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調査報告

英米主要16紙誌の論調分析
(’13/3月7日〜’13/4月11日)
 この期間、黒田新総裁の下、日銀が4月4日の金融政策決定会合で、2年間で前年比2%の物価上昇率を目指す「量的・質的金融緩和」の導入を決めたことに、英米各紙は予想以上の、FRB(米連邦準備制度理事会)を超える大胆な緩和策と概ね好意的に評価する論評を掲げた。同時に、金融緩和が行き過ぎて金利が上昇する可能性や円安の進行による世界経済への影響について懸念を示す社説、記事もあり、金融緩和だけでなく、政府が規制緩和、構造改革などを進める重要性を説いている記事も多く見られた。
 
 FT(4/6)社説は、「日銀の黒田新総裁は大国の中央銀行としては、これまでで最も大胆な実験を打ち上げた。日銀はバーナンキ議長率いるFRBの理論に倣っているのだから、金融政策としては革命ではない。しかし、日本的思考からすれば、そして行動計画の規模においては、革命である。日銀はやり過ぎるという危険を冒してはいるが、日本はすでに、対応が少な過ぎる場合の代償をよく知っている。それは欧州中銀が、まだこれから学ばなければならない教訓だ」と高く評価している。
 そして、「今回の金融緩和策によって、日銀はこれまで長い間、デフレの原因が構造的なものであると言ってきたことをすべて退けたのである」とその意味を指摘している。
 前日のFT(4/5)社説も、「黒田新総裁はたった一度の会合で20年間続いた効果の上らない金融政策を一変させた」とその手腕を称賛し、量的緩和策は「印象的」だと評価している。そして、「この大規模な景気刺激策も効果がない、あるいは反対の効果をもたらすかもしれない。だが実際のところ、これ以外に選択肢がなかった」と述べている。
 また、「最近設定された2%のインフレ目標に対し、黒田総裁が切迫感を持って2年間で達成すると明言したことは正しかった」と評価している。
 その上で、「安倍首相は日銀の指導部の交代を適切に進めたが、今度は経済の活性化に向けて自らの役割を果たすべきだ。すなわち、中期的な財政再建を進めるための信頼できる計画である。政府は成長率を高めるべく構造改革も進めるべきだ」と論じている。
 ブルームバーグ(4/4電子版)社説は、「黒田日銀総裁は昨日の発表で、投資家をがっかりさせなかった。世界の経済大国の歴史において、もっとも大がかりで敏速な非伝統的金融刺激策を発表した。そもそも金融市場というのは『衝撃と』を期待していないが、それも超慎重である日本銀行に対してはなおさらである。しかし、今回は初めて、その『衝撃と畏怖』を感じたのである」と大量の資金を市場に供給し、それも短期間で効果を上げようとする方針を、イラク戦争の時の作戦に因んで評価している。
 「概ね、黒田総裁の大胆な政策は正しい。今度は安倍首相と政府が役割を果たすべきである。日本経済が抱える問題でリスクを伴わない出口政策はない。しかし、長期的な緊縮財政、供給サイドの改革とデフレの終結という組み合わせの中で、黒田総裁が手を打てるのは最後のデフレの問題だけであるが、今回の政策で日本の先行きはようやく明るくなりそうだ」と述べている。
 一方、WSJ(4/5)社説は、日銀の決定は「市場を驚かせた……黒田総裁は劇的なスタートを切ったといえる」と大胆な金融緩和策を評している。
 「黒田総裁は本質的に、FRBがリーマン危機後に採用した金融政策への転換を表明したことになる……2001年、日本は量的緩和という世界的な実験を開始したが、バーナンキFRB議長が世界中にドルの洪水を起こしてきた近年は後れを取っていた。そうした潮流に逆らうのは中央銀行にとっても難しく、我々は黒田総裁の苦しい立場に同情する部分もある」と理解を示しながらも、「問題はそれが機能して経済成長を後押しするかどうかである」と懸念している。
 その上で、「我々は初めから、日本の景気回復は金融政策よりも構造改革にかかっていると信じてきた。ところが安倍首相の自民党は、農業従事者や競争から守られている企業など、そうした改革に抵抗する社会階層を支持母体としている。そのため安倍首相が日銀にすべてを押し付けたがるのも当然だ」とWSJの持論を述べているが、構造改革がどうなるかは今後の課題だ。
 これら社説のほかにも、英フルクラム・アセット・マネジメントのギャビン・デービス会長はFT(4/5)で、「昨日日銀が発表した量的緩和策は、日銀が過去20年間金融政策について言ってきたことすべてを完全否定するものである……日銀の黒田新総裁は、FRBがとったリーマン危機後のバランスシート戦略をそっくり輸入したのだ。その上で、FRBが5年かかったものを2年以内で実行しようとしているのだ。これは歴史的な規模の資金の注入であり、日本をこれほど長く苦しめてきたデフレ心理を断つ真の展望が初めて開かれようとしている」と好意的に論じている。
 「黒田氏の緩和策は『ヘリコプターマネー』ではない」し、また「この政策はスイス方式の為替相場の操作ではないのだ……これは日銀と日本の金融部門の間の、内的バランスシート操作という薬の大量投与であり、為替相場がさらに下がることは副次的な効果であって、近隣窮乏化政策だととられるべきでないとする考えに助けられてもいるが、バーナンキFRB議長の政策に忠実に従うものなのだ」と擁護している。
 FTコラムニストであるマーティン・ウルフもFT(4/10)で、「日銀の黒田新総裁が金融政策の革命に着手した。日銀にはデフレを終わらせる力はないと日銀自身が明言していた20年に及ぶ慎重な政策運営に幕を下ろした格好だ。問題は、その政策がうまくいくかどうかだ。これだけではダメだと筆者は考える。日本政府が抜本的な構造改革でこれに続かなければならない」と述べている。
 その上で、「この政策がうまくいく可能性があるのはなぜなのか? それは、日本が民間部門の構造的な貯蓄超過に苦しめられているからだ。日本企業は現金を過剰にため込んでいる。今回発表された政策は、この構造を少なくとも一時的には変える可能性がある」と述べて、企業部門の貯蓄超過を、この政策でいかに解消できるかが今後の課題だと指摘している。「今回の政策変更を成功させるためには、最大の障害物が構造的なものであることを認識することにある。問題は機能不全に陥っている企業部門にあるのだ」と論じている。
 一方、スターフォート・ホールディングスのケン・コーティスはWSJ(4/5)今回の金融緩和策は日銀の危険な賭けであるとして、「日本政府が宣言している目標通りにインフレ率が相当な幅で上昇した場合、当然ながら金利も上昇する。ここで問題となるのは、国家予算の4分の1がすでに債務返済に消えているということ、そして来年末には公的債務残高が対GDP(国内総生産)比で250%に達するということである。ただでさえ膨大な政府債務残高の金利負担が増大すれば、日本の財政にとっては大打撃となるだろう」と警告している。
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