圧倒されるほどの国内外の難問に直面している国を支配することになる」と直面する問題の大きさを指摘して次のように述べている。
 「胡錦濤氏は、軍事力や海外での政治的影響力に自信を強めている政府を習近平氏に引き継ごうとしている。しかし、胡氏は南シナ海や東シナ海の島や浅瀬をめぐる領有権問題、特に、うまく処理することができなかった日本との領有権問題も引き継ごうとしている。中国新指導部はまた、米国との関係をどうすべきかについても決めなければならない。中国の軍事力の拡大とオバマ政権のアジア回帰(アジアシフト)は新たな摩擦と不信を生んだ。3月には国家主席に就任することになっている習氏がこの問題にどうかじを切っていくかは、成長を続ける中国経済にも、そして米中両国による地域の問題、国際問題への取り組み方にも影響を与える」。
 
 タイムズ(11/16)社説は、「(党大会最終日の演説で)習氏が語らなかったことは複数政党制度(政治改革)のことであった――どのような形で、いつ可能になるのか。それどころか、基本的には中国共産党の『確固たる指導力』を継続するための方策を語ったのであった。これは今後の10年の困難さを示している。政治改革へのプレッシャーを良い方向に向かわせる何らかのメカニズムがなくては、急速に変化する中国社会と統治する権利を主張する共産党とを繋ぐ絆は、遅かれ早かれ限界点に達するだろう」と政治改革が避けられないことを指摘している。
 そして、「習氏は初めから、党と軍の両方の最高指導者の地位に就くことになる。彼は、9人から7人にスリム化した政治局常務委員会の主席となるが、これらのことは彼が前任者よりも、より思い切った、より改革を進めるという課題に取り組むことができる――もし彼がそれを選択すればだが――ということである」と改革への期待も示しながらも、中国の変革の前に立ちはだかる3つの巨大な構造的難問を指摘している。
 「第1の難問は、全国レベルでも地方レベルでも党幹部にはびこっている汚職の重みである。これが何千という草の根レベルの抗議運動に火をつけており、国内外の投資家にとって事業のコストを押し上げている。第2の成長の妨げは(そして、汚職の推進力となるのは)、2008年の金融危機の時に景気を刺激し景気後退を回避するために、公的資金が突然投入された巨大国有企業の肥大化である。第3に、習氏は、共産党が何もかも統制しようとするこだわりと、市場経済がもたらす爆発的な選択の多様さとの間の劇的なギャップに直面しているということである」。
 
 FT(11/16)社説も「習氏は伝統を破って、党総書記と同時に軍のトップである党軍事委員会主席にも就いた。3月には国家主席にも就任する予定だ。そうなれば、1949年の共産党政権成立以来最も円滑な権限移行となるだろう。これは、習氏に『改革者』としての役割を期待する者にとっては良い兆候だろう。だが、改革に意欲的だとされる汪洋・広東省党委書記や李源潮・党中央組織部長が政治局常務委員に昇格しなかったことに注目すべきだ。習氏を含む7人の常務委員中4人が急進的改革派ではない党幹部の子弟『太子党』なのだ」と指摘しながらも、改革を進める重要性を次のように強調している。
 「極めて保守的であろうと改革派であろうと、新指導部は長年手をつけられていなかった課題に直面する。投資主導型の経済成長は減速している。習氏は国有の独占企業を解体し、消費者への影響力を高めるべきである。また、実現可能な社会保障と、その資金を賄うための持続可能な税制の構築をすべきだ。国民の要求水準はこれまでにないほど高まっており、経済成長だけでなく、澄んだ空気や安全な電車、クリーンな政治が求められている。習氏は、こうした要求を抑圧せずに応えるべきだ。習氏は外交政策にも影響を及ぼすことができる。ここ数カ月で非常に悪化した日本との関係を修復すべきだ。オバマ米大統領の態勢も整っている。オバマ大統領は就任時に中国に友好の手を差し伸べたが、不当な扱いを受けてからは次第に強硬姿勢を取るようになったのだ」。
 しかし、「期待し過ぎてはいけない。習氏のやり方は新鮮かもしれないが、最終的な目標が前任者と同じ『共産党の権力維持』でないと分かるまでは、そう考えておいた方が賢明だろう」と改革実現の可能性には慎重だ。
 
 WSJA(11/16)社説は、「(中国共産党の第5世代リーダー7人の顔ぶれを見て、)チャイナ・ウォッチャーたちの意見が一致するところは、強硬派が改革派を負かしたので政治の自由化は起こりそうにない、というものだ。この評価にはある程度の根拠があるが、専門家は常に間違っているということを思い出してもらいたい。胡錦濤氏が国家主席に就任した時、政治改革を進める可能性がある人物といわれたが、在任中には政治的抑圧を強化し経済の自由化は減速した」と述べて、改革が起こりそうにない習近平体制だが、どう化けるか分からないとヘッジしている。
 「要するに、中国の政治システムの制度的力学は、政治局員のイデオロギー以上に注意を要する。欧米人には、胡錦濤氏の時のようにリベラルだと思われている人物に変革の期待をかける傾向がある。しかし、党の最高指導者たちは共産党の特権を用心深く守るシステムを通して上がってきたのであり、彼らは民主化に反対することで一致団結しているのである」と共産党の一党支配が優先することを指摘しながら、一方で、「その点は、時代錯誤的で、演出された今週の共産党大会を見ても明らかである。しかし、地方では、草の根レベルから政治参加の拡大を求めるプレッシャーが高まっており、中には社会不安に対処するのに新しい方法を実験しているところも出てきている。変革は、1980年代のソ連のように、体制が経済的または政治的手詰まりに達した時に起こるもので、その時に初めて中国は、“中国のゴルバチョフ”を見つけることになるだろう」と述べて、共産党が改革に追い込まれる可能性に触れている。
 
 エコノミスト(11/17号)社説は、新指導部の下での変革の可能性を妨げる要因を3つ挙げている。
 「1つ目は、中国の不透明なシステムの中でトップにまで上り詰める指導者のタイプ。党の幹部は、大胆さではなく、安全第一でいくこと、そしてハイレベルな後ろ盾を増やすことで昇進を手にする。2つ目は、権力の座に就いている者の多くが『太子党』であること。つまり、中国の革命を率いた一族の子孫や義理の息子などで、自らの財を増やす世襲階級となった面々だ。3つ目は、党の長老の威光が引き続き存在していることだ」。
 それでも、「中国の問題の大きさを考えると、安全第一という選択肢はない。太子党の小君主たちは大胆な帝王にならなければならない」と述べている。
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