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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/2月7日〜’13/3月6日)
 この期間、安倍首相の訪米・オバマ大統領との首脳会談について英米主要紙誌の社説やコラムなどで取り上げられた。中でも、「強固な日米同盟関係の確認に成功した」ことと、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への事実上の日本の参加表明を高く評価している。大胆な金融政策を推進すると期待される黒田東彦アジア開銀総裁が日銀の次期総裁に指名されたことにも多くの論評がなされている。
 
 日米首脳会談について、WSJ(2/25) 社説は、「安倍首相のワシントン訪問は幾つかの点で成果を挙げた。公式には両首脳は日米同盟の強固さと、日本が世界の平和と繁栄のために、より大きな責任を分担することの重要性を強調した。非公式には安倍首相はTPPの交渉への日本の参加をオバマ大統領と話し合った。最も心強かったのは、首相の『私は帰ってきた。日本も同様だ』との楽観的なメッセージであった」と高い評価を与えている。
 一方で、「ひとつ失望したことは、尖閣諸島に関する米国の気のない公式声明であった。日本の報道によると、ケリー国務長官は非公式の場で岸田外相に対し、尖閣諸島が攻撃を受けた場合は、米国は日米安保条約に基づき日本の尖閣防衛を支援する責任があるとあらためて表明した。オバマ大統領は安倍首相と公の場に姿を現したとき尖閣諸島に言及しなかったが、これはおそらく中国の気に障ることを恐れたためだろう。しかし、中国は強い反応を得るまで緊張を高めるものだ。遠慮は危険を招きかねない……(中国による)暴挙の数々が起こる前に、米国の安倍氏支援に関する疑念をオバマ政権が晴らすことを願うのみである」と中国を巡るオバマ政権の日本支援の姿勢を生ぬるいと批判した。
 NYT(2/23)のジャッキー・カルマス記者はホワイトハウスからのニュース記事で、「オバマ大統領と安倍首相はホワイトハウスで会談し、力を増す中国の挑戦を受けているこの時期に、両国が数年のギクシャクした関係を経て、強固な基盤に再び戻りつつあることを示した。2人の会談は主な政策変更の発表もなく、また両首脳は、日本が沖縄の米軍基地移設を早めるのかどうかについても言及しなかった。しかし、首脳会談は少なくとも関係改善の見込みを示唆するもので、オバマ政権側は、バイデン副大統領も加わったホワイトハウスでの昼食会を追加し、両首脳が一緒に過ごす時間を延長した」と指摘して、首脳会談が成功だったことを報じている。
 FT(2/25)社説も、「訪米はうまくいった。与党自民党の支持母体である農業団体の反発を招かない形で高水準のTPPの交渉参加にコミットするという離れ業までやってのけた」と評価した。そして、「安倍氏の次のステップは、経済再生計画の3つ目の要素――金融および財政刺激策に続く柱――としての構造改革を提示することだ」と述べ、「そのリストの一番上にくるべきはTPPであり、それに参加すれば、日本はよりよい輸出市場を確保する見返りに、国内市場を厳しい競争に開放することになる。農業、医療、エネルギーなどの分野で厳しい規制を撤廃すれば、日本は生産性を向上できるはずだ」と論じている。
 しかし、「自民党が7月の参院選挙で勝利を収めたら、安倍氏は小泉純一郎氏以来最も有能な首相になる可能性がある。危険なのは安倍氏がそこで、国家威信の復活という彼本来の情熱で積極攻勢に出て、すべてを台無しにしてしまうことだ」と懸念を示し、「戦後日本の歴代首相たちは、イデオロギーより現実主義を優先させてきた伝統がある。安倍氏が力強いスタートを生かしたいのであれば、先例に倣うべきだ」として、国家主義的な言動を封印するよう求めている。これはFTエコノミストなどが安倍首相について、ことあるごとに持ち出すテーマである。
 首脳会談当日のWP(2/22)社説は、「欧米は日本の経済回復を支援すべき」という見出しで、「安倍首相は20年にわたるデフレから脱却するという明白な目標を達成しようとしている。これが円安に繋がることを予想して、市場は10月以来円相場を対ドルで20%も押し下げた。しかし、エコノミストたちは、日本には金融面からの刺激策が必要であり、円安が、国内の金融緩和の副産物であり政府による外為市場へのあからさまな介入でない限りは、世界経済を脅かすことにはならないという見方で大方一致している。先週(15~16日)のG20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議で出された声明(「我々は通貨の競争的な切り下げを回避する」)は、事実上、安倍氏の新しい経済政策を認めるゴーサインであり、また、外債の購入によって円を直接切り下げないようにという暗黙の警告を意味するものであった」と安倍首相の経済金融政策を支持している。
 そして、「日本が何よりも必要としているものは、有効でなくなった輸出主導の成長モデルの構造改革であり、安倍氏はこれを金融緩和、財政出動と並んで彼の経済再生政策の『3本目の矢』としていることは、評価できることである……(それを進めるには)米国が主導するTPPに全面的に参加することである。安倍氏は金曜日(22日)、ワシントンでオバマ大統領とTPPについて話し合うことになっている。日米双方の経済のために、そして世界の経済のために、同盟国日本が自力で解決できるように、オバマ氏は可能な限りのことをすべきである」と述べている。
 WP(2/21)で、直前に安倍首相にインタビューしたフレッド・ハイアット編集長は、「米国が限られた予算で中国の台頭に対抗しようとしている折から、アジアで最も重要な同盟国が(国力を回復して)貢献できる能力と、好ましい民主主義の手本となれる能力があるのは極めて重要なことである」と日米同盟強化の重要性を強調している。 
 
 日銀の次期総裁候補に黒田東彦氏が指名されたことについて、FT(2/25)社説は「黒田氏の指名は安倍首相の意図の大胆さを示すものだ。黒田氏を選んだ狙いは、15年にわたる日本のデフレを収束させることにある。そのような試みは日本経済を揺さぶるだろうし、ことによると世界経済をも揺さぶるかもしれない。この政策転換は必要ではあるが、リスクもはらんでいる。少なくとも短期的には、経済を不安定にする要因になりそうだ。手綱さばきを誤れば、この大変革は悲惨な結末となりかねない。とはいえ、大変な事態は迫りつつある。今ギャンブルに打って出るか、後で没落するか、これが日本の選択肢だった。今回の日銀のトップ交代は間違いなく重要だ」と述べている。
 そして、「(日本のような)緩やかなデフレ期待が根強い国であっても金融政策によってインフレ率を引き上げることができる」し、「実際のインフレ率と期待インフレ率を引き上げることができれば日本経済の長期低迷に終止符を打つことも多分できる」が、「期待インフレ率が上昇すれば、特にそれが実質金利をマイナスにするものだった場合、外国人投資家だけでなく、国内居住者の間でも日本円からの逃避が引き起こされる恐れがある」と指摘。それでも、「要するに、デフレを終わらせることはリスクを伴う。しかし、現状のままでいることの方がリスクは大きい。今のままでは、日本の公的債務はいずれ手に負えないものになるだろう。デフレを続けていても、いずれもっとひどい事態になることが確実になるだけだ。(その対策を)15年前に講じていればはるかに良かったが、愚かにも日銀は時宜を得た行動を取らなかった。遅きに失したことは良くないが、何もしないよりはましだ。ギャンブルに出た安倍氏は正しい。しかし、これは明らかにギャンブルだ」と論じている。
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